THREE1989はアップデートを恐れない メジャーデビュー配信ベストアルバムで導き出した“現代に踊るための最適解”

 以上の特色を踏まえて、『THE BEST THREE1989』について詳しく見ていこう。収録曲は、キャリアの中でも特にエポックメイキングな側面を持つ自信作や、ライブで長きにわたって愛される定番曲を中心にメンバーが選出。先述した通り、既存の楽曲については2021年式の新解釈が吹き込まれているため、キャリアの総括作にしてTHREE1989の将来的なビジョンもうかがえる絶妙なアンソロジーとなっている。

 アルバムのオープニングを飾るのは「High Times」。デビュー作然とした活気はそのままに、サウンドや歌声のニュアンスが大幅にブラッシュアップされ、THREE1989が歩んできた道程の確かさをさっそく実感させられる。続くニュージャックスウィング「UNIVERSE」ではイントロ部分にスクラッチを新たに導入。さらにはリズムの重量感が劇的に強調されるなど、よりフロアラヴァーを意識した仕様に。

 このように、オリジナルバージョンからの変貌ぶりが楽しく、筆者のようにデビュー当時からTHREE1989を知る人にとっても新しい発見に出会える作品なのだが、一方で彼らの織りなす意匠が誰でもスマートに味わえるという点もまた、ベストアルバムである本作ならではの魅力と言える。「High Times」などと並ぶ代表曲「UMBRELLA」のキャッチーなディスコ情緒には何度でも胸が高鳴るし、活動最初期の一曲「Mr.Sunshine」では、苦悩の先にあるポジティブなメッセージを眩いサウンド展開で活写。「涙のダンスフロア」や「Rambling Rose」といったソウルバラードが、Shoheyのロマンティックなボーカルに気持ちよく酔いしれられるハイライトなら、終盤の「サクラビト feat. おかもとえみ」や「Utopia」はエレクトロへの接近、初のコラボレーションなどのトピックを携えた最新型のTHREE1989ーーという具合に、彼らが培ってやまないエンターテインメント精神が豊かなバリエーションで集約されており、純粋に娯楽度が高い。THREE1989に初めて触れた人の「身体を揺らしたい欲」でさえ、本作はさぞ力強く刺激することだろう。

 極めつきは、唯一の新曲として収められている「HARU(仮)」。ハウスビートと重厚なストリングスをフィーチャーするなど、いつにも増してドラマティックなモードが際立つこのナンバーは、メジャーデビューを果たしたTHREE1989からの新たな決意表明と呼ぶにふさわしい。特に、日本語の奥ゆかしさをとことん尊重した歌詞からは、アーティスティックな叙情性を深めていこうとする気概だけでなく、まだ見ぬ領域に対する挑戦心もありありと伝わってくる。

 まさに同曲のフレーズ〈変わらないまま 変わりゆくのさ〉さながらに、臨機応変なアップデートを繰り返してきたTHREE1989。本作で持ち前のセンスを仲むつまじく振るう彼らを確認するにつけ、これからも変わらず否、よりいっそう巧みなテクニックで我々の心と身体を踊らせてくれるのだと、一気に嬉しさが込み上げた。あらためて、2021年の躍進にも期待したい。

HARU(仮) - Lyric Video / THREE1989

■リリース情報
『THE BEST THREE1989 -Don’t Forget Dancing-』
配信日:2021年1月13日(水)
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