『僕が持ってるものなら』インタビュー
22/7 天城サリー&河瀬詩&倉岡水巴&帆風千春&宮瀬玲奈&高辻麗に聞く、リーダー卒業を控えたグループの現在地
デジタル声優アイドルグループ・22/7(ナナブンノニジュウニ、ナナニジ)が7thシングル『僕が持ってるものなら』をリリースした。22/7としては珍しくバラードが表題曲に採用された今作は、同時にリーダー・帆風千春の卒業シングルでもあり、グループにとっては一つの区切りを迎える作品といえる。
他方で、今回のシングルは22/7史上でも随一の幅広さを誇る仕上がりになっている。22/7のトレードマークである内省的な楽曲群とは対照的なお祭りソングから、リズムゲームアプリ「22/7 音楽の時間」(ナナオン)内の企画から生まれた個性豊かなユニット楽曲まで多岐にわたり、またメンバー自身が作品コンセプトに積極的に携わるなど、グループの確かな進化を感じさせる。
今回、リアルサウンドでは22/7の天城サリー、河瀬詩、倉岡水巴、帆風千春、宮瀬玲奈、高辻麗に話を聞き、帆風の卒業作となる7thシングルの手ごたえ、さらにはそれぞれが担当するキャラクターとメンバー自身との距離感についての模索、過去のライブで感じていた葛藤まで、幅広く語ってもらった。(香月孝史)
すごく素敵な関係性だなって、ちょっとだけ憧れます(倉岡)
ーーまずは、今回のシングル表題曲「僕が持ってるものなら」について教えて下さい。
帆風千春(以下、帆風):大切な人に何かしてあげたいけど、自分はその人にしてあげられるものを何も持っていないという、すごく切ない歌詞ですね。自分の存在価値を考えてしまうような曲なんですけど、〈君に何かを与えられるなら 愛しかない〉と歌詞にあるように、相手のことを思う優しい歌でもあるなと感じました。
河瀬詩(以下、河瀬):この曲は「ナナオン」(ゲームアプリ「22/7 音楽の時間」)のクリスマスイベントの主題歌ですが、まさにクリスマスや冬の景色にぴったりで、雪が降る夜に一人で歩きながら、イヤホンで聴きたいなって思う感じの曲ですね。振付には手話を使うような箇所もあるんですが、表には出せない心の中の強い気持ちが込められた曲だなと思います。
倉岡水巴(以下、倉岡):大切に思っている人に対して何もしてあげられない、もどかしい気持ちを歌っている曲ですけど、ここまで強く人のことを思ってるってことはたぶん相手にもその気持ちは伝わってるんだろうなって思います。それだけ人のことを思える主人公と、主人公にここまで思われている大切な相手。すごく素敵な関係性だなって、ちょっとだけ憧れます。
ーーレコーディングなどで気をつけたことはありますか?
天城サリー(以下、天城):バラードがシングル表題曲になるのは初めてなんですけど、ゆっくりな曲だからこそ声に感情を乗せながら歌えるなと意識していました。この曲にあるような、助けたい相手に対して自分が何もできないふがいなさって、誰しもが一回は感じたことあるんじゃないかなと思います。〈宙を睨みつけ 涙がふいに溢れ出す〉という箇所は、私の歌割りのパートでもあるんですけど、一人の帰り道で本当にいきなり涙が出てきちゃう時なんかもあるので、情景が思い浮かんで、感情を乗せて歌いやすかったですね。
宮瀬玲奈(以下、宮瀬):今回の表題曲は、0サビから始まって1サビ、2サビ、3サビ、最後にまた0サビと、サビがたくさんある作りになっているのが面白いなと思います。その中でも最初のサビと一番最後のサビは、歌詞は全く同じなんですけど、個人的には曲が進む中で主人公が成長して違う感情になっていっていると思っていて。なので、同じ歌詞ではあっても、全然違う感情でパフォーマンスしています。3サビの〈僕は何を持っていて 何を持ってないのか それが当たり前だった しあわせなんかいらない〉のブロックが特に私には共感できて。自分には何があるのか、何を与えられるのか、今も模索しながら生きているので、等身大のような気持ちで歌っています。
高辻麗(以下、高辻):個人的な解釈なんですけど、この曲は「ムズイ」(5thシングル表題曲)に対するアンサーソングというか。「ムズイ」が内にこもって悩んでる主人公だとしたら、この曲は相手に与えたい側。でも、その優しさが相手には届かなかったり嫌われちゃったりしてつらい、という。他にも、「理解者」(3rdシングル表題曲)のアンサーソングが「何もしてあげられない」(4thシングル表題曲)かなとか、いろいろ考えたりしてるんですけど。
別の視点からみるとまた違った解釈ができる(河瀬)
ーー22/7の表題曲には内省的な主人公が多いですが、それらに共通する人物像って考えたりされますか?
天城:誰か特定の人物が主人公になっているというよりは、常に誰しもが感じている感情をそのまま歌っているがゆえに、いつのシングルもみんなが共感できるんじゃないかなと思います。
高辻:ナナニジの表題曲って主人公がめちゃめちゃ不器用で、人との関わりに悩みがちな曲が多いじゃないですか。「ムズイ」だったら内側で思い悩んでて、今回の「僕が持ってるものなら」は、自分が持っているものの価値って何なんだろう、たとえ持っているものがあっても相手に届かなければ意味がないよね、と考えている。それぞれの視点から、自分の価値について悩んでるのかなと。
河瀬:今回の〈どこで風に吹かれてたのか?〉という歌詞が、「風は吹いてるか?」(6thシングル表題曲)とつながってるんじゃないかって、誰かが話しているのを聞いたことがあって。「風は吹いてるか?」では自分たちで風を吹かせていこうという曲だったんですけど、一方でその風に吹かれてしまった側の人もいるのかなって、別の視点からみるとまた違った解釈ができますね。
高辻:「風は吹いてるか?」は外側に投げかけて変えていこうぜっていうパワーを持った曲だったんですけど、じゃあそうやって投げかけたものの価値って何?って、一回もとに戻ってきた感じがします。そうやってぐるぐる生涯悩み続けて、……それが人生っていうことなんでしょうね(笑)。
ーーカップリング曲「タチツテトパワー」は表題曲と対照的に、とても弾けた作品です。
倉岡:レコーディングがとにかく楽しくて。いろいろなガヤを何十パターンも入れさせていただいて、それが曲の中にちょくちょく入ってくるので楽しいですよね。
高辻:レコーディングだけれど、アニメのアフレコ現場みたいなディレクションでした。ここは誰の声なのかなって考えながら聴くのが楽しそう。
天城:この曲のレコーディングはちはるん(帆風)と同じ時に録ったんです。今回はちはるんの卒業シングルでもあるから、レコーディングのたびに「こうやって一緒に歌うの最後なのかな」って思っていたんですけど、「タチツテトパワー」のレコーディングの時だけはまったく悲しくなくて(笑)。
ーーそれほど底抜けに明るくて、ライブで観るのが楽しみな曲ですよね。
天城:初めて歌詞をいただいたときに、“ここはファンの皆様と一緒に”みたいに書いてあって、ファンの方々の掛け声が入ることを想定した歌詞になっていたんです。今はライブで声を出してもらうことはできないんですけど、ペンライトを振りやすいビートなので、いかなるときでも絶対盛り上がると思います!