マカロニえんぴつの楽曲にある味わい深さ はっとりが綴る歌詞の真髄を3つのポイントから考察
若者への歌
2019年、マクドナルドの500円バリューセット「こんな時間が、ゴチソーだ。」のCM曲として、「青春と一瞬」を書き下ろした頃から、若者の想いを歌う曲が増えたように思う。〈つまらない、くだらない退屈だけを愛し抜け 手放すなよ若者、我が物顔で いつでも僕らに時間が少し足りないのは 青春と一瞬がセットだから〉ーー若い頃の退屈な日々、大人と子供の狭間の時間、その時間がほんの一瞬であり、それが焦がれるものだと気づくのは大人になってからだ。「ヤングアダルト」は大人になりきれない大人の歌。〈ハロー、絶望こんなはずじゃなかったかい? でもさ、そんなもんなんだよきっと〉と諦めのような言葉も綴られているが、そのあとに続く〈誰も知らない 優しい言葉であの子の孤独を殺せてたらな〉という言葉が、はっとりの人格を表していると思う。歌詞を含め、MCやラジオ、SNSの投稿などを見ていると、はっとりから「母性」を感じる場面がある。基本おちゃらけキャラではあるけれども、人の悲しみをすっぽり包み込むようなところがある。そんなはっとりの人格が歌詞にあらわれ、若者や、若者時代を通り過ぎた大人にも響いているのだと思う。
青春を忘れ、思い出すという循環
「溶けない」で「忘れる」という歌詞が出てくると書いたが、曲の後半では、〈忘れないからね、ちゃんと忘れないからね〉と歌い、メロディ自体が最初に戻りながら〈何度だって溶けない日々の中へ 何度も戻りに帰るよ〉と締めくくられる。「Supernova」でも〈破裂する青春の、その六秒前よ透き通れ 僕は歌っている 足掻いている 戻れないなら、繰り返している〉と書いている。はっとりは青春を忘れ、思い出すという循環、それこそが人生であり、そのことについて歌おうとしているのかもしれない。人生の本質に触れるような歌詞に、私たちは心動かされているのだと思う。
はっとりは、曲の発表に合わせてセルフライナーノーツを自身のTwitterで公開したり(最新曲「溶けない」のセルフライナーノーツは小説調だ)、メンバーから「ポエティックモード」と称されるような泣けるMCをするなど、言葉を楽しんで使い、言葉に力を持たせることができる人だと思う。今回は歌詞にフォーカスしたが、音大出身のメンバーが奏でる骨太なサウンドと、はっとりのお腹の底から絞り出されたような力強い歌声にのせ、意外と歌詞は人生の刹那を歌っているというところが、マカロニえんぴつの大いなる魅力の一つではないかと思う。そして、ファンならご存知であろうが、マカロニえんぴつは各メンバーが本当に優しい人柄である。その人柄をそのまま映すように、はっとりが歌詞を紡ぎ、リスナーをすくい上げてくれるような曲をたくさん届けてくれる。これからも彼らの音楽に身を預け、生まれくる曲を楽しみにしていきたい。
■深海アオミ
現役医学生・ライター。文系学部卒。一般企業勤務後、医学部医学科に入学。勉強の傍ら、医学からエンタメまで、幅広く執筆中。音楽・ドラマ・お笑いが日々の癒し。医療で身体を、エンタメで心を癒すお手伝いがしたい。Twitter