Awichはどこまで昇り詰めるのか メジャーデビュー作『Partition』で辿り着いた表現とスタンス

 この先Awichはどこまで行くのだろう、と皆が思っていた矢先、短いスパンでEP『Partition』リリースとメジャーデビューの報が入ってきた。

 『Partition』は、アルバム『8』や『孔雀』で見せていたコンセプチュアルなストーリー性はそぎ落とされ、拡大を続けていた多様なジャンル性も、ここでもう一度ヒップホップを軸足にぎゅっとスリム化されている印象を受ける。驚かされるのはAwichのさらに表現力を増したラップと歌ではないだろうか。往年のリル・キムを彷彿とする「Sign」での小刻みなフロウ、「Patrona」でのまくしたてるような忙しないラップ。「Good Bye」では自然体な歌唱も披露する。

 これほどの愛や哀しみや強さや弱さが、これほどまでの幅広いラップ~歌とともに無尽蔵に湧いてくることに驚く。借り物ではない、彼女の内面からそれらすべてが絞り出されていることが伝わってくる。だからこそ、Awichを聴くことは生や死と向き合うことであり、疲労感や痛みをも伴う。

 彼女は止まらない。〈A.W.I.C.H./Look at me I’m happening/わたしが Awich〉(「Sign」)や、〈まさか女が来るとは/君臨するとは/鋭さ、図太さ、備えたブルドーザー/耕すgame for new order/私は無限に続くメビウスの輪〉(「Shook Shook」)といったリリックからは、ストリートで揉まれ続けてきた彼女自身が、メジャーデビューに対して意識的かつ意欲的なスタンスであることが伝わってくる。Awichがどこまで昇り詰めるのか。我々はしかと見届けるべきだろう。

Awich - Shook Shook (Prod. Chaki Zulu)
Awich『Partition』

■リリース情報
『Partition』
発売;8月21日(水)
価格:¥1,980(税込)

<収録曲>
M1. Sign
M2. Shook Shook
M3. Patrona
M4. Revenge
M5. Awake
M6. Good Bye
M7. Bad Bad
All Songs Produced by Chaki Zulu / Written by Awich

オフィシャルサイト

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