『JAPAN ONLINE FESTIVAL』が突き詰めたオンラインならではの表現 主催者とアーティストが共有したこのフェスが目指す姿

『JAPAN ONLINE FESTIVAL』からみえた目指す未来

 今回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL』はカメラとアーティストの立つフロアがフラットになっていたことも特異な点だろう。通常のライブであれば1段高いステージが一般的で、オンラインライブの場合もスタジオライブのような形でも無い限り、多くは通常のライブを踏襲したステージを作り、通常のライブになるべく近い形で演奏が行われていた。その一方で『JAPAN ONLINE FESTIVAL』はステージとカメラがフラットな位置関係になることで、アーティストが普段のライブよりも自由に動き回り、それが結果として普段のライブや他のオンラインライブでは見ることのできない映像になっていたことが印象深い。

おいしくるメロンパン
おいしくるメロンパン

 また、オンラインライブ、イベントの多くは生中継、もしくは生中継風に見せるような映像となっていた。それはライブの「生感」を分かりやすく演出するためである。しかし今回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL』は事前収録であることをあらかじめ明言。さらにSNSなどで先立ってライブ映像の一部を先行配信した。既存のオンラインイベントにおける生中継、もしくは生中継風の演出は結果として「蓋を開けるまでわからない」状況を作り出し、決して安くないチケットを購入するユーザー/オーディエンスにとって購入、視聴のハードルを高めてしまっている。事前にライブの模様を少しでも見ることができるのは、ユーザーにとっても非常に有意義な施策だったのではないだろうか。また、ライブ中はTwitterでヤバイTシャツ屋さんのオフィシャルアカウントやポルカドットスティングレイのボーカル・雫がリアルタイムでツイート。SNSという場で実際の出演者と時間を共有しながらライブを見るという、通常のライブや生中継のオンラインイベントでは体験できないライブを生み出していた。

ポルカドットスティングレイ
ポルカドットスティングレイ

 ここまで記してきたように、今回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL』は既存のリアルライブ、リアルフェス、あるいはオンラインイベントとは一線を画す、新しいオンラインイベントの在り方を提示する非常に意義深いフェスとなっていた。各アーティストのライブ終了後に続けて配信された各アーティストと『ROCKIN’ON JAPAN』総編集長の山崎洋一郎、FM802のラジオDJ飯室大吾によるBACKSTAGE TALKでは多くのアーティストが次回開催時も参加の意志を表明していた。この先これまで通りリアルイベントが開催されるようになっても、今回の『JAPAN ONLINE FESTIVAL』のようにオンラインならではの表現を突き詰めたイベントは残り続けることだろう。そんな未来への予感に満ちたフェスであった。

■ふじもと
1994年生まれ、愛知県在住のカルチャーライター。ブログ「Hello,CULTURE」でポップスとロックを中心としたコラム、ライブレポ、ディスクレビュー等を執筆。
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