GRAPEVINE、“ありふれた未来”に思いを馳せた日比谷野音公演 『新しい果実』からも新曲を初披露

GRAPEVINE野音、“ありふれた未来”への想い

西川弘剛

 「降らへん、降らへんで」と自分に言い聞かせるようにつぶやくと、新作『新しい果実』が5月26日に出ることを告げた後、「アルバムが出たらそれに伴うツアーもあると思いますので、その頃世の中がどうなっているかわかりませんが、達者で会いましょう。って終わりのような様相を醸し出しておりますが、あと6万曲ありますから、よろしく」とのこと。

 オフマイクで「よっしゃ6万曲!」と叫んで始めたのは、亀井の叩くカウベルと西川のキレのいいギターリフ、ふてぶてしさを醸し出す田中のボーカルが小気味いい「MISOGI」。戯れ唄のような歌詞の最後を、田中は「セッポッポー」と遊んでみせ、軽快なギターリフでソウルフルな「JIVE」に繋いだ。

 高野のシンセが活躍する「Alright」では薄闇の中でミラーボールが回って怪しげな雰囲気を醸し出し、田中がハンドクラップを促してちょっとしたダンシングタイムに。新曲「さみだれ」は一転、田中の弾き語りで始まる美しいバラードで、ファルセットを聴かせたサビが印象的だった。

 本編のラストは示唆的だった。ライブでも1分近いイントロから始まり〈光など届かなかったんだ〉と歌う「Gifted」は抑えたライティングの中で演奏され、初期からの代表曲である「光について」は小さなライトが道しるべのように床上に灯った。小さな光が喚起する様々なイメージや記憶が、夜空の下に広がったようだった。

亀井亨

 アンコールに応えて「アンコール、サンキュー! 日比谷!」と両手を挙げた田中はニューアルバムのツアーは6月からと告げ、「まだマスクは取れていないと思いますが、ツアーで会うことを祈っております」と曲に入ろうとしたところで「言い忘れた、今日の0時からねずみが現れますのでよろしく」と言い放った。これは先行配信シングル「ねずみ浄土」公開の告知だったのだが、この日その曲は演奏されなかった。アンコールで演奏された「Arma」「スロウ」「smalltown,superhero」は、彼らの真骨頂とも言える3曲だ。落ち着いたビートと確かなアンサンブル、伸びやかなボーカルとで織りなす楽曲は、月が上りかけている夜空に広がっていった。

 「6月、また会おうぜ」と田中は手を振った。ステージを降りる5人の顔は晴れやかだった。

 このライブは、彼らにとって初のライブストリーミングも行われ、そのアーカイブが5月5日まで配信されるが、彼らのライブ作品を多く手がけてきた大関泰幸が映像をディレクション、サウンドは最新作のレコーディングを担当した宮島哲博がミックスしている。彼らの表情やプレイを惜しみなく捉えたこのアーカイブは必見だ。

GRAPEVINE オフィシャルサイト

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