CAPSULE、サブスク解禁を機に振り返る音楽性 オリエンタルから実験的なダンストラックまで予想を裏切る進化の変遷

 中田ヤスタカとこしじまとしこによるユニット、CAPSULEの過去作品が、7月10日よりストリーミング配信された。

CAPSULE『WAVE RUNNER』

 配信されたのは、CAPSULEのオリジナルアルバム、ベストアルバム全17作品に加え、中田ヤスタカと酒井景都とのユニット・COLTEMONIKHAのアルバム3作、さらに中田が音楽を担当した映画およびドラマシリーズ『LIAR GAME』のアルバム作品。中でもCAPSULEは、中田にとって「ライフワーク」ともいえるユニットであり、その作品を網羅できるようになったのは嬉しい限りだ。そこで今回は、CAPSULEのオリジナルアルバム15枚を紐解きながら、その音楽性について改めて検証していきたい。

 CAPSULEは1997年、音楽プロデューサーの中田ヤスタカと、ボーカルのこしじまとしこにより結成され、2001年にマキシシングル『さくら』でデビューを果たす。以来、全ての楽曲の作詞作曲、演奏、アレンジ、エンジニアリングを中田が手掛け、ジャケットデザインなどトータルプロデュースも行い、現在に至る(ただし、「恋をしました」や「まち惚け」など、初期の数曲はこしじまが作詞を担当)。以前のインタビューで中田は、「僕のやってることは読み切りマンガ家だと思ってもらったほうがいい」と語っていたように(参考:CAPSULE『WAVE RUNNER』インタビュー)、その音楽性はアルバムごとに変化し続けてきた。

CAPSULE「さくら」

 2001年11月21日、当時は小文字の「capsule」名義でリリースされた1st アルバム『ハイカラ・ガール』には、前述した先行曲「さくら」をはじめ、「花火」や「カクレンボ」など、部分的に「ヨナヌキ音階」などを導入したオリエンタルな楽曲が並んでいる。また、オーガニックな楽器を用いたバンドアンサンブルを基軸とするなど、近年のCAPSULEとはサウンド的にもかなり趣の異なる内容となっている。

CAPSULE「花火」
CAPSULE「カクレンボ」

 ただし、この頃のオリエンタル路線は例えばきゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」や、Perfumeの「575」「ナナナナナイロ」といった楽曲にも引き継がれており、他にもめまぐるしく転調するボサノバ風の「真夜中の電話」や、テクノアレンジのインスト曲「サムライロジック」など、今聴き直してみると、後の中田ヤスタカの作風の萌芽がこの頃から垣間見られて興味深いものがある。

きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」
Perfume「575」
Perfume「ナナナナナイロ」

 続く2ndアルバム『CUTIE CINEMA REPLAY』(2003年)では一転、ピチカート・ファイヴや初期コーネリアス、FPM(Fantastic Plastic Machine)辺りを彷彿とさせる、いわゆる「渋谷系」的なサウンドに。強烈にコンプレッションされたブレイクビーツの上で、VOXオルガンやアコーディオン、ヴィブラフォンといった楽器が軽やかに跳ね、その隙間をたゆたうように、キュートでハスキーなこしじまのウィスパーボイスがシンプルなメロディを歌っている。ゲストボーカルにCOPTER4016882などを迎えたこの路線は、同年リリースされた3rd アルバム『phony phonic』にも引き継がれることに。ちなみに、Perfumeと中田が出会ったのもこの頃で、それを機に「ぱふゅ~む」から「Perfume」名義にした彼女たちは、初の中田プロデュース作「スウィートドーナッツ」を同じく2003年にリリースした。

 2004年リリースの4枚目『S.F. sound furniture』は、前作、前々作のスタイルを継承しつつもエレクトロ色が強くなり、中田のルーツであるYMOのエッセンスと、60年代ソフトロック的なアレンジが組み合わさることによって「テクノポップ」的な展開をみせている。例えば、スタジオカジノ(スタジオジブリ内の第2レーベル)の劇場アニメ作品『ポータブル空港』の同名主題歌や、「Super Scooter Happy」といった楽曲は、後のPerfumeの原型ともいえるような作風である。

CAPSULE「ポータブル空港」
CAPSULE「Super Scooter Happy」

 こしじまとしこによる機内アナウンスで幕を開ける『NEXUS-2060』(2005年)は、「現代でいう“普通”のことを、2060年にやってみたらどうなるか?」という発想のもと、「未来の日常」を描いたコンセプチュアルなアルバム。この頃からこしじまのボーカルにはオートチューン加工が施されるようになり、楽器やフレーズの一つとしてアンサンブルの中に組み込まれていくようになる(実際、こしじま自身もこの頃のインタビューで「(自分は)歌い手っていう意識ではないかもしれない」と言及している(参考:エキサイト ミュージック)。ちなみに2005年は、T-ペインが『Rappa Ternt Sanga』の中でオートチューンを大々的に導入した年。カニエ・ウェストやリル・ウェインらがそれに続く形で「オートチューン再ブーム」が到来した。

 後にきゃりーぱみゅぱみゅがカバーした「do do pi do」を含む、通算6枚目『L.D.K. Lounge Designers Killer』(2005年)は、中田が自身の引越し体験に着想を経て制作されたアルバムである。翌年の『FRUITS CLiPPER』にもきゃりーがカヴァーした「jelly」が収録されているが、この頃のサウンドが中田のイメージを決定づけたといっていいだろう。つまり、Daft PunkやJustice辺りを彷彿とさせる、歪んだシンセによる強烈なリフと4つ打ちを中心としたリズム、それらとコントラストを為す浮遊感たっぷりの歌声&メロディの組み合わせである。

do do pi do
jelly (album-edit)

 当時、中田のプロデュースを受けたPerfumeの3人が、それまでの(SPEEDらに影響を受けた)歌い上げるような歌唱法を封じられ、「なるべく感情を抑えて」「話すように」歌うことを要求されて衝撃を受けた……というエピソードはあまりにも有名だが、そうすることで声の「質感」や「ニュアンス」はより豊かになり、ダンストラックの中にフレーズとして組み込まれても存在感を失うことなく、聴き手の心にもスッと入り込みやすいことを中田は知っていたのだ。実際CAPSULEにおいても、こしじまの歌声がどれだけ加工され、時に素材の一部のように扱われても、楽曲の中で強烈な存在感を放っている。

「僕がもしソロでアルバムを作ったなら全然違った内容になると思いますし。そもそも先に声を録ってますからね。最初に声ありきで周りの音を付けていってるので。(中略)CAPSULEに関しては彼女の声ありきですね」(参照:音楽ナタリー