BTS JIN、常に弟たちに寄り添う最年長としての役割 自らの実力を磨き、努力から生まれた自信で届ける笑顔
とはいえ、デビュー当初からそうした振る舞いをしていたわけではなく。JINはどちらかと言えばはたから見るとクールな印象だった。それは、彼のキャリアが影響していると言えるだろう。もともと俳優を目指し、建国大学校映画芸術学部に入学したJINは、街で事務所のスカウトを受け、オーディションを経て練習生となった。
ダンスもボーカルもイチからのスタート。他のメンバーはすでに経験や才能で輝きを見せ、若さゆえの可能性に満ちあふれていた。そんな弟たちとグループを共にするには圧倒的な努力しかない。特にダンスは全員の動きを合わせたときに、その実力差が明確に出る。すでにダンサーとして才能を認められていたメンバーと踊るというプレッシャーは相当なものだったはずだ。
「正直言うと、僕もダンスをうまく踊れるようになりたい」という本音をLogに残していたこともあった。いつかデビュー前からハイレベルなダンスを披露してきたメンバーのように踊るために、毎日欠かさずみんなが寝ている間も筋トレをし、夢の中でもレッスンをしているような寝言をメンバーに聞かれたというエピソードも語られている。
JINの努力が報われたかどうかは、BTSの一糸乱れぬ群舞を見れば明らか。さらに高い歌唱力も披露し、その歌声は「シルバーボイス」と評されるほどに。これからの季節は、JINの高音が美しく響く「Crystal Snow」が恋しくなる。一度心に決めたことをやり遂げる芯の強さが、そのまっすぐ伸びる歌声に表れているからだ。
自らの実力を磨くことで弟たちの活躍の場を広げ、その努力から生まれた自信で弟たちに笑顔を届け、ときには心ない言葉に傷つく弟たちのことも盾となって守ろうとしてきた。2019年には初の自作曲「Tonight」を発表したことも、記憶に新しい。虹の架け橋を渡っていったペットたちへの想いを、柔らかなあの声で歌い上げる。どこまでも痛みに寄り添えるからこそ、紡ぐことができるやさしい楽曲だ。
そんな長兄を見て弟たちは、さらにBTSというファミリーに誇りを持つことができたに違いない。ここは安心して自分を表現できる場所。そうした安心感が自分らしさを出すアーティストたちにとって、どれほど大切なものか。それはこの大変な今、それでも自分の人生を生きようとする私たちにも繋がる。「たしかに一人ひとり辛いことは違うかもしれれないけれど、きっと共感できるよ」。そう語りかけてくれそうな、JINの想いが集約された最新アルバムのリリースが実に待ち遠しい。