[Alexandros]、“心の声”でシンガロングした6年ぶりのディスフェスをレポート デビュー以降のバンド史を感じさせた一夜

 シャンぺのライブ終了から数分後、衣装を替えたメンバーが、今度は[Alexandros]として再登場した。始まりは「Adventure」。メンバーの後ろに視聴者のコメントが映り、ここで画面越しに観ている観客の存在が改めて強調される。また、〈亜麻色に染まったZepp Hanedaは〉と歌詞を替えた箇所では、照明によってフロアにいる観客の存在が照らされた。

磯部寛之

 [Alexandros]としてライブを行った後半戦では、たとえシンガロングができない状況でも、“ライブとは、バンドと観客が一緒になって作り上げるものである”という点は揺るがないのだということ、いや、揺るがせてたまるかという意思がより強く伝わってきた。あなたの声もまた“大それた四重奏”を構成する大切な要素である。彼らが「生で鳴らしてナンボ」と語る理由の一つはそういうところにあるのだろう。

 凛としたバンドサウンドに背を預け、川上は「Run Away」の最中に「聴こえてるぞー!」と叫ぶ。そして「ムーンソング」からの「月色ホライズン」。珍しくない選曲だが、この日ばかりは、離れていても同じ空の下に生きていることを象徴した2曲が並んでいるように感じる。「Dracula La」ではいつもならばシンガロングが起こるが、この日は代わりに場内の観客が腕を突き上げ、配信の観客が「おーおーおー」と書き込むのに応じるように、メンバーがイヤモニを外す。イヤモニは遮音性が高いため、観客の声をちゃんと聞きたいときは外した方がよいが、逆に言うと、観客が声を発せないこの状況で外す必要はないはず。それでも彼らがあえて外したのは、“心の声を聴かせてほしい”という意思を――あなたの声は実際ここまで届いているのだということを、行動で以って伝えるためだったのでは。

 重厚感あるサウンドがさらに燃える「Mosquito Bite」アウトロに、川上の「またあの日を取り返そうぜ!」が重なる。こうしてライブ本編は終了。アンコールでは、全てを包み込むように響いた「ワタリドリ」をはじめ、3曲を演奏。さらに、観客を入れようと決断するまでにたくさん悩んだこと、最終的な決め手になったのは「我々のファンなら大丈夫だろう」という信頼感だったことが明かされた。本日のゲストバンド、もとい、かつての自分たちに対して「あのバンド、これからいろいろある気がする。運がなさそうだから(笑)」と言っていた川上。アンコールでの「10年でいろいろなことがあったけど、我々は本当に、ファンの方には恵まれたと思っていて」という発言は、そこに対するひとつのアンサーか。ライブ中シンガロングを積極的に促すタイプのバンドだけに、“観客は声を出せない”という状況から受けるダメージは大きいと思っていたが、いち条件で揺らぐほど彼らはやわではなかった。ステージに立つからには揺らがないよう、ライブ実現に向けて協議・準備を重ねていたことも想像できる。

 庄村も交え、名残惜しそうにしばらく喋ってから終演。配信終了を知らせる画面のバックで流れているのは、『Bedroom Joule』CD版のみに収録される「真夜中 (Bedroom ver.)」で、つまりリリース前の曲だった。最後の最後に嬉しいサプライズを仕掛けてくるのもまたこのバンドらしい。デビュー10周年、結成から数えるとそれ以上の月日を生きてきたロックバンド、[Alexandros]。要素盛りだくさん、特別な内容のライブは、彼らが築いてきた歴史の賜物だった。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■セットリスト
[Alexandros] 10th ANNIVERSARY
『THIS SUMMER FESTIVAL 2020 -全員集合! 6年振りのディスフェスパーティー-』

01 For Freedom
02 Waitress, Waitress!
03 Starrrrrrr
04 Kids
05 Kill Me If You Can
06 city
07 Don't Fuck With Yoohei Kawakami 
08 Untitled
09 Adventure
10 Run Away
11 ムーンソング
12 月色ホライズン
13 Dracula La
14 Girl A
15 Mosquito Bite
En01 Thunder (Bedroom ver.)
En02 rooftop
En03 ワタリドリ

[Alexandros] オフィシャルサイト

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