ukka、初リリース作『恋、いちばんめ』でさらなる高みへの幕開け ポピュラリティ持つバラエティ豊かな収録曲の数々
「桜エビ〜ず」から「ukka」へ改名して、満を持してリリースされたキラーチューンが「恋、いちばんめ」だ。ukkaとしては初のリリース作品である。
「恋、いちばんめ」は、これまでになくブラックミュージック色が濃く、1970年代のソウルミュージックを彷彿とさせる楽曲だ。これまで「まわるまわるまわる」「帰れない!」「さいしょのさいしょ」の作詞を手がけてきたヤマモトショウが、今回は作曲も担当。さらに編曲を宮野弦士を担当し、フィロソフィーのダンスのかつての作家陣が顔を揃えている。
イントロのエレピから、最後のコードまでが洒落ている。ストリングスやブラスセクションの音色が華やかに響く一方、背後で鳴っているエレキギターのフレーズも心憎い。また、〈恋してることに気づいた〉という歌詞の部分でのハモりの鮮やかさも含めて、ukkaによるコーラスワークも美しい。
作詞は、SHE IS SUMMERとして活動するMICOとヤマモトショウによるもの。かつて「ふぇのたす」として活動をともにしていたふたりの共作だ。これはヤマモトショウがMICOに声をかけて実現したものだそうで、MICOが他のアーティストに歌詞を提供するのは初めてのことだという。MICOは「恋、いちばんめ」について、こんなコメントを寄せている。
「共作することで、ショウさんの描く、太陽のように天真爛漫でかわいらしい乙女心に、女の子が隠し持っている、ゾッとする月のような、翳りみたいなものをほんの少しだけ落とせたんじゃないかなと思っています」
ukkaには、1999年生まれの水春から、2006年生まれの芹澤もあまで、年齢の幅がある。学校を舞台にした楽曲だけでは、すくいきれない部分があるのだ。この年齢差を、歌詞のニュアンスの深さで吸収することに成功しているのは、MICOの言葉の力によるものだろう。
MVの監督は森岡千織。サングラスをメンバーにかけさせて、意図的に大味なディスコ感を出しているのもユーモラスだ。
2018年からスタートした12カ月連続配信リリースのなかでは、Have a Nice Day!の浅見北斗が作詞作曲した「リンドバーグ」、sasakure.UKが作詞作曲編曲した「214」など、驚くほどの高確率で傑作を発表してきた。そうした楽曲群において、メンバーの表情を鮮やかに記録した映像を制作してきたのが森岡千織だ。桜エビ〜ずとHave a Nice Day!によるライブの熱狂を記録した「リンドバーグ」、台湾を訪れたメンバーの姿を切り取った「214」と同様に、「恋、いちばんめ」のMVでもまたukkaに名を変えた6人の「今」を映像に収めている。
シングル『恋、いちばんめ』には、「ver.A」と「ver.B」の2形態が存在し、カップリング曲が異なる。「ver.A」の「ウノ-ウノ」は、竹内サティフォ作詞、ONIGAWARA作編曲で、名作シティポップ「それは月曜日の9時のように」と同じONIGAWARA制作による楽曲だ。冒頭のシャウトのサンプリングはジェームス・ブラウンを連想させ、リズムもファンクをベースにしているものの、軽やかなポップスとしても成立させているのは匠の技の領域だ。
「ver.A」のもう1曲、「Poppin'love!!!」は、2人組トラックメイカーのCLARABELLが作詞作曲編曲。フューチャーハウス的なサウンドにして、サビではトラップが鳴るという、近年のトレンドを取り入れたポップスだ。
「ver.B」の「時間。光り輝く螺旋の球。」は、「Magik Melody」などを提供してきた杉浦英治が作詞と編曲を担当し、「まわるまわるまわる」も手がけた藤田卓也が作曲。ハウス/テクノにアプローチしたサウンドにして、今回の『恋、いちばんめ』収録曲の中では、もっとも翳りのある作品となっている。