「I Love」インタビュー

ROVIN × Buddyが明かす、新曲「I Love」で曝け出した己の弱さとリスナーとのつながり「一文字も無駄なフロウなんてない」

Buddy「リスナーとの会話は『I Love』で一番できているんじゃないかな」

ーーROVINくんのリリックは悪し様にいえば「弱音」にも通じる部分がありますよね。だからヒップホップで内包されがちな「マッチョさ」とは真逆のアプローチがある。

ROVIN:まず「自分と向き合う」というのが前提のテーマだから、逆にラッパーである以上、自分の弱さを見つめることも避けちゃいけないなって。

Buddy:それは大切だったと思う。自分たちの弱さを知ってもらってから、その上で自分たちをより知って欲しいというか。

ROVIN:JABBA DA FOOTBALL CLUBのときは「切り込み隊長」みたいなフィルターを意識的に通すんですけど、今回はノーフィルターでそのまま、どストレートで行ったって感じですね。でも、そのモードになる作業がえらい大変で、思ったよりエグかったっすね。正直言うと、この曲、いまだに俺はちゃんと聴けないんですよ。完成した曲を聴いて……俺、初めて泣いちゃったんですよね。「I Love」ができて、次の日に昼間にゆっくり風呂に浸かりながら流したら、ボロボロ涙が出てきて。「え、マジ? マジ?」って(笑)。2時間くらい嗚咽が止まらなくて、そこからまともに聴けないです。でも、それぐらい自分と向き合った曲なんですよね。

Buddy:分かる。ヘヴィすぎて自分たちではあまり向き合えないんですよ。

ROVIN:自分に対する破壊力も強すぎて、やば! みたいな(笑)。今回ジャケとかビデオとか色々やってくれたのが、JABBA DA FOOTBALL CLUBのNOLOVで、あいつから「ジャケこういう感じの背景が浮かんでるんだけどどう思うかな?」「ビデオはこういう感じがいいと思うんだけどどう思う?」って当然いろいろな確認や連絡があるんだけど、「俺の意見はいいから、もう頼むから早くこの曲に化粧をしてくれ!」って感じで(笑)。

ーー素のまますぎるから、早く「客観」にして欲しいというか。

ROVIN:「早く化粧をしてくれないと俺はまともじゃいられなくなるから」って(笑)。だから今回のインタビューも、「こうだったんだっていうのを早く話したい!」って思っていたんです。だから制作に対するメンタルは相当大変だったんだと思う。苦しかった。

Buddy:苦しかった。それに尽きる。

ROVIN:俺もまさかこんな風になるとは思っていなかったですから。レコーディングのときは「いいじゃんいいじゃん! 良い曲出来たよ!」ぐらいに思っていたけど、冷静になった時に聴いたら「なるほど、苦しかったんだね、君」みたいな(笑)。でも、それこそラッパー冥利に尽きるというか、ラッパーでよかったって思いました。ラッパーみんなそうですけど、リリック書くのってカウンセリングみたいなところがあると思っていて。作って自分自身を見つめ直したり、曲を聴いてもらって「私もそうです」「俺もそうだったんだ」みたいな、そういう言葉で本当に心が癒されるというか。それなかったら本当にやばいですよ。この曲がなかったら結構ふわふわしたままだったかもしれない。

ーーなるほど。Buddyくんのリリックも、自分は何者なのか、自分をどうやったら愛せるのか、自己肯定はどうやったらできるのか、という内容になっていますね。今年は自己や他者の肯定だったり、反ヘイトや自尊心、その根本となる「人権」が世界的にも注目される年になったと思うんですが、その潮流ともリンクする部分があるなって。

Buddy:確かにそれは制作中に思ったことで。自分自身のことを丁寧に書けたことは、自分でもすごく気に入ってるし、そこに嘘はないんですよね。内容としても、ちょうど希薄なことが言えないターンに入ってきたと思うから、時期としても合っていたのかなと思うし、この部分を見てもらえないと、これからも自分の音楽を聴いてもらえないなって。

ROVIN:俺らだからこそ経験したこと、俺らにしか出来ない経験が今年の活動も含め色々あるはずだから、それと向き合ってちゃんと書いてみようっていうのはありました。でもそこで自分たちだけの話で終わりたくはなくて、聴いてるみんなに何かを感じてほしいという想いは、作っている側として当然あります。だからフックで俺らの想いを伝えたことで、いい感じに自分たちとリスナーがつながったと思いますね。どっぷり自分と向き合って、もう戻れないくらいまで深いところに行きましたけど、それを助けてくれたのがこの曲のフックというか。自分で作った曲に、自分が助けられたような(笑)。

Buddy:毎曲毎曲そうするようにはしてるんですけど、ちゃんと今までの曲ではできなかったリスナーとの会話みたいなことは、「I Love」で一番できているんじゃないかな、と思いますね。

ROVIN:確かにね。自分との会話だけではないと思うし、そういう曲を誰かに聴いてもらえるだけでも嬉しい。この曲以外もそうですけど、やっぱり曲というのは聴いてもらって初めて完成するものなので、こんな酷い状況の2020年であっても、発表してみんなに聴かせられる時点で超最高なんです。そう思って、最初は歌詞ももうちょっと内々の歌詞だったのを、二人での最後の詰めでは外側には向けたいねと話して。だから、結果的にはみんなへのメッセージ的なものにはなってると思います。それぐらい深く考えないと、刺さるところに刺さらないなとも思うし。ただ一方で、矛盾するようだけど、「I Love」はリスナーに刺さらなくてもいいとも思うんですよね。それでも構わない。

Buddy:ストレートに作ったからこそ、自分で納得できてるし、それでいいのかなって部分もありますよね。

ROVIN:そうそう。それぐらい自信があるし、良いものが出来たっていう感触がある。だから、この曲が刺ったときは超つえーぞ、って思いますね。解釈に関しても、一つの答えじゃなくて、みんなには色んな風に思ってほしい。俺がBuddyの歌詞を見て、Buddyも俺の歌詞を聴いて思うことは一言じゃ言い表せないし。ただ、一つ言えるのは、こう見えて二人とも苦しかったんだなぁって(笑)。

Buddy:ははは、たしかに(笑)。

ROVIN:それも踏まえて、みんなには何か思ってもらえるといいですね、本当に。

ーー先の話を伺うと、タッグとして自分たちの原点や根本を打ち出した先は、どう見えています? 

Buddy:すぐにやりたいし、作ろうと思えば作れると思うんだけど、この曲の存在が相当デカいから、もう何個かインプットしないと、これに勝るものは作れないと思っていて。いま俺らにあるものは全部出し切っているんで、もっと吸収しないといけないと思いますね。

ROVIN:だから多分、次は間違いなくアルバムになるでしょうね。それぐらいのアウトプットの仕方じゃないと、俺らも、リスナーの方も納得出来ないんじゃないかなって。

Buddy:ただ(「I Love」と)同じような曲は書けないと思う。同じことはできないから、本当にガラッと変わるような気もする。それが出来るかは、リスナーにも期待してほしいし、自分たちにも期待してますね。

I Love - ROVIN × Buddy
「I Love」

■リリース情報
ROVIN × Buddy
「I Love」
2020年12月23日(水)配信
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