「コロナ以降」のカルチャー 音楽の将来のためにできること

m-flo ☆Taku Takahashi×VERBALが語る、コロナ以降の発想の転換「様々なファクターを見直してエンタメの届け方を考えたい」

 コロナ禍における音楽文化の現状、そしてこれからについて考えるリアルサウンドの特集企画『「コロナ以降」のカルチャー 音楽の将来のためにできること』。第8回は、m-floの☆Taku TakahashiとVERBALへのインタビューを行った。

 m-floは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて『IDENTITY: Project Blue Marble』や『Music Lives』といった海外のチャリティーイベントに参加し、国内では☆Taku Takahashiが『BLOCK.FESTIVAL』を主宰、DJ DARUMAらアーティストと『Fight COVID19 Online EVENT "YOUR HOUSE by EDGE HOUSE/block.fm"』を発足するなど、国内外で積極的にアクションを起こしている。緊急事態宣言以降、アーティスト活動はもちろん、働き方、ライフスタイルそのものに大きな変化が訪れている昨今。m-flo/個人として、一連のコロナショックをどのように受け止め、どんな未来を見据えているのか。グローバル且つ多岐にわたる活動を行う両者に、エンターテインメント業界の危機を好転するために求められる新しい発想、そしてそれに伴う課題と期待について語ってもらった。(5月21日取材/編集部)

みんな否応もなく2020年に連れてこられた

ーー新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言により、音楽業界全体に大きな影響が及んでいます。m-floとして、もしくは個人として、この期間はどんなことを感じていましたか?

VERBAL:これまで対面で行っていたことも全てリモートでの対応になったことで、みんな否応もなく2020年に連れてこられたような印象があります。もともと日本はテクノロジーに関して疎いところがあると感じていて、例えばwi-fiが飛んでなくても気にしなかったりとか、コロナ以前だったら僕の周りでもSkypeというサービスを知らない人もいました。それが今ではZoom飲み会のようなリモート環境下での活動があたりまえになっていますし、今まで「電話やビデオ会議でよくない?」と思っていたこともどんどん切り替わっているので、僕としては仕事もやりやすくなっています。

 ビジネス面で言うと、すべてオンライン上で行うことが前提になってきているので、その移行作業に追われる毎日を過ごしています。キャンセルや中止にした公演を補填するにはどうしたらいいのか、その代替案を考えていくことはもちろん、どうやってお客さんと再びエンゲージメントを築いていくかを、スタッフやアーティストと常に一緒に考えている状況です。

☆Taku Takahashi:VERBALの言う通り、新しいテクノロジーを使わざるを得ない状況になっているので、その分野に関するリテラシーはすごく高まっていると思います。ただ、すべてリモートでできる便利さがある反面、移動が減っている人々も増えています。移動は面倒なことではありますが、実はその移動時間に脳みそがリセットされたり、気分転換ができるタイミングだったんだと思うんです。人によっては朝から晩まで続けて打ち合わせや会議をしている人もいますし、便利さが増えた分、それに伴う精神的な負荷を体感していた方も少なくないと思います。

ーーm−floとしての活動についてはいかがですか?

VERBAL:一度、すべてをリセットする必要はありました。アーティストのプロモーションにしても、音楽の届け方にしても、大きな会社には慣習というものが必ずあると思います。先ほどのリテラシーの問題を含め、個々の意識の変化だけでは、そういったシステムを足並み揃えて最適化していくには時間もかかります。そういう意味でも、よりm−floファーストで音楽をリスナーに届けていく方法を考えなければならないですし、今回の自粛期間がメンバーやスタッフと改めて話し合ういい機会にもなりました。

ーーこのコロナ禍によって、いろんなものの価値観がいい意味でも悪い意味でも変わったと思います。お二人はどんなところに変化を感じますか?

VERBAL:最近だと、クラウドファンディングに対するイメージの変化は大きいと思いました。クラウドファンディングが日本で認知され始めた当初は、利用した人に対して「資金力がないのかな?」みたいな偏見があったと思うんです。でも今はそうではなくて、コミュニティを作るための大事なポイントであったり、施策を考えるミーティングポイントになっているとの見方に変化しています。

 例えば、通常のフローで作品を一定数、流通・販売するためにはノルマ何千枚で数十万の予算が必要だったとします。ただ、クラウドファンディングで自分たちで資金を調達することができれば、仲介者がいない分だけ生産数を調整したり、デジタル配信だったら経費をより抑えることができるなど、需要と供給にあわせて価値を見直すポイントが生まれます。我々の考え方としても、そういう様々なファクターの見直しを含めて、これからのエンターテインメントの届け方を考えていきたいと思っています。

☆Taku Takahashi:今回の新型コロナウイルスに伴う自粛期間を経験したことで、音楽業界のマネタイズに改めて向き合わなければいけなくなりました。近年はCDビジネスが立ち行かなくなったことでライブや物販で収益を得ていくマネタイズのモデルに変わっていきました。もともと大きなファン層がなければ成立しないモデルではありますが、今回のコロナによってそのライブ自体もできなくなってしまった。もちろん、アーティストや事務所だけでなく、ライブハウスやそこに紐づく多くのスタッフや技術者の方々の収入も大幅に減っています。緊急事態宣言明け以降もしばらくはこの状況は続くと思いますが、仮に観客を減らしてライブを行った場合、それによる収益が僕らがかけているコストに見合うのかどうか、そういったところの検証は今後も行っていくことになるとは思います。

関連記事