『MAN WITH A "BEST" MISSION』インタビュー

MAN WITH A MISSIONはなぜモンスターバンドに成り得たのか Jean-Ken Johnnyに聞く、10年の葛藤と不変の信念

海外プロデューサーハ「システマチックデ、理論的デ数学的」

ーーこのビジュアルで得をしている部分もあるとおっしゃいましたが、それは海外でのライブでも同様でしょうか?

Jean-Ken:だと思います。ただ、今は世界中ある程度インフラが整っているので、我々の存在を知っていらっしゃる方も大勢いらっしゃる。なので、最初からこれを期待して観に来る方も少なくないのかなと。我々は「音楽は国境を越えるもの」だと信じているし、そこには国も人種も宗教も関係ないと思いますけど、いかんせん人間という生きものはなかなか複雑だから「どこの国から誰がやって来た」ということに敏感だったりもするんですよね。それは残念なことですし、絶対にあってはならないことだと自分も信じていますけども、そういった中でこのビジュアルだと実はそのバイアスがなくなる。ということは日本と同じで、逆に音楽にフォーカスされるようになるんです。

ーーとなると、より音楽がシビアに評価されることになりますよね。特に海外はその傾向が強いですし、フェスのような現場だと気に入らなければすぐにその場を離れてしまう。にも関わらず、MWAMは2018年には『Download Festival』や『Reading and Leeds Festival』といったイギリスの大型野外フェスへの出演を果たした。それって音楽を評価されての抜擢だと思うんです。ここまでの海外での評価を、今どのように受け止めていますか?

Jean-Ken:純粋に数が増えているのもうれしいことですが、入口はこの見た目で「なんだなんだ?」というフックが確実にあると思います。そこで先ほど言ったように、より音楽にフォーカスしやすくなっているというのも功を奏して、徐々にですけど海外のコミュニティが出来上がっている。もともと僕自身、日本で洋楽と言われているバンドに憧れていたので、「世界中で当たり前のように鳴っている音楽を作っていきたい」と思っている身としては幸せですよね。

 とはいえ、ものすごく真面目なことを言うと、それこそ『Download Festival』は……今はちょっと変わりましたけど、もともとはメタルフェス。我々は決してメタルではないので(笑)、観客全員が全員このバンドを観て音楽的に気に入っているというわけではなかったです。ただ、そんな状況でもすごい数のお客さんが反応してくれたので、そこでの収穫はすごく大きかったですしありがたかったです。

ーーでは、この10年の海外経験を通して、現地の音楽シーンやオーディエンスの変化を感じることは?

Jean-Ken:海外ではロックバンドというものが少しだけ元気がなくなっているという現状において、海外でライブに来てくれる人はもともとロックファンが多かったりするんですけど、いわゆるロックが好きでもないようなオーディエンスの中に放り込まれると、そのジャンル感が及ぼす影響をものすごく感じますね。そこが日本と圧倒的に違うんです。日本の音楽業界は世界で見るとかなり稀有で変わっていて、よく「日本は海外と全然違う、ガラパゴス的だ」と言われますけど、ロックを含めいろんなジャンルがまだ元気があって、ある意味すごく健康的じゃないかな。海外に行くたびに、それはより強く感じますね。

MAN WITH A MISSION - Dead End in Tokyo

ーーそういった海外でのツアーを通じて、海外アーティストとの交流も増えているかと思います。今回のベストアルバムにもFall Out Boyのパトリック・スタンプがプロデュースを手掛けた「Dead End in Tokyo」が収録されています。海外のアーティストやプロデューサーとの作業は、国内アーティストとコラボするときと何か違いはありましたか?

Jean-Ken:いや、大きな違いはないですね。やっぱり音楽に携わっている方は日本にいようと海外にいようと、ものすごくアンテナを張ってらっしゃる方々ばかりなので、そういう意味では皆さん一緒でした。ただ、海外の方たちのほうが「対世界」というものに対する純度とノウハウは濃かったですね。しかも非常にシステマチックで、理論的で数学的なんです。人間って感覚でやることと理論でやることって相反すると勝手に思い込んでいますけど、その感覚すらも「こういう感情ってこういう音だから」と理論で説明する。とはいえ、最終的には感覚が勝つこともあるのでどちらも大事ではあるんですけど、とにかくその純度がすごく高いなと思いました。

期セズシテコノ状況トリンクシタ「Change the World」

MAN WITH A MISSION「Change the World」

ーー改めてベストアルバムについて。10年間さまざまな楽曲を作ってきましたが、厳選した楽曲を1枚にまとめることは相当大変な作業だったんじゃないかと思います。

Jean-Ken:自分で出しておいてなんですけど、ベストアルバムってちょっとつらいなと思うときがあります(笑)。だって、自分たちで作ったものはすべて「ベスト」な作品なわけですから。

ーーそんなベストな楽曲群から、今回選ぶときの基準は?

Jean-Ken:基本軸として、皆さんがよく耳にしているであろう楽曲ですね。「なぜあの曲が選ばれてないんだ?」と思う人もいるでしょうけど、ベストというのは単なる名称で、時系列順に選んで集めただけです。もし皆様がそれで満足していただけなければ、ぜひ過去のアルバムを買ってください(笑)。

ーーこのアルバムを起点に、どんどん過去にさかのぼっていくのもいいですし。

Jean-Ken:僕はそれが一番、能動的な音楽の聴き方だと思うんです。音楽の楽しみ方って受動的ではダメだと思うので、自分から取りに行くほうが、下手なミリオンヒットよりも大切な1曲を見つけられるんじゃないかな。

ーー先ほどの話じゃないですが、今のサブスク文化は過去を掘りやすくしていて、ある意味利点ではありますよね。

Jean-Ken:そうですね、検索しやすいという点では掘りやすくなりましたし。やっぱり、使う側がどういう感覚で使っていくかが一番大切ですね。

ーー今回のアルバムには最新シングル「Change the World」も含まれています。制作自体はコロナ前に行われたものですが、このタイミングに聴くと未曾有の事態で世界がどんどん変わっていくことにもリンクしますよね。

Jean-Ken:この事態を想定して書いたものではないですけど……今は我々含め「変えたくない」だとか「変わらなくちゃいけない」だとか、そこの天秤で揺れ動いているタイミングかと思うんですけど、その変えていく力によく「神頼み」だとか「神様の力を借りて」だとか「悪魔に魂を売って」だとか使うことがありますが、結局行動するのは人間であって。その人の意思ですべてが決まるという、そんな思いを込めて作った楽曲なんです。なので、期せずしてこの状況とリンクしたんですよね。

世界ヤ時代ガドレダケ変ワッテモ、音楽ハズットソコニアル

ーーこの10年を振り返ったときに興味深いのが、MWAMが始動した翌年に東日本大震災があり、10周年を迎えたこのタイミングに新型コロナウイルスが流行するという、世の中が変化せざるを得ない時期を節目に迎えていることなんです。そういう出来事がバンドに与える影響は少なくないと思いますが、特に今回のコロナの場合はどう受け止めましたか?

Jean-Ken:自分自身は音楽を聴く身としても届ける側としても、普通にそれを楽しめるというのは平和な日常にいたんだなということに改めて気づかされて。実際こういうことが起こってしまったときに「世界の一部として何ができるのか?」と、ものすごく悩まされた時期でもありました。ただ、ひとつだけはっきりしたのは、結果的にこういう世の中になっても耐えられるだけのアイデアや準備というのを、我々は考えていかないといけないんだなと。それってコロナに限らず、未来永劫変わらないと思うんですよ。何かが起きたときに自分たちがどう違う一手を打てるか、それによって「何にでも耐えられるんだ、僕らは生きていけるんだ」と示す姿勢が一番大事なんだなと痛感させられました。

 実際問題、我々はライブができなくなるなど痛いぐらい食らっています。もちろんライブハウスの方々が一番苦労していると思いますし、人数を集めて場所を提供するという生業である以上、今は悔しいと思いますけど、ただその伝統を守りつつも、配信などを通して新たに何かできないかと模索する心の余裕と気持ちの持ちようは、絶対に必要だなと痛感させられましたね。それは疫病だけの話じゃなくて、平和な世の中であっても一緒。海外にいるのにライブが観られないという人に向けて配信ライブをしたときに、100人のライブハウスなのに1万人視聴できるシステムを作ったら、そんなすごいことはないじゃないですか。技術とインフラばかりが先に進んじゃって、人のマインドだけが成長しないというのはおかしい話ですものね。

ーー不要不急と言われる中で、特に音楽は槍玉に挙げられることが多かったですが、だからこそ個人個人にとって何が大切かを考えた時期でもありましたし、音楽の重要さを再確認した人も少なくなかったと思います。

Jean-Ken:スティーヴン・キングが言ってましたよね、「こういうものが必要ないと言っている奴らは、自粛期間中に映画も観ず、本も読まずに過ごしてみなよ」って(笑)。本当におっしゃるとおりで、全部効率化して無駄なものを省くって、なんとも味気ないもので、生きものとして勿体ない気がする。その中で音楽というカルチャーはものすごく必要なものだと私自身思いますし、だからこそ守っていきたい、守らなければいけない場所でもあるんです。

ーーそれを10周年という節目に考えることになり、ここから先の活動に変化や進化が促されることになる気がします。MWAMとしては、この先何を示していくべきなのか、何を残していきたいと考えていますか?

Jean-Ken:先ほど言っていたシステムや仕組み、脆弱な部分を取っ払うアイデアというのは、バンドとしてだけではなく、どちらかというとひとつの生きものとしてやっていくべきだなと考えていることでもあるので……音楽としてやっていくことは、僕は変わらないと思います。一度たりとも変わったことはないですしね。世界や時代がどれだけ素知らぬ顔で変わっていったとしても、音楽はずっとそこにある。僕が知っている感覚の中では、「永遠」という言葉に一番近いかもしれませんね。

 とはいえ、いきなりジャズやボサノバをやっているかもしれませんが(笑)。でも、そのへんは大した差ではないんですよ。それはあくまで側(がわ)なので。「ジャンルが変わった」だとか「歌い方が変わった」だとか、結局そういう変化は単なる側であって、自分自身の心が震えるものを人に届けているだけなので、その本質は未来永劫変わらないと思います。

ーーでは、歌詞やメッセージに関してはいかがですか?

Jean-Ken:変わっていくのかもしれないけど、自分自身で分析すると意外と変わりようがないのかなと思います。それはなぜかというと、今回のベストアルバムを聴いたときに、自分が一番強く打ち出しているメッセージって結局、音楽であったり友人であったり何かしらに受けた影響に対する憧憬や「こうあってほしい」という思いだったりするので、変わりようがないんですよ。なぜなら、思い出だから。「その瞬間の感動というのは、ものすごく美しいものなんだよ」ということを、この10年間たくさん歌ってきたし、そのテーマって変わりようがない普遍なものですからね。

『MAN WITH A "BEST" MISSION (Deluxe Edition)』

■配信情報
デジタル限定アルバム
『MAN WITH A "BEST" MISSION (Deluxe Edition)』
7月15日(水)配信リリース
01. Change the World(2020 NHKサッカーテーマ曲)
02. Rock Kigdom feat. 布袋寅泰
03. Remember Me
04. Raise your flag
05. Take Me Under
06. Memories
07. Get Off of My Way
08. higher
09. FLY AGAIN 2019
10. Dive
11. Emotions
12. Hey Now
13. database feat.TAKUMA(10-FEET)
14. Dead End in Tokyo
15. Take What U Want
16. Seven Deadly Sins
17. My Hero
18. Dark Crow *デジタル限定収録
19. Find You *デジタル限定収録
20. Out of Control *デジタル限定収録

■番組情報
【MAN WITH A MISSIO10周年特別番組(無料配信)】
配信日時:2020年7月15日(水)21:00配信予定
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■リリース情報
『MAN WITH A "BEST" MISSION』
2020年7月15日(水)発売
【初回生産限定盤】(特典DVD付):3,429円(+税)
【通常盤】(CDのみ):2,929円(+税)

<CD> (初回生産限定盤・通常盤共通)
01. Change the World(2020 NHKサッカーテーマ曲)
02. Rock Kingdom feat. 布袋寅泰
03. Remember Me
04. Raise your flag
05. Take Me Under
06. Memories
07. Get Off of My Way
08. higher
09. FLY AGAIN 2019
10. Dive
11. Emotions
12. Hey Now
13. database feat.TAKUMA(10-FEET)
14. Dead End in Tokyo
15. Take What U Want
16. Seven Deadly Sins
17. My Hero

<DVD>(初回生産限定盤のみ)
Chasing the Horizon World Tour 2018/2019 ~JAPAN Extra Shows~
2019.05.22 @ 横浜アリーナ

01. Take Me Under
02. database
03. Dog Days
04. DON’T LOSE YOURSELF
05. Left Alive
06. Remember Me
07. FLY AGAIN 2019

TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く)
オリジナルdポイントカード+オリジナルA5サイズノート
初回生産限定盤
通常盤

HMV全店(HMV&BOOKS online含む/一部店舗除く)、全国のローソン・ミニストップ店頭Loppi端末
オリジナルマルチクリアポーチ
初回生産限定盤
通常盤

TSUTAYA RECORDS(一部店舗除く)/TSUTAYAオンラインショッピング(予約のみ)
オリジナルカレンダー入りB3ポスター
初回生産限定盤
通常盤

楽天ブックス
オリジナルアクリルキーホルダー
購入はこちら

▼楽天ブックス(ファミリーマート受け取り限定)
オリジナルレコード型コースター ※楽天ブックス特典のオリジナルアクリルキーホルダーは対象外となります
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オリジナルクリアファイル
初回生産限定盤
通常盤

Amazon
初回生産限定盤(特典なし)
通常盤(特典なし)

応援店特典
オリジナルステッカー
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映画『MAN WITH A MISSION THE MOVIE -TRACE the HISTORY-』
2020年8月19日(水)発売
【Blu-ray】¥5,556(+税)
【DVD】¥5,093(+税)

<収録内容>Blu-ray/DVD共通
本編78分+特典10分
■本編
■特報、予告編
■映画『MAN WITH A MISSION THE MOVIE -TRACE the HISTORY-』公開記念ナビ
狼たちの10年の軌跡に迫る見どころ徹底ガイド

<先着予約購入特典>
チケットホルダー
※特典は無くなり次第終了となりますので、お早めにお求めください。

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