Newspeak、新曲「Another Clone」は今の世界に対する表現と問いかけ? 合わせて聴きたいプレイリストも公開
昨年11月に1stフルアルバム『No Manʼs Empire』をリリースし、それを携えて行われた全国11カ所でのライブも成功させるなど、着実にファンベースを拡大し続けている4人組ロックバンド、Newspeakによるニューシングル「Another Clone」が7月10日より配信リリースされる。
本作は、6月12日に発表された配信シングル「Pyramid Shakes」の続編にあたるもの。新型コロナウイルスの拡大により、以前のようにライブを行うことが難しくなった彼らは4カ月連続でシングルをリリースすることを発表。アートワークからリリックビデオまで、全てのシングルを統一した世界観で制作するという。4曲全てがリリースされたときには、コンセプチュアルな EP『Complexity & Simplicity of Humanity (and Thatʼs Okay)』として完成する予定だ。
前作「Pyramid Shakes」は、強力なシンコペーションを伴ったベースがバンドアンサンブルをグイグイと引っ張りながら、ダンサブルなグルーヴを形成していく楽曲である。そのリズム上で軽やかなエレキギターが空間をファンキーに刻み、官能的なRei(Vo/Key)のボーカルがソウルフルなメロディを歌い上げるというものだった。また、後半に向かって煌びやかなシンセがレイヤーされていく様は、Spandau BalletやDuran Duranら80年代にUKを席巻したムーブメント“ニューロマンティック”や、そのルーツであるRoxy Musicやデヴィッド・ボウイらの影響をも感じさせた。
続く本作「Another Clone」は、「Pyramid Shakes」の華やかだがどこか退廃的なムードから一転。アンビエントなシンセサウンドに導かれ、エッジの効いたギターリフが宙を切り裂きながら、インダストリアルなリズムと共に進んでいくミクスチャーロックである。バックビートの効いたAメロから、伸びやかなファルセットボイスと共に一気に解放されるサビや、一旦ブレイクしてから不協和音スレスレのギターフレーズと共に徐々に盛り上がっていく展開メロ、不穏な雰囲気を漂わせるエンディングのクロマティックアプローチなど、たった3分足らずの尺の中に様々な要素が詰め込まれている。ここまでパンキッシュな楽曲は、これまでのNewspeakのレパートリーにはなかったもので、おそらくRancidをルーツに持つYohey(Ba)や、Blink-182、The Offspring、New Found Gloryなどを聴いて育ったというSteven(Dr)の持ち味が色濃く反映されたのだろう。
歌詞を見ると、歌い出しのラインが〈Desires in my bones/Bad habits and sleep(骨に染み付いた欲望/どうしようもない睡眠と習慣)〉とあり、さらに〈I wanna get out/Out of my/Out of my/Out of my head or blow my brain into particles(頭の中から抜け出したい/さもなきゃ脳みそを吹き飛ばしてくれ)〉と続くなど、コロナで自宅待機を余儀なくされている我々のフラストレーションを代弁しているようにも取れる。また、〈They’re just another clones/Of pretending critics/I wanna lose control/People talk so real that they sound so fake(奴らは批評家を装ったクローンたち/理性なんて失いたい/人々はもっともらしく語るけど、それが余計に嘘っぽく感じるのさ)〉というラインは、コロナ禍で対立や分断を極めるインターネット〜SNSの世界を皮肉っていると捉えるのは、筆者の邪推だろうか。さすれば“clones”とは、匿名に隠れて誹謗中傷を繰り返す人々(顔の見えないクローン)であり、曲名の「Another Clone」(別のクローン)とは「ひょっとしたら、僕自身もそのクローンの一人?」という問いかけなのかもしれない。