声優・工藤晴香が“ロックシンガー”として表現する音楽 ソロデビュー以降で開花したボーカルの個性
今年3月25日に1stミニアルバム『KDHR』(読み:くどはる)でソロアーティストデビューを果たした声優の工藤晴香が、早くも2ndミニアルバム『POWER CHORD』を10月7日にリリースした。全曲工藤自身が作詞を手がけた前作から引き続き、今作でも全6曲で作詞を担当したほか、「Magic Love」では作曲にも挑戦。デビュー作ではソロデビューに対する決意表明に加えて、これまで経験してきたことを受けて気づいた“許す心や間違いを認める精神的な強さ”、そしてこれまで出会ってきた“アナタ”への思いが綴られていたが、続く今作ではデビュー作リリース直後の今年4月から制作がスタートしたこともあり、激動の2020年を通じて彼女が感じた思いを“希望”が見える形でしたためている。
デビュー作『KDHR』リリース時に工藤にインタビューした際(参考:工藤晴香が語る、『KDHR』に至る音楽遍歴とソロへの強い意志 「『バンドリ!』で今まで知らなかったことを知れた」)、これまでの音楽遍歴について明かしてくれた。中学時代にASIAN KUNG-FU GENERATIONやBUMP OF CHICKENに出会ったことをきっかけにロックに興味を持った彼女は、高校生になると洋楽に手を出し始める。アヴリル・ラヴィーンやt.A.T.u.を入り口に、Green DayやNirvanaなどにたどり着き、「カート・コバーンみたいになりたい!」との思いからギターも始めている。
また、別のインタビュー(参考:白夜書房『VOICE BRODY』Vol.8)では「いつか個人的な趣味全開の作品を作るとしたら、どんな音楽性にしたいか?」という問いに、「私、Nine Inch Nailsが大好きなんですよ。だから、ああいう激しさの中にも美しさがある音楽は、いつか挑戦してみたいですね」と回答。改めて本稿に挙がったような海外のロックバンドが工藤に与えた影響がかなり大きいことが伺え、この経験がのちに次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』(以下、『バンドリ!』)に携わり、リアルバンドRoseliaのギタリストとしても活躍するきっかけにもつながっていく。
『バンドリ!』での活躍が評価され、ソロアーティストとしてのデビューが決まった際も、工藤は前出のインタビューで「どういう方向性やサウンドでやっていくかというのは、かなりディスカッションしました。例えば激しい曲、おとなしい曲、ちょっとシンセが入ったEDMっぽい曲とか、いろんな曲を試しに歌ってみて『こういうサウンドが自分の声にハマるんだ』ということを理解したりと、音作りに関してはじっくり時間をかけましたね」「もともと激しい曲がすごく好きというのは、一緒に作業をしてきたスタッフさんもわかってくださっていたので、『激しいけどシンセがすごく鳴っていて、ちょっとEDMっぽい』みたいな軸が決まって推敲を重ねていった感じでした」と説明しており、自身の趣味を反映させつつも、声優として活動するからこそ自分の声をうまく活かせるサウンドを選択したことが伺える。そして、これらの音楽性をうまく表現することができるクリエイターとして選ばれたのが、PassCodeのサウンドプロデュースで知られる平地孝次。デビュー作『KDHR』では全楽曲の作曲・アレンジを手がけ、エッジの効いたギターを全面的にフィーチャーしたハードロックから複雑な展開を繰り返すエレクトロニコア、ストレートなギターロックやポップチューン、歌を軸にしたスローナンバーなど幅広い音楽性が展開されており、各曲で聴ける工藤のボーカルも時に楽器の一部として機能するなど、かなり聴き応えのある内容に仕上がった。