[Alexandros]、生配信ライブ『Party in ur Bedroom』を徹底レポート 静寂と情熱から垣間見えた“バンドの真価”

「制作中、意外とできるなあとは思ったんですけど、やっぱり生がいいよねと最後の最後に思って。そういう想いを歌詞に書きました」

「確かに今の世の中は便利だから、友達や恋人、家族を身近に感じられるツールはある。それはいいことだなと思いつつ、やっぱりうちらはライブバンドだと思うので、そこは諦めたくない」

「いつかみなさんを目の前にして、また騒いで、罵声を浴びせていただければ、素敵なライブになるかなと思います」

(川上洋平MCより)

川上洋平

 『Bedroom Joule』のラストに収録されている新曲「rooftop」は、そういった想いを、川のようなメロディに乗せたミディアムバラードだ。締めの音を鳴らしているうちに照明が明るくなり、メンバーの清々しい表情が露わになる。ライブタイトルから察するに、『Bedroom Joule』の曲を演奏し終えればそこでライブは終了だと思っていた人も多かっただろう。しかし、後の川上の発言を借りるならば、[Alexandros]が“こんな感じかな?”で終わるはずがない。お約束や予定調和から最も遠いところにいるバンドだということを、「まだまだいけますか!? 後半戦もよろしく!」(川上)という挨拶に思い出させられた。

 ということで、ここでギアチェンジ。「Oblivion」を雄大に響かせたあと、ライブのオープニングでおなじみのインスト曲「Burger Queen」で改めてアクセルを踏む。前半も前半で楽しかったが、シーケンスの音を押し退けるほど、ぐいぐいと勢いを増すバンドサウンドをいざ目の前にすると「やっぱりこれだよなあ……!」という気持ちにさせられる。「オンラインだからといってシンガロングさせないと思うなよ、お前ら!」「声出せないなら書き込むこともできるっしょ!」と川上。しかしライブ定番曲の「city」、「Kick&Spin」で特にシンガロングを促していなかったのは、オーディエンスに対する信頼からだろうか。失恋ソング「PARTY IS OVER」の〈君がいないとはじまらないよ〉というフレーズはライブハウスでの再会を願う言葉として、これまでもたくさん演奏されてきた「Starrrrrrr」の〈この場所で この乱れた時代で/傷付きながら 己の歌を刻んでいく〉というフレーズは今を生きるロックバンドの宣言として、これまで以上の切実さを宿していた。

 前半では、ベッドルームミュージックの静寂と余白を。後半では、ライブハウスを愛する者としての汗と情熱を。このように、二度美味しいライブを発信した[Alexandros]。観客を会場に入れてライブをするのはまだ難しいが、音楽には別の愉しみ方もあり、今はそれを堪能したり試したりする絶好の機会だと捉えることもできる。しかし、バンドとオーディエンス、人と人が直接対面するからこその熱狂を私たちはすでに知っていて、だからこそそれが諦められない、諦めなくてたっていい。どちらの気持ちも本当だから、もう両方やってしまおう――という話なのは理解できるが、いや、そう簡単にできることではないだろう。これまで何度も逆境を覆しながら、信じる道を切り拓いてきたバンドだからこそ、こういうときでも真価を発揮できるのだ。バンドの度量の大きさ、逞しさと頼もしさを目の当たりにしたのだった。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■セットリスト
[Alexandros]『Party in ur Bedroom』
2020年6月20日(土)
01.Starrrrrrr(Bedroom ver.)
02.Run Away(Bedroom ver.)
03.Leaving Grapefruits(Bedroom ver.)
04.Thunder(Bedroom ver.)
05.月色ホライズン(Bedroom ver.)
06.Adventure(Bedroom ver.)
07.rooftop
08.Oblivion
09.Burger Queen
10.For Freedom
11.Dracula La
12.Waitress, Waitress!
13.Mosquito Bite
14.city
15.Kick&Spin
アンコール
16.PARTY IS OVER
17.Starrrrrrr

[Alexandros] オフィシャルサイト

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