堂本光一、エンターテインメントへのひたむきな姿勢 ソロアルバム『PLAYFUL』からも垣間見える思い
5月28日発売の雑誌『MG』掲載インタビューの中で、堂本はアルバムについて、「本来ならば昨年リリースする予定だった作品」であると語っている。今作も、コロナ禍の影響によりリリースが延期された作品だったようだ。そう前置きしたうえで、「もともとソロに関してはそんなに前のめりじゃないんですよね」とも話している。一見控えめな言い回しのようにも思えるが、実際に楽曲から感じられるのは、そんな慎ましやかな言葉とは裏腹なほどのパワフルな表現世界だ。
音楽において歌は物語、サウンドは舞台装置のように作用することがある。『PLAYFUL』の楽曲たちも例外ではなく、ひとたび耳にした瞬間に目の前には楽曲それぞれのサウンドスケープが立ち上がり、堂本のボーカルがその中で自在に躍動する。まるで、13種類の多彩な舞台装置が堂本光一という“役者=歌い手”のために用意されたかのようなアルバムだ。提示された舞台の上でストイックに“役”を全うする。舞台での活動で培われてきた、堂本ならではのスタイルが、音楽活動にも反映されていることがよくわかる。
同雑誌のインタビューにて、アルバム名の「PLAYFUL=遊び心」について、堂本は自分自身を「もともと自分自身、遊び心はあまりない人間なんですよ」と評した。「どちらかというと細やかな部分も含めてきっちりと構築していって、しっかりと計算して組み立てていった表現の中から生まれる『自由』みたいなのが好きなんです」と語る堂本の言葉からは、彼のエンターテインメントへの向き合い方が垣間見られるようだ。
毎年大晦日から彼の誕生日に当たる1月1日にかけて、KinKi Kidsはカウントダウンライブを行っている。昨年はこちらもオンラインでの開催となったが、本公演の中でも圧巻のボーカルやダンスパフォーマンスだけでなく、“雪のかたまり”が歌う「愛のかたまり」といった遊び心溢れる表現でもファンを楽しませてくれた。「家のかたまり」にも通じる、KinKi Kidsとして堂本剛と共に貫き続けているこの“遊び心”も、提示された舞台の上で“役”を全うするひたむきさに裏付けられた、心の余裕とサービス精神の豊かさによるものなのだろう。
「PLAY」という単語には、「演じる」という意味もある。“遊び心”があまりないと語る堂本だが、たとえどのような環境に置かれても、どのような制約の中でもひたむきにエンターテインメントに向き合う彼の姿には、『PLAYFUL』というタイトルがよく似合っている。
※1:https://www.oricon.co.jp/news/2184213/full/
■五十嵐文章(いがらし ふみあき)
音楽ライター。主に邦楽ロックについて関心が強く、「rockinon. com」「UtaTen」などの音楽情報メディアにレビュー/ライブレポート/コラムなどを掲載。noteにて個人の趣味全開のエッセイなども執筆中。ジャニーズでは嵐が好き。
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