森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.219

LiSA、ドリカム、和楽器バンド……独自の世界観を築き上げてきたアーティストたち 新譜5作からピックアップ

10-FEET『シエラのように』

 別れを受け入れ、切なさ、悲しさ、愛しさを抱えたまま、僕は進んでいく。10-FEETのニューシングル『シエラのように』の表題曲は、大切な人と会うことができず、一変してしまった世界のなかで、“こんな歌が聴きたかった!”と快哉を叫びたくなるナンバー。清々しいまでにまっすぐなバンドサウンド、必ず口ずさみたくなる親しみやすいメロディとともに彼らは、〈変わり始めた 僕やあなたは さよならさえも受け止めて〉と歌う。ロックバンドにとって最も過酷な時期に、新たな地平を切り開くような楽曲を生み出せる10-FEETは、やはり特別な存在だ。メロコア直系のビートとロマンティシズムに溢れた歌が共鳴し合う「彗星」、過ぎ去ってしまった風景、そこで出会った人々に思いを馳せる1分ちょっとのアッパーチューン「あなたは今どこで誰ですか?」も、現在の彼らのモードが強く反映されている。

和楽器バンド『TOKYO SINGING』(CD ONLY盤)

 和楽器バンドがニューアルバム『TOKYO SINGING』をリリース。先行配信曲「Singin' for....」「月下美人」、そしてEVANESSENCEのエイミー・リーとのコラボレーションが実現した「Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE」などを収録したニューアルバム『TOKYO SINGING』が到着。ライブ感に溢れる攻撃的なバンドサウンドを軸にした「reload dead」、“渋谷が戦地になる”というSF的な世界を描いたアッパーチューン「ゲルニカ」といったエッジの効いたロックチューンからは、初期の和楽器バンドの匂いがたっぷりと感じられる。〈誰かが足を、一歩を踏み出さなきゃ 世界中がきっと暗いままだ〉という歌詞が心に残る「Calling」も本作のポイント。8月中旬、他のアーティストに先がけてアリーナライブを開催した和楽器バンドは、これまで築き上げてきた地位にこだわることなく、さらなる未来に突き進んでいるようだ。

和楽器バンド *WAGAKKIBAND / "Singin' for..." MUSIC VIDEO

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

関連記事