イヤホンズが語る、5年の活動を表現した“音楽の進化論”「今の私たちの歌はこれです!」

イヤホンズが語る、“音楽の進化論”

 「進化論」だから、「進化」はしてないかもしれない(笑)

ーーその他の新曲についてもお話を聞いていきますね。「渇望のジレンマ」は、既存曲だと「予め失われた僕らのバラッド」などからの流れを感じさせるメタリックなサウンドで、血沸き肉躍るアニソンの系譜を感じさせる曲です。イヤホンズはこういったタイプの曲もわりと歌ってますよね。

高橋:たしかに。イヤホンズのこういう攻めた曲はサビの音が本当に高くて、キーがめちゃくちゃ高いんですよね。この曲、本当はもっと声に合わせやすいキーがあったはずなんですけど、プロデューサーが「もっと上げよう上げよう」って言ったそうで(笑)。

長久:めちゃくちゃ恨みがましいこと言ってる(笑)。

高橋:私はたぶん3人のなかで一番高い音が出ないの!(笑)。でも、サビの強い歌詞を噛み砕いて表現したり、楽曲に負けないように歌うためには、地声で出したい! っていう思いもありまして。そんななか、このサビを魂のおもむくまま歌うのは、なかなか大変でした……。

高野:苦労したんだね(笑)。

長久:私は個人的に、まりんかが歌う2サビの一番最初のパート、〈絶望に〉のところが、めっっっちゃ好きです!

高橋:たしかにここ、いいよね。

長久:めっちゃいいよね! 魂の底から〈絶望に〉って言ってる感じが伝わってきて、ものすごくソウルボイスだなと思って。

高野:え〜、ありがとう。この曲を作曲してくださった月蝕會議のエンドウ.さんがレコーディングに立ち会ってくださったんですけど、エンドウ.さんはOKと言ってくださっていたのに、私は「ここの〈絶望に〉は録り直したいです」と言って、何回か録ってもらったんです。

長久:そうだったんだ。

高野:それまでのサビのパートは3人で歌っているのに、ここのパートで突然私だけになっちゃうんですよ。それまで3人で歌っていた勢いとかかっこよさを、私の〈絶望に〉のせいで消したくないと思って、すごく不安で。なので何回も録り直させてもらったんです。この曲は「予め失われた僕らのバラッド」に続くような楽曲という意味合いでも、「予め〜」で得た「イヤホンズかっこいい!」というイメージとか熱量を消したくなくて。だから、この部分でまた「イヤホンズかっこいい!」と思ってもらえたらいいなあと思います。

ーー「わがままなアレゴリー」は2018年に発表した比較的最近の曲ですが、今回のアルバムでは「わがままなアレゴリー!!!」として新調されました。基本アカペラで構成されているので、今までの楽曲以上に、お三方の歌声の相性がダイレクトに伝わってくるものになったのかなと。

高野:うれしい! 私たちは以前からずっと、アカペラとクラップの曲がほしいと言っていたんですよ。でも「じゃあ誰が作るんだ?」とか「どうやって作るんだ?」というのはプロデューサーに任せるしかなかったので。そんななかで、やっとできたのがこの曲になります。

長久:主線の歌よりも、コーラスのほうが2〜3倍時間がかかりました(笑)。

高野:わかる! 何層も何層も重ねたもんね。

高橋:楽譜の量がすごいうえに、縦7行になっていて……。みんなで手分けして歌ったんですけど、それでも大変でした。

高野:コーラスが6線あるっていうことだもんね。

長久:逆にディレクターさんが「このパート、もう録ったっけ?」ってなって、その確認作業のほうが大変そうなぐらいでした(笑)。

高野:ただ、やった甲斐はあったと思うぐらい大好きな楽曲に仕上がりました。

ーーレコーディングの手順は? バラバラに録っていったんですか?

高野:これは誰が最初に録ったんだっけ?

長久:りえりーじゃない?

高野:あっ、そうだ、りえりーだ! たしかに私はりえりーの歌を聴きながら歌った。

長久:私は最後だったので、みんなが録り残したパートがないかを確認したうえで、残っていたパートは全部私が歌いました(笑)。

高橋:えー、ありがとう!

高野:これはイヤホンズの楽曲あるあるなんですけど、「別人になりきってコーラスを入れてください」っていうことがよくあるんです。りえりーはちょっと低めの男の人っぽいボイスが多くて、私はデスボイスみたいに歪んだ声のコーラスを入れることが多くて。がっきゅは?

長久:私は1オクターブ上とか、高い音で綺麗な音を出してください、って言われることが多い。

高野:だからこういうゴスペル風の曲とか、コーラスの声をたくさん重ねたいときは、それぞれが何人かを演じることが多くて。なのでこの曲はがっきゅがたくさんいると思います(笑)。ありがとう!

長久:でも、これがもし私じゃなくて別の誰かが最後に歌ったとしても、その子が帳尻を合わせるので。

高橋:いつも誰かが合わせてくれてる(笑)。

高野:支え合ってるんだよね。

ーー全員がその対応を出来るというのはすごいですよね。

長久:たしかに。でも私たちの中ではそれが普通になってましたね。

ーー「循環謳歌」も皆さんの歌声を何重にも重ね合わせた合唱曲のような作りになっていますが、この曲はアルバムの【初回限定 進化の過程盤】に収録される二つの新曲「忘却」と「再生」を合体させたものなんですよね?

高橋:はい。Aの楽譜とBの楽譜があって。

長久:しかも、普通ならAパートだったらAパートを何回か録って、その中から一番良いテイクをそれぞれ提出して、楽曲にまとめるんですけど、今回は3人が両方の楽曲をそれぞれ4パターンずつ歌っているので、全部で12人が歌っている感じになっています。なおかつ、あまりハマっていなかったテイクも、味ということでそのまま使っていて。最初はちょっと怖かったよね?

高橋:いや、がっきゅからその話を聞いたから、私は4線全部どこを取っても大丈夫なように集中しました(笑)。あと、よく聴いていただくとわかるかもしれないですけど、歌詞の小節ごとに、メインの声が微妙に変わるんですよね。合唱中にマイクを向けている相手が変わっていくような感じになっていて。なので「このパートが目立つ」という部分は、よりぐっと気合いを入れて歌ってみたりしました。

ーーしかも「忘却」と「再生」はメロディや歌詞の内容が対照的な作りになっていて。

高橋:しかも歌詞は真逆のことを言っている瞬間もあるんですよね。サビの〈いつまでも消えはしないから〉と〈また消えてく〉というところから重なっていく感じとか。

ーー「忘却」と「再生」を合わせた完成版の「循環謳歌」を聴いてみてどうでしたか?

高野:卒業式を思い出しました(笑)。学校でみんなで歌っている、別に音を外しててもいいし、自分の想いのままに歌うのだ! っていう気持ちというか。一人4線録ったので、その分の気持ちも重なってますし、音の厚みもあって、聴いている人が懐かしい気持ちになるような曲になったんじゃないかなと思います。

長久:この曲、ライブでやるときは(「忘却」パートと「再生」パートの)どっちを覚えるんだろう?

ーーこれ、3人だけでライブで再現できるんですか?

高野:そうなんですよね。

長久:だから、もうどっちかのパートはファンのみなさんに歌ってもらうしかないっていう(笑)。

高橋:みんなで歌いたいなあ、この曲。楽譜を配布して、学校とかで歌ってほしい。

高野:ねえ。合唱したい!

ーーさらに今作には、初期の楽曲「耳の中へ」「背中のWING」を、月蝕會議がリアレンジし、レコーディングし直した新バージョン「耳の中へ!!!」「背中のWING!!!」を収録。まさに「音楽の進化論」を体現した曲になりましたが、レコーディングの際には5年前の自分たちの歌を意識したりしましたか?

高野:以前に録った「耳の中へ」は完全に(『それが声優!』の)キャラクターとして歌った曲だったので、それを意識して比較するというよりかは、今の私たちが歌う「耳の中へ」ということを意識しながら、フラットな気持ちで歌わせてもらいました。バックの音のアレンジが大きく変わったので、そこでより「大人のポップとは?」という部分を意識して歌わせていただいて。

高橋:私も完全に100%、今の自分として歌いましたね。『それが声優!』のときは自分自身をミックスすることは一切なく、本編で曲が流れるシーンというのを意識して歌っていて。それと違って今回は自分として歌ってみたというのもあるから、「5年間の成長を残そう!」という気持ちを作らずともこうなったという感覚が強くて。その変化は、5年という年数がそうさせたんだと思います。

長久:「耳の中へ」と「背中のWING」を歌った当時の私たちは、まだピヨピヨの新人声優だったので、キャラクターソングとして必死に歌っていて。当時の曲を改めて聴き直すと、〈耳の中へ 会いに行きます〉という歌詞のところも「会いに行かせてくださいっ!」っていうイメージで歌っていたのかなと思うんですけど、今回の「耳の中へ!!!」は「会いに行かせていただきますね」っていう、慈愛に満ちたというか、余裕のある感じに自然となっていて。それを聴いたときに「もしかして、これが進化論?」って思いました(笑)。私は今回のアルバムだと「耳の中へ!!!」「背中のWING!!!」が一番進化論を感じたかもしれない。

高野:私たち的にも「背中のWING!!!」はエモかったよね。ここで歌い直させてもらえるんだっていう。

高橋:エモ〜い!

高野:今までライブで歌わせてもらう機会はあまりなかったんですけど、このアルバムを経て、もっと歌っていきたいなあと思う曲になりました。

ーーまさに5年の成長を刻んだ作品になりましたが、ご自身としては今回のアルバムを通して、どんな進化を見せることができたと感じますか?

高橋:「進化論」だから、「進化」はしてないかもしれない(笑)。このアルバムを受け取った方に、「ここが変わったね」とか「こう聴こえたよ」と思ってもらうことで、それが「進化」だったということに、数年経ってから思えるのかなっていう。なので「ここが進化したので聴いてください!」っていうのはまだ早いのかな。

長久:私たちからすると、「とりあえず今の私たちの歌はこれです!」っていうものをお見せして、その変化とか進化をファンの方に委ねる、っていう感じですね。自分たちの中に、進化したという実感はあまりないので……。

高橋:そうそう、実感がない。

高野:でも、この5年で曲の種類やジャンルが増えて、それこそラップを含めたような楽曲も、これまでのことがなかったら出来なかったと思うので、今回のアルバムは集大成みたいなイメージはあって。私たちがこの5年のうちに積んできた経験を詰め込んでいるので、皆さんが聴いて「進化論」と納得してもらえるようなものになっていたらと思います。

■リリース情報
『Theory of evolution』
発売:2020年7月22日(水)
【初回限定 進化の過程盤(CD+CD)】
価格:¥4,000(税抜)

【通常盤(CD)】
価格;¥2,500(税抜)

オフィシャルサイト

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