浜崎あゆみ、光を掲げ走り続けた2020年ーー配信ライブからドラマのヒットまで、皆を導き寄り添った1年を振り返る
クリスマスイブに有観客・無配信で行われる予定だったファンクラブ会員限定の『ayumi hamasaki Special SHOWCASE ~Xmas Eve 2020~』を、無観客&誰もが見られる無料配信に切り替えた浜崎あゆみ。予期せぬクリスマスの英断に賞賛の声が上がるなか、恒例となる国立代々木競技場第一体育館での年越しライブ『COUNTDOWN LIVE 2020-2021 A〜MUSIC for LIFE〜』も、無観客の配信にせざるを得ないという現実がある。オフィシャルサイトでは、「皆様ご家族でのステイホーム期間中、エンターテインメントの力が光となり、少しでも支えとなれるよう引き続き尽力して参ります」と本人がコメントしているが、忘れられない年の最後の瞬間だけでも同じ時間と空間をと願った浜崎、ファン双方の気持ちを思うとなんとも切ない。もちろん、そのやりきれなさを浜崎は配信のベストパフォーマンスに込め、隔てられた時間も空間も超えて視聴者の心を照らすことだろう。この1年ずっとそうしてきたように。
コロナ禍に見舞われた2020年、浜崎あゆみが取り組んだ最初の配信ライブは、7月の『ayumi hamasaki PREMIUM LIMITED LIVE A ~夏ノトラブル~』だった。1会場のみで中止を余儀なくされた全国ツアー『ayumi hamasaki TROUBLE TOUR 2020 A〜サイゴノトラブル〜』を「幻にはしないよ」とでもいうようなその力強い姿は、身も心も弱っていたであろう人々に大きな希望を与えた。10月2日、自身42歳の誕生日には、その幻と言われたツアーを再現&再構築した『ayumi hamasaki TROUBLE TOUR 2020 A ~サイゴノトラブル~ FINAL』も。現状できる術を最大限に使って、2020年のツアーに2020年ならではの落とし前をつけた形だ。自身のワンマンのみならず、今年配信での開催となったエイベックスのフェス『a-nation online 2020』にも参加。浜崎からのラブコールで実現したくっきー!(野性爆弾)とのブッ飛んだ映像コラボは、ステイホームの退屈や憂さを晴らす「神業」として大きな話題となった。
この年末の2本を入れて配信ライブは計5本。しかも、すべてセットリストも演出内容も開催場所も違う。なんという貪欲さだろう。これができるのは、2000年から一度も欠かさず毎年新たなツアーを敢行し、底力を培ってきたからこそ。ライブに対する並々ならぬ愛と、あのジャンヌ・ダルクにも似た使命感で、浜崎あゆみはコロナ禍にあっても先頭に立って光を掲げ、走り続けてきた。やはり彼女はどこまでいってもスーパースター、スーパーウーマン。そう思わせてくれる、2020年下半期だった。
その一方で、上半期には我々と同じ「普通の人々」的な一面も多く垣間見られた。ご存知のように、2019年の終わりに浜崎あゆみは第一子を出産している。結婚という形を取らない40代でのこの選択と発表は、一人の女性としての生き方を曝け出すことでもあった。もちろん、出産ギリギリまでライブに取り組み、出産後も即ライブに復帰するという見事なビフォー/アフターは、仕事と子育てを両立している逞しい世の女性たちにとっても驚きであったわけだが、浜崎あゆみもまた同じ人間としての営みのなかにいる存在として認識されたことは大きかった。ツアーが中止になった分、子供と心置きなく過ごす時間に使ってほしいと願った同年代のファンも多かったはず。
そんな折、往年の大映ドラマを彷彿とさせる鈴木おさむの脚本と田中みな実の怪演で、ドラマ『M 愛すべき人がいて』が社会現象と呼べるほどの大ヒットに。漫画チックに描かれた当時の音楽業界を背景に、家庭環境やプロデューサーとの恋も含め、デビュー前の浜崎の頑張りが独特の可笑しみのなかで見られたことで、彼女をかつてなかったほど身近に感じる人が激増。安斉かれんが、嫌味のないあどけなさで果敢にアユ(役名)を演じたことで、若い世代の共感も集まり、「M」や「A Song for XX」など初期の名曲が、ごく自然に次世代へと受け継がれることにもなった。
最終回が終わると同時に、ドラマについて沈黙を続けていた浜崎は、鈴木おさむのインタビューを引用しつつ、「ほんと最低で最高で、大嫌いで大好きでした」とSNSで発言。ドラマにハマりながらも、本人はどう思っているのだろう? と興味を募らせていた視聴者もこれでスッキリしたようで、自分たちと同じように浜崎もステイホーム中にはドラマを観ていたという事実に、SNSでは歓喜の声が飛び交った。