緑黄色社会、信頼重ねた4人の新たな王道宣言 『CDTVライブ!ライブ!』披露「Mela!」が示した“大切な居場所”

 2018年の1stアルバム『緑黄色社会』の頃から、このバンドの楽曲には一貫して強い意志が漲っていた。ポップスの王道を突き進み、その真っ直ぐな歌を一人でも多くの人に届けたい、お茶の間まで届けたいという実直な想いだ。当時から「国民的バンドになりたい」ということを衒(てら)いなく話していたし、緑黄色社会が書く楽曲にはそこへ向かって突き進む普遍性がしっかり宿っていた。今、そんなバンドの歩みはますます目を見張るものになってきている。

 重要な転機だったのは「想い人」「sabotage」「Shout Baby」といった2019年の夏から今年にかけてリリースされたシングル曲たちで、それぞれ、映画『初恋ロスタイム』主題歌、ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)主題歌、アニメ『僕のヒーローアカデミア』第4期文化祭編エンディングテーマに起用された楽曲。インディーズ時代から歌とメロディを主軸に、“楽曲を通して伝え切る”ことに邁進してきたからこそ、タイアップ曲でも“らしさ”を失うことなく、むしろJ-POPフィールドでしっかり戦っていける頼もしいスケールアップを果たすことができた。今年4月に配信リリースされた最新アルバム『SINGALONG』は、バンドの加速度やエネルギー、今だからこそ為せる音楽的挑戦などが詰まった充実の作品となり、iTunes総合ランキングなど多くの配信チャートで1位を獲得。同じく4月にはYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に出演して「sabotage」「Shout Baby」を披露し、特に後者は7月14日時点で430万回以上再生されて大きな話題になっている。さらに6月には生配信ライブ『Billboard JAPAN |TikTok Special Live Streaming #MusicCrossAid』にも出演して、アルバムから5曲を披露したのも記憶に新しい。

緑黄色社会 - sabotage / THE FIRST TAKE
緑黄色社会 - Shout Baby / THE FIRST TAKE

 そんな緑黄色社会最大の魅力は、この4人にしか醸し出せない絶妙なバランス感覚だと思っている。もちろん性格の相性も含めてなのだが、楽曲を通してそれぞれの音楽的な個性がしっかり聴こえてくるのが面白い。aiko、いきものがかり、大塚愛などのJ-POPに影響を受けた長屋晴子(Vo/Gt)、BUMP OF CHICKENに憧れてギターを手に取ったという小林壱誓(Gt/Cho)、繊細なピアノを奏でクラシックの素養を持つpeppe(Key/Cho)、海外のロックなど幅広い音楽を好み、ライブではパワフルな演奏を聴かせる穴見真吾(Ba/Cho)。2012年に愛知県で結成された緑黄色社会は、もともと決まったジャンルを演奏することを目的としていなかったため、メンバーのルーツもバラバラだ。だが、そんな4人全員がソングライティングできることがバンドの大きな強みになっていて、異なるルーツを反映させた豊かな楽曲群は『SINGALONG』でも存分に味わうことができる。フロントに立つ長屋の手がける楽曲が数としては多いが、「inori」のようにギタリストの枠に収まらない楽曲を書く小林、「スカーレット」などロマンティックで物語性のある楽曲を綴る穴見、「あのころ見た光」をはじめフレーズのアイディアが多彩なpeppeと、4人の個性一つ一つが緑黄色社会の音楽に不可欠なピースとなっているのだ。

 さらに長屋晴子の歌については、改めて触れておきたい。透明感がありながらもパワフルで、繊細でありながらも芯は太い。低音から高音まで清々しく突き抜ける長屋のボーカルは、文句なしに「上手い!」とガッツポーズしたくなるし、緑黄色社会の推進力そのものと言っていいだろう。ソングラインティングもアレンジも、すべては長屋の歌をどう輝かせるかということに直結している。

 と同時に、それは4人の関係性そのものを象徴しているように思える。小林、穴見、peppeが歌をバックアップし、その想いを背中で感じながら長屋はいつも全力で歌う。『幸せ -EP-』(2019年)をリリースした際のインタビュー(参照:『MUSICA』2019年6月号)で「3人の魅力を出そうとして自分の魅力がなくなってる気がする」と悩みを話してくれたり、年末に行われたワンマンライブ『リョクシャ化計画2019』で思わず想いが溢れ、涙を浮かべながらメンバーへの感謝を述べたこともあった長屋。彼女がフロントに立ってバンドの想いを背負いながら歌うからこそ、全力の歌の中に葛藤や感傷が滲み出ることがあり、単に力強いだけではない儚さや繊細さも醸し出しているのではなかろうか。それも4人にしか奏でられない信頼関係の証なのだと、筆者はいつも感じている。“緑黄色社会”という居場所があるからこそ歌える歌があり、聴き手とそれを共有することでドラマティックな音楽が生まれていくのだ。

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