「ストーリーズ」「恋のスタートボタン」インタビュー

ひらめ×さくらしめじ対談 SNS世代の共感呼ぶ、2つのラブソングが生まれるまで

 2020年「ポケットからキュンです!」が社会現象となり、注目度急上昇中のシンガーソングライター・ひらめと、フォークデュオのさくらしめじがコラボレーション。2月14日に「ストーリーズ」「恋のスタートボタン」の2曲を同時リリースした。

 今回のコラボは、“女性目線のラブソング”や“SNSを絡めた曲”という構想を持っていたさくらしめじが、ひらめにオファーしたことから始まったもの。コロナ禍にTikTokやYouTubeに弾き語り動画をアップしたことでデビューのきっかけを掴んだばかりのひらめにとって、他アーティストに楽曲提供を行うのは夢だったという。そんな一つの夢が叶った「ストーリーズ」を書き下ろしたあと、男性目線のラブソングをひらめが歌うというアイデアが生まれ、「恋のスタートボタン」が誕生した。

 今回リアルサウンドでは二組の対談をセッティングし、コラボ2曲の誕生秘話やこの機会にお互いが得たものなど語り合ってもらった。(編集部)

さくらしめじが初めて女性目線で歌う「ストーリーズ」

――さくらしめじとひらめさんのコラボはどんな流れで実現したんですか?

田中雅功(以下、ガク):まず、僕たちの中に女の子目線の曲を歌ってみたいという思いがずっとあったんですよ。ただ、僕らが自分たちで作るのもちょっとなと思い、コラボレーションできる素敵な方を探していて。そんなときにひらめさんがTikTokで僕らの「きみでした」を弾き語りで歌ってくださっていることを知って。その瞬間、これはひらめさんにお願いするしかないと思い、熱烈にアタックさせていただきました。

ひらめ:たまたまTikTokで私を見つけてくださり、お声がけいただけたのはすごくうれしかったです。しかも曲を作ること自体が好きなので、いつか誰かに自分の曲を歌ってもらえたらいいなって思っていたんですよ。なので今回のお話をいただいたときはめっちゃ喜んじゃいました(笑)。

髙田彪我(以下、ヒョウガ):で、お引き受けいただくことができたので、まずはZoomを使って打ち合わせしたんですよね。

ガク:僕らはずっとTikTokでひらめさんの歌声を聴いていたので、画面を通して届く声にまず感動しちゃって。「わ、あのひらめさんの声だ!」みたいな(笑)。

ヒョウガ:はぁ~ってなったよね(笑)。

ひらめ:私はさくらしめじのお二人に対して、ワチャワチャ賑やかな感じなのかなって勝手に想像していたんですよ。でも実際はものすごく礼儀正しく、冷静な方々で(笑)。それが好印象だったので、早く一緒に歌いたいなって思いました。

ひらめ

ヒョウガ:僕らもそうですよ。ひらめさんと言えばやっぱり“きゅんです!”じゃないですか。ものすごい人気の「ポケットからきゅんです!」という曲から受けた印象通り、実際のひらめさんもものすごく朗らかな方で。

ガク:朗らかって(笑)。今日び、あんまり言わないよね。

ヒョウガ:そう? でもほんとにひらめさんは優しい方だったので、コラボできることになってよかったなって思いました。

ガク:僕らがやってみたかった女性目線の曲のイメージは、ひらめさんの人柄や声にぴったりだなって、打ち合わせのときにも思いました。

――打ち合わせではどんな話をされたんですか?

ヒョウガ:まず曲のテーマをいくつか提案させていただいて。それが女の子目線で片想いを歌う曲であることと、歌詞にSNSの要素を盛り込んでほしいっていうものでした。

髙田彪我

ガク:ヒョウガは以前からSNSを絡めた曲を作りたいってずっと言ってたんですよ。今回、TikTokをはじめとするSNSで人気のひらめさんとご一緒できることになったので、ここでそのテーマに挑戦するのがいいタイミングじゃないかなって。

ひらめ:SNSを歌詞に盛り込むことに関しては、普段から自分もそういったワードを使うのが好きなのでイメージはしやすかったです。女性目線に関してもいつも通りではあるので、これは楽しく作れそうだなと(笑)。

ガク:あと今回すごく勉強になったのは、曲自体、SNSに乗せることを意識して作るという部分だったんですよ。僕らはいつも“いい曲作ろう!”っていうシンプルな感情で制作してますけど、ひらめさんはTikTokに乗せることをしっかりイメージしてメロディも作ってらっしゃるんですよね。曲のどこを使ってバズらせたいかとか、戦略的な部分も含めて曲作りをするっていうのはほんとに大きな発見ではありました。

ひらめ:みんなの聴きやすい時間は15秒だっていう話を聞いたことがあったので、伝えたいフレーズやパートはなるべく短く、15秒以内にしようっていうのは普段からけっこう意識してます。ただ、歌詞に関しては考えすぎると自分の言葉じゃなくなってしまう気がするので、頭の中からパッと出てきたものを使うようにはしてるんですけど。

――SNSを意識した楽曲にしようと思ったのは、それだけ届けたい層が明確だったのかもしれないですよね。

ヒョウガ:そうですね。ひらめさんとせっかくコラボできることになったので、どうせだったら同世代に響く曲を作りたかったんです。だからこそSNSは外せないだろうっていうことにもなって。あとは……あんまり公に言うことじゃないのかもしれないですけど、単純にSNSでバズりたいっていう思いもありました。

ひらめ:あはははは。

ガク:ぶっちゃけたね。でもまぁ実際あったよね(笑)。

ひらめ:バズるバズらないは置いといたとしても、TikTokは短い時間で自分の伝えたいことがしっかり伝わるアプリだと思うので、そこを意識するのはいいことだなと思いますけどね。

田中雅功

――さくらしめじからのオーダーを受け、ひらめさんはどう曲作りをしていきました?

ガク:あー、それは僕らも聞きたい。

ひらめ:打ち合わせでいただいたテーマから思い浮かぶものを紙に書き起こしつつ、頭の中で主人公の女の子の気持ちになって物語を描いていった感じですね。けっこう作りやすかったと思いますよ。“片思い”とか“相手はバイトの先輩で”とか、ほんとにテーマが明確だったから。

ヒョウガ:あーそうでしたね。バイトの先輩って言いましたね、僕。

ひらめ:で、メロディの違う2パターンを送らせていただいて、「どっちがいいですか?」って判断してもらった感じで。

ヒョウガ:それがね、両方ともすごくよかったんですよ!

ガク:そうそう。ほんとに悩んだんだけど、結果的にはTikTokにマッチしそうな疾走感やキャッチーさを感じるほうを選ばせていただきました。それが「ストーリーズ」なんです。

ひらめ:片方はけっこうひらめっぽい曲だったんですよ。普段のひらめの曲に近い雰囲気というか。なので、さくらしめじさんが歌うことをイメージしてもう1曲は作ったところ、そっちを選んでいただけたのでうれしかったですね。歌ってくれる人のことを想像して曲を作ることも初めてだったので、すごくいい経験になりました。

ヒョウガ:歌詞も本当に素敵な仕上がりだったので、さすがだなぁって思いましたよ。

ひらめ:ありがとうございます(笑)。私は普段からシンガーソングライターやバンドの曲、ヒップホップなんかもよく聴くので、そういったものの中から気になったフレーズを自分の思い描くドラマに当てはめながら書いていったりするんですよ。

ヒョウガ:へぇ! ヒップホップも聴くんですか。

ひらめ:めっちゃ意外って言われますけど(笑)。

――だからなんですかね、「ストーリーズ」のサビでは、〈ストーリー〉と〈素通り〉でしっかり韻を踏んでいたりもして。

ひらめ:あははは。

ヒョウガ:そこ、最初に聴いたとき、ほんとにすごいって思いました! しかも、その“ストーリー”って単純に“物語”という意味にもとれるけど、もうひとつ、インスタの“ストーリー”という意味もあるっていう。歌詞をいただいたとき、ひらめさんに確認しましたからね。「この“ストーリー”ってあの“ストーリー”ですよね?」って。

ひらめ:あははは。そうですね。

ヒョウガ:僕らから提案させていただいたことではありますけど、ここまで違和感なくSNS要素を歌詞に入れてくださるとは!

ひらめ:私はひとつの言葉にいくつかの意味を持たせるのがすごく好きなんです。この言葉とこの言葉をかけたらどうなるかなとか、いろんな想像を膨らませながら歌詞は書いてますね。

ガク:Aメロに出てくる〈信号が青に変わる〉のところもまさにそういう感覚で聴けますよね。普通に通学途中とかに見る信号のこととしても聴けるけど、恋をしている相手に対して自分の気持ちの信号が青になるっていう意味にもとれるじゃないですか。

ひらめ:そうですね。好きな人に会いたいっていう気持ちを信号で表したというか。

ガク:そういう部分がすごく詩的だなって思うし、そこにこそひらめさんの繊細さが詰め込まれているんだなってすごく感じましたね。ほんとに勉強になります。

――歌に関してはいかがでしたか?

ガク:レコーディング前までは、僕らが女の子目線の曲を感情込めて歌ってもなんかちょっと違うんじゃないか、みたいな話をずっとしてたんですよ。でもいざレコーディング当日に歌ってみたら、やっぱり気持ちを入れたいなっていう感情が2人ともに出てきて。結果、そうして正解だったなと思います。ひらめさんにコーラスで加わっていただくことも決まっていたので、なおさら男性である僕らの声の厚みを出したほうがいいバランスになるだろうなって判断もありましたしね。

ヒョウガ:実際、歌ってみるとこの曲の感じ方が全然変わったんですよね。なので、できるだけ歌詞に合わせた表現をするように意識しました。

――歌いわけはどう決めていったんですか?

ヒョウガ:仮で歌入れを何度もして、それを聴きながら考えていきました。

ガク:1人ずつ何回も歌ってみてね。サビの終わりに出てくる〈…ってなんてね〉のところはヒョウガが歌ったほうがいいのか、僕が歌ったほうがいいのか、それとも2人で歌ったほうがいいのか、みたいな感じで細かく試しながら決めていって。そこは結果的にヒョウガが歌ったんですけど。

ひらめ:私としてはすごくかわいい曲を作った感じだったんですけど、2人が歌ったものを聴かせていただくと、かわいさの中に切ない雰囲気もすごく感じたんですよ。自分が作った曲なのに、他の人が作った曲のように聴こえてくるのが新鮮だったし、すごくいいなって思えたところでしたね。あと個人的には〈もっと増やしたいの〉っていうフレーズの〈もっと〉がめっちゃ好きなんです!

ガク:あ、僕が歌ったところですね(笑)。

ひらめ:あれはもう私が想像していた通りの〈もっと〉でした(笑)。

――ひらめさんはコーラスでも参加されていますね。

ひらめ:はい。しめじさんはすごくキレイなハモりをされるお二人なので緊張しました。現場ではヒョウガさんがピアノで音を拾ってくださったりもして。本当にありがとうございました……!

ヒョウガ:いやいや(笑)。他の方のレコーディング現場を見ることってあんまりないので、貴重な体験ができましたね。ひらめさんの声が入ったことで、この曲の良さが一層、引き立ったと思います。

ガク:そうだね。僕らだけじゃ出せなかったかわいさがより出てると思います。ひらめさんはハモりが苦手だっておっしゃってましたけど、実際はすごくスムーズに終わってたからすごいなって思いましたよ。

ひらめ:ありがとうございます(笑)。今回のハモりは自分が普段、歌わないキーだったので、自分の声じゃないように聴こえたりもして。自分の新たな声を発見できたような気がします。楽しかったです!

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