SUPER BEAVERの配信ライブはなぜ“ドキュメンタリー”だったのか バンドの生き様描かれたストーリー性を読む
メンバーそれぞれに専用カメラが付き、普段のライブではあり得ない近さとアングルで、表情はもちろん弦を弾く手元や足元のエフェクターまでをつぶさに映し出していく。メンバーどうし向かい合いながら奏でられる音は、ステージから客席に向かって放たれるのとは違う、濃密な空気を帯びているように感じる。カメラに向かって手拍子を求めるシーンもあった「青い春」を終え、渋谷は「ライブはやっぱり目の前にあなたがいて成り立つもんだと思う」と正直な気持ちを口にする。そう、これは「いつもの」ライブの再現ではない。でも、というよりだからこそ、ここからライブの熱量はどんどん増していく。美しいライティングのなか藤原”32才”広明(Dr/Cho)の叩き出すタイトなビートと柳沢の転げ回るようなギターリフがスリリングに展開する「正攻法」、そしてそのままのテンションで「予感」へ。コール&レスポンスが起きるパートでは渋谷が「あなたの番です!」とカメラに向けてマイクを向ける。いつもならここで会場中から声が上がるのだが、当然今日は聞こえてこない。それでも「あなた」とこのライブを作ってるんだ、と態度で示す彼の姿に感動する。
「自分たちが音楽をやっている姿勢が、プラスの活力にだけなればいい。まっすぐな意味での『頑張れよ』だと思ってくれたら嬉しいです。俺たちの『頑張れよ』は、あなたが頑張っているのを知った上でも言いたい『頑張れよ』なので。すべてがあなたを前に転がすための原動力になりますように」
おそらく、カメラ越しに何を語ればいいのか、渋谷自身も迷っていたのだろう。丁寧に言葉を選びながら、最大限誠実で正直であれるメッセージを、彼はそう言葉にした。その言葉を受けて披露された「ひとりで生きていたならば」は〈原動力はずっとひとりで生きていないこと〉というパンチラインが、まるでバンドとファンの心情を代弁するように聞こえてくる。音源とは違う、4人の音だけで鳴らされた新曲。力強く硬派な、まるでSUPER BEAVERそのもののような曲だなと思う。そして一瞬の静寂を挟み、「嬉しい涙」へ。疾走するエイトビートが光のように差し込んでくる――。
最後のMCで、客席からの歓声や歌声がないことに違和感がある、と渋谷は正直に話していた。それは当然だろう。だが、その違和感すらも、SUPER BEAVERは楽曲のパワーと自身の覚悟によって乗り越えていたと思う。それは「音楽の力は距離を越える」みたいなロマンティックなことでは1ミリもなくて、そのときの状況に対して、自分たちの態度をしっかりと定めて、その上でやれることを全力でやるという愚直さこそが唯一の正解であり、それをやり続けるのがロックバンドという生き様だということだ。15年の歩みを振り返るMCを経て、最後に演奏された「ハイライト」。人生のハイライトを作り続けていくんだと歌う、SUPER BEAVERの基本姿勢を改めて形にしたようなこの曲の頼もしさが一層輝かしく感じられたのは、この配信自体がその証明だったからだろう。
渋谷による藤原広明イジりや、ライブ前後の口上、食らいつくように歯を食いしばってドラムに向かう藤原の表情、笑顔を見せながらもカメラに向かって煽り倒す上杉研太のエモーション、そして相変わらず全身全霊を曲に捧げるような柳沢のプレイ。すべてこれまで何度も観てきたビーバーだった。ただ、ここには「あなた」がいないという一点において、これは決定的に「いつもの」ビーバーではなかった。しかし彼らは、ドキュメントとしてこの配信を構成し、ライブのセットリストはもちろん、楽器の配置や照明やカメラの位置までをも考え抜いて、「それでも届けるんだ」という意志を表現した。ブレない芯があるからこそ、彼らはこの「表現」にたどり着けたのだ。
終演後、柳沢は「自分たちが思った『正解』はひとつできたんじゃないのかな」と胸を張った。「『頑張っている』上での『頑張れ』」。渋谷が言った言葉が脳裏に蘇る。その主語はもちろん「あなた」だが、同時にSUPER BEAVER自身のことでもある。「想像もしえなかった日々の真ん中でバンドマンに何ができる?」――渋谷はライブの冒頭で自分たちにそう問いかけた。この『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~LIVE document』はその問いにバンドの生き様を刻みつける渾身の作品として完璧に答えていた。
■リリース情報
『ハイライト / ひとりで生きていたならば』
発売中
【初回生産限定盤(2CD)】
¥1,900(税込)
【通常盤(CD)】
¥1,300(税込)
SUPER BEAVER結成15周年記念特設サイト『SUPER BEAVER 15th ANNIVERSARY SPECIAL SITE』
■ライブ情報
SUPER BEAVER 15th Anniversary 第2弾ツアー
「続・都会のラクダ TOUR 2020 ~ ラクダの前進、イッポーニーホー ~」
9月5日(土)【香川県】高松festhalle OPEN 17:00 / START 18:00
9月6日(日)【香川県】高松festhalle OPEN 17:00 / START 18:00
9月10日(木)【福岡県】Zepp Fukuoka OPEN 18:00 / START 19:00
9月11日(金)【福岡県】Zepp Fukuoka OPEN 18:00 / START 19:00
9月18日(金)【新潟県】新潟LOTS OPEN 18:00 / START 19:00
9月19日(土)【新潟県】新潟LOTS OPEN 17:00 / START 18:00
9月26日(土)【広島県】BLUE LIVE広島 OPEN 17:00 / START 18:00
9月27日(日)【広島県】BLUE LIVE広島 OPEN 17:00 / START 18:00
10月10日(土)【宮城県】仙台ゼビオアリーナ OPEN 17:00 / START 18:00
10月11日(日)【宮城県】仙台ゼビオアリーナ OPEN 16:00 / START 17:00
11月2日(月)【大阪府】大阪城ホール OPEN 18:00 / START 19:00
12月6日(日)【愛知県】名古屋ガイシホール OPEN 17:30 / START 18:30
12月8日(火)【神奈川県】横浜アリーナ OPEN 18:00 / START 19:00
12月9日(水)【神奈川県】横浜アリーナ OPEN 18:00 / START 19:00