あいみょん、ドラマ『コントが始まる』主題歌に詰まった葛藤 春斗たちの焦燥とあがきを包み込む楽曲に
毎話一つのショートコントからはじまり、そのコントの内容が後に続く物語の伏線になっている、土曜ドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系)。主人公は20代後半を迎えた若者たちで、社会的にはすっかり大人の立場になり、30歳の節目も見えてきた中で、自分の人生について見つめなおす姿を描いたヒューマンドラマだ。そして、そんな葛藤を、あいみょんの歌う主題歌「愛を知るまでは」が見事に彩っている。
物語の中心になるのは春斗(菅田将暉)・潤平(仲野太賀)・瞬太(神木隆之介)の3人からなるお笑いトリオ、マクベスと、会社を辞めてファミレスでバイトをしている里穂子(有村架純)とその妹・つむぎ(古川琴音)。第1話ではマクベスと里穂子の出会い、そして鳴かず飛ばずのマクベスの解散発表が描かれた。そして続く第2話は、屋上から飛び降り自殺しようとする男と、それを止めようとする夫婦を描いたコント「屋上」でスタートした。
「10年やって売れなかったら辞める」ともともと決めていたことや、交際相手との結婚を本気で考えている潤平の状況などもあり、解散を決めたマクベス。だが、マネージャーの楠木(中村倫也)からの引き留めもあり、春斗の気持ちはまだ揺れている。そんななか、「瞬太が遺書を書いていた」という里穂子の目撃証言から、28歳の誕生日に瞬太が死ぬ気なのでは? という疑惑が持ち上がる。瞬太の父や、父の好きなアーティストたちがみな27歳で亡くなっていたことを理由に、「27歳までの人生が用意されていない気がした」と感じていた瞬太は、昔から「27歳までに死ぬ」と公言していたのだ。
「27クラブ」という言葉がある。1970年前後、才能ある世界的ミュージシャンたちが立て続けに亡くなったことに起因する、「天才は27歳で死ぬ」という都市伝説めいた俗説だ。瞬太の父の好きなアーティストというのも、おそらく27クラブの誰かなのだろうと推測される。そしてその俗説は、逆説的に「才能は27歳までに発露するはず」というイメージも抱かせる。
27歳という年齢は、長い人生全体から考えればまだまだ若い。けれど、それまで人生を賭けてやってきたことの結果が出なかった時、27年という年月は決して軽くない。マクベスを諦めようとしている春斗たちもまた、「今までの人生は一体なんだったのか? この先の人生に大逆転があるのか?」という思いに囚われている。そんな彼らの焦燥とあがきを包み込むように流れるのが、主題歌であるあいみょんの「愛を知るまでは」だ。
自分で選んだ道なのに自信がないことや、ほかの誰かにはないものを求める気持ちを綴った歌詞からは、マクベスを続けたいけれど限界を感じている葛藤と、自分の人生が特別であってほしいという春斗の肥大化した自意識が見え隠れする。