『CONNECTED OVER THE DIMENSION コンピレーションCD』インタビュー
KMNZ×ORESAMA特別対談 バーチャルとリアルの垣根を感じない“ぶつかりあい”の音楽制作
ORESAMAさんの曲はワクワク感がある
――お互いに感じる共通点/相違点のようなものも思いつきますか?
ぽん:KMNZさんって、クレジットによくKMNCREW(ケモノクルー/スタッフの総称)という名前が入っていますけど、ORESAMAも、私たち2人だけではなくて、チーム全体で制作をしている感覚なので、そこは共通しているのかな、と思います。
LITA:団体戦というか、チーム戦ですよね。あと、私からすると、(曲を通して)「世界観をつくっていきたい」という雰囲気を感じるところが似てるのかな、と思います。
――確かに、ORESAMAの楽曲を聴いていると、どこかキラキラとした別世界に連れて行ってくれるような感覚がありますよね。
LITA:ORESAMAさんの曲って、ワクワク感があると思うんですよ。
ぽん:もしかしたら、お互いにバーチャル/リアルという場所から、真逆のところに行こうとしているのかもしれない(笑)。
小島:あと、ぽんちゃんは違うかもしれないけど、僕は根暗なタイプなので、KMNZの2人を見ていると、「すごく明るいなぁ」と思います。この前、『フォールガイズ』のゲーム配信を見ても、「こんなに楽しそうにプレイするなんて、自分にはないものすぎてすごい」と思ったんですよ。そうやって人を楽しませてくれる魅力があるというか。
ぽん:確かに。小島くんはわりとジメジメしたゲームしてそうだもんね(笑)。
小島:それは言い方がおかしいでしょ(笑)。
LITA&LIZ:(笑)。でも、ORESAMAの楽曲自体はあんなにキラキラしていて明るい曲なのに、普段は逆なんですね。
ぽん:私たち、逆なんですよ。根が明るいわけではないから、自分たちも非現実的なところに行きたい、という気持ちがあるんだと思います。
LITA:なるほど。だからこそ非現実感に惹かれるかもしれない、と。
ぽん: KMNZのお2人は、やっぱり歌声の役割分担が聴いていても気持ちいいですよね。
小島:そこって大きな違いですよね。ひとりの声をどう編集しても、2人分の個性にはならないと思うので。KMNZさんの場合は2人の個性がとてもいい形に混ざり合っていて、そういうところはひとりのボーカルではできないところだと思いました。もちろん、ひとりのボーカルにはひとりならではのよさがあるので、どちらがいいという話ではないんですけどね。僕は声って一番説得力のある、個性の強い楽器だと思うんですけど、今回の「ファジータウン」は、3人分の個性が入ってくる曲なので、つくりかたもこれまでの僕らの楽曲とはまた全然違っていて、余計にKMNZの2人の個性を感じました。
ぽん:2人のラップで、曲の世界観を2倍にも3倍にも広げてもらった気がします。本当に「化学反応が起きた」という感じでした。
「ファジータウン」のラップは初めて自分の中でもしっくり来た
――では、「ファジータウン」のお話を詳しく聞かせてください。そもそもこの楽曲は、昨年8~9月に渋谷の3.5Dで行なわれた『CONNECTED OVER THE DIMENSION』展のために生まれたものでした。まずは当時の展示のことを思い出してもらえますか?
LITA:展示のテーマが「次元を超えても、繋がる私たち」というもので、KMNZの場合はこれまでも馴染みのあるテーマではあったんですけど、あのときはご時勢的にできないことがたくさんある中で、(「次元を超えても、繋がる」という言葉を)これまでとは違った形で捉えていました。夏にKMNZで3Dライブをやったときも、「画面越しなら会えるから」ということを、MCで何回か言ったと思うんですけど、そういう意味でも、「次元を超えても、繋がる私たち」だったのかな、と思います。
LIZ:とにかく、まずは渋谷の街に自分たちがどでかく映っているのが印象的で、期間中に何回も行ったんですよ。楽しかったぁ。ママに自慢しました。
ぽん:かわいい……。
LITA:ちょっとみんな、LIZのことを赤ちゃんだと思ってませんか!(笑)。
――会場になった3.5Dは、「VR - Virtual Reality」のMVで映っていたスペイン坂の近くでもありますね。
LITA:そうなんです。中もめっちゃお洒落だったよね。
LIZ:お洒落だった!
LITA:高級なセレクトショップみたいに、ひとつひとつの商品がめちゃくちゃ間を空けて置いてある、みたいな。
ぽん:小島くんは行けなかったんだよね?
小島:そうなんですよ。会場の近くを何とかサーっと通り過ぎるくらいで。
ぽん:何でだよ(笑)。
小島:でも、あの時期は僕らもリアルでのライブがなかなかできなくなっていく中で、バーチャルな方とのコラボレーションで、表現の幅を広げられるのかもしれない、という気持ちでしたし、もともと興味を持っていたジャンルだったので、単純に楽しかったです。
ぽん:「次元を超えても、繋がる私たち」というテーマでありつつも、参加メンバーの中で私たちだけがバリバリに三次元だったので、最初は「いいのかなぁ」とも思っていたんです。でも、会場で初めて私たち以外の楽曲も聴かせてもらったときに、3曲ともそれぞれに全然色が違って、感動したのを覚えています。私たちも、KMNZさんとの化学反応によって味を出せていたのを、そのときに改めて感じました。
――「ファジータウン」の制作は、どんなふうに進んでいったんですか?
ぽん:展示のテーマが「次元を超えても、繋がる私たち」だったこともあって、最初にスタッフの方から「KMNZさんとORESAMAの2組が、イベント会場の渋谷を舞台にパーティーを繰り広げていくようなイメージなんです」という話をいただいて。そこから小島くんが曲をつくり、私やKMNZさんが歌詞を乗せていった、という形です。私はこの2組が先導して、バーチャルとリアルが入り混じった、仮想と現実とが曖昧な街でパーティーを繰り広げる、ということを頭に置きながら歌詞を書いていったんですけど、KMNZさんサイドがバチバチにかっこいいラップを乗せてくださったので、それを聴いて感激しました。
LITA:でも最初、リリックはめちゃめちゃ迷いました。書きはじめた頃は全然歌詞が出てこなさ過ぎて、たぶん私、最初の締切を守れなかったと思うんですよ。
ぽん:歌詞って難しいですよね。
LITA:難しいです。KMNZはこれまでも「繋がる」ということをテーマにした楽曲が多かったので、他の曲とかぶらないかということも考えていて。でも、「ファジータウン」で初めて、私が今までやりたかったラップを詰め込めた感覚がありました。細かいところで言うと、私が〈highな夢の街へ急ぎな〉とラップして、その後すぐにLIZが(やや舌ったらずな声で)〈highな音の街へようこそ〉って言うところがあるんですけど――。
LIZ:それ私の真似……?(笑)
LITA:(笑)。そんなふうに、この曲では同じワードでバトンを渡すようなラップをずっとやりたいと思っていました。そもそも、ちゃんとお互いのパートを分けて歌詞を書いたのは初めてだったので、相方に合わせてラップをつくったのも、私が歌詞を書いたものでは初めてで。「相方にこれを歌ってほしい」「これなら合うかも」と考えながら書いていきました。
ぽん:LIZさんがラップしている〈全然足りないまだ足りない〉のところ、いいですよね。
LITA:ああ、嬉しいです! あそこはやっぱり、私じゃなくてLIZのパートだと思うんです。相方のラップで聴きたい、というのがあって。
LIZ:私、ラップは苦手なんですけど、「ファジータウン」のラップは初めて自分の中でもしっくり来た感じがしました。それでLITAちゃんに「めちゃめちゃ歌いやすいけど、どしたん?」と聞いてみたら、「いや、お前に合うと思って」と言われて。
ぽん:すごい!
LIZ:この曲のラップは本当にやりやすかったです。
LITA:新しく曲を考えるときに、「KMNZってどんなラップが得意なんですか?」と聞かれて、KMNZもクルーも一致で「ファジータウン」を参考に出してました(笑)。あと、実は最初の「犬と猫が導くよ Fuzzyに」という部分は、KMNCREWからアイデアをもらって、そこから広げていきました。悩んでいる時間も、めちゃくちゃ楽しかったですね。
ぽん:〈わかるわかる/共感の嵐/そこに自分の意見なんてなし/大事なのは同調と愛嬌/ あーあ/これじゃどうしようもないよ〉という歌詞も、すごくいいですよね。
LITA:ありがとうございます! そう言ってもらえると嬉しいです。