マカロニえんぴつ「溶けない」、浪漫革命「あんなつぁ」、神サイ「泡沫花火」……気鋭バンドによる2020年夏を彩る楽曲

 Lucky Kilimanjaroは7月頭に2週連続でシングルをリリース。どの曲もこの季節にぴったりだが、特に7月1日リリースの「エモめの夏」はとりわけ心踊らせるナンバーだ。トロピカルなムードを帯びたシンセポップサウンドは自宅をもダンスフロアへと変えてしまう。“エモめ”というのがどんな感覚を示すのかは人それぞれだろうが、考え方次第で見える景色をガラリと変えることができるのが音楽のマジックだ、と高らかに歌ってくれるワードチョイスが冴え渡っていると思う。〈愛してんぜ この夏を!〉と、現状すらも抱きしめて鮮やかに昇華してくれるのだ。カップリングである涼やかな「新しい夏を駆けて」も含め、この夏をクールに乗りこなすにうってつけのシングルだ。

Lucky Kilimanjaro「エモめの夏」Official Music Video

 福岡発の4ピースバンド・神はサイコロを振らないは「泡沫花火」で7月17日にメジャーデビューを飾った。ピアノの音色と流麗なストリングス、泡のように舞うシンセのフレーズなど、バンドの枠にとらわれないサウンドスケープで夏夜の恋慕を劇的に描き出したバラードである。活動初期はテクニカルな演奏を持ち味としていたが、当時からその芯には柳田周作(Vo)の歌声があった。繊細かつ艶っぽいその声質は楽曲のメランコリーを的確に高める。女性視点で綴られた歌詞に完璧に憑依するその表現力には、思わず感服してしまう。これからさらに多くの人の耳に届いていくことだろう。野外フェスにおいて夜の時間帯にこの曲が鳴り響く日もそう遠くはないはずだ。

神はサイコロを振らない - 「泡沫花火」 【Official Lyric Video】

 季節を絡めた楽曲は、聴くだけでその気温や風景を想起させてくれる。フェスは少なく、自由な外出すらままならない2020年の夏においても、音楽はそこに夏の情緒を呼び起こしてくれる。異例づくめの夏だからこそ、音楽が導く想像力はより重要になってくるはず。ここで紹介した5曲もまた、新しい日常における最初の夏を彩った音楽として語られていくだろう。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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