MIHO NAKAYAMA Playlist「39/35」特別企画

ミッツ・マングローブが語る、オリジナルプレイリストを通した中山美穂の魅力「J-POPの進化の歴史的資料みたい」

 2020年にデビュー35周年を迎えた中山美穂。そのベストアルバム『All Time Best』の発売を記念して、女装家で音楽への造詣が深いミッツ・マングローブ氏が、中山美穂の楽曲によるオリジナルプレイリストを作成。完成したプレイリストを前に、選曲にあたってのこだわりや、中山美穂の楽曲、歌手としての魅力を聞いた。(蒲谷晶子)

全曲をエンドレスで聴き込み生まれたプレイリスト

ーー今回の選曲にあたり、あらためて楽曲を聴いてみていかがでしたか?

ミッツ・マングローブ:ミポリンの楽曲を聴き直して感じたのは、80年代、90年代、2000年代と、3つのディケイドそれぞれの最先端が反映されていることですね。もちろん、アイドルの楽曲には当時の時代性が反映されているんですけど、とくにミポリンの曲からはそのときの最先端のサウンドを、ストレートにぶつけている印象を受けました。

 90年代は掘り出しものの楽曲も多いですね。当時は洋楽で流行したサウンドが邦楽に落とし込まれるまでに、タイムラグが半年から1年ぐらいあったと思うんです。でもミポリンの楽曲は洋楽とほぼ同時進行というか、アレンジにしてもメロディラインにしても洋楽の流行が明確に昇華されている。90年代初頭に井上ヨシマサさんが編曲された楽曲には、ハウス系の音色を使った楽曲があったりするし、80年代後半のユーロビート系の楽曲も当時の洋楽にすごく忠実で。洋楽の流行を邦楽に取り入れるときって、日本で受け入れやすい音色にするとかテイストを変えることが多いんです。だけどミポリンの楽曲はそこがわりとストレートなんですよね。

――リアルタイムで当時のサウンドが反映されているというか。

ミッツ・マングローブ:今はインターネットやサブスクがあって、日本と海外の間に音楽的なタイムラグが小さいじゃないですか。でも、まだそのタイムラグが大きかった時代に、これだけのことをやっていたのがすごいし、J-POPが洋楽の要素をどう取り入れて進化してきたのか、その過程みたいなものもわかるんじゃないかな。選曲にはそういう視点も入れています。J-POPが欧米のダンスミュージックをどう取り入れたのか、その歴史的資料みたいな感じもあるんですよね。

ーー曲順もそれにまつわる感じで考えられたのでしょうか?

ミッツ・マングローブ:曲順はあえて時系列にしていないです。それをやるとダサくなると思ったから。私はこういうプレイリストを作ってカセットに録音していた世代なので、今回の選曲をするときにはそういうニュアンスもこだわりたかった。今はワンタッチでシャッフルできるから、そんなには伝わらない感覚かもしれないけど、一度はこの順番通りに聞いてみてほしいと思います。

 選曲にあたって1曲目をどうしようかな、というのはずっと考えました。どの曲で始まるかによって、そのあとに選ぶ曲も全然変わってくるので。とりあえず88、9年ぐらいのユーロビートから90年代に入って一気にハウスにサウンドが変わるところ、そういった変化も織り交ぜつつ、季節感みたいなものも少し考えて。たとえば「Funky Mermaid」から続く3曲は夏シリーズにしてみたり。あとは歌詞同士のつながり、整合性みたいな部分も考えたかな。

――選曲にあたってはまず記憶にある楽曲からあたってみた感じでしょうか。それともひたすら聴いてみて?

ミッツ・マングローブ:とにかく全曲をエンドレスで聴き続けて、そこから「今日はこれだな」という曲を20曲選んで、次の日に「今日はこれ」とまた20曲選んで……。そうやっていく中で自分の中にすごく染み付いた曲もあったんですけど、そういう情に流されて選ぶとひとりよがりになるので、一回引いて考えて、サブスクはマニアックな曲も手軽に聴けるからリミックスも入れたいなとかも考えつつ。

 ただ、あまりテイストを寄せてつなぎやすい曲でつないでしまうと、全部の雰囲気が似ちゃうんですよね。実はこれがプレイリストを考えるときの一番の落とし穴。ときにはガラッと色や情景、テンポ感を変えるために、あえてバラードを入れたところもあります。

 バラードといえば、ミポリンの楽曲には他のアイドルと比べてダントツでバラードの名曲が多いんです。だから、みんながよく知っているバラード曲もちょこちょこ入れて。あとはアルバム曲もバラしてまぶしています。たとえば「GET YOUR LOVE TONIGHT」は、同じアルバム『CATCH THE NITE』収録の「CATCH ME」とつなげてみたり。

 アルバム曲には攻めたアレンジが多いので、このプレイリストを聴いて、いろんなアルバムにも飛んでもらえたらいいですね。当初、アルバム『manifesto』の曲も候補にしていて結局入れなかったんですが、あの辺のサウンドなんて本当にゴリゴリですから(笑)。当時から本当に気概のあることをやられていたと感じます。

ーー代表曲からマニアックな曲まで、本当に多彩な選曲だと思います。ただ「Rosa」をもっと序盤に持ってこられるかな? と思っていたので、そこは意外でした。

ミッツ・マングローブ:実は最初のほうに持っていく案もあって、それこそ「Rosa」と「Platinum Cat」のどっちを先にするかも、何回も考え直しましたね。考えていく中で、中盤でひとしきり切ない楽曲が続いてから「派手!!! 」で1回リセットして、「わがままな あくとれす」でマイナー調に戻ってまたウェットになったときに「Rosa」がきたら、聴いていて「ウワーッ!」ってなるなと思って。ここの流れ、私好きなんですよ(笑)。

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