高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」第16回
Suchmos、SUPER BEAVER、ROTTENGRAFFTY……ライブハウス拠点にするバンドの大舞台収めた映像作品
緊急事態宣言は解かれたものの、なかなかライブを生で観ることはかなわない現状。そんな渇望感にこたえてくれるかのように、ここ最近、ライブ映像作品が数多くリリースされている。なかでも今回は、普段はライブハウスをホームとしているバンドが、大きなステージに立った日を捉えた映像作品を3点セレクトした。
まずはSuchmosの『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』。結成時より「いつか地元・横浜の横浜スタジアムでライブをする」と言い続けてきた彼らの夢が実現した瞬間を記録した映像作品だ。台風が迫り、雨も降る中、それさえも演出に変えるように、高らかな歌声と、グルーヴィな演奏を響かせた6人。立ち煙る蒸気も、天候の影響だけではなく、3万人のオーディエンスから発せられた熱狂に見えて、とてもドラマティックだ。その場にいた人は大変なところもあったかもしれないが、ライブに行けない今となっては特に、「体験」がライブなのだと、心から思う。とはいえ、心身を揺り動かす彼らのライブ感を、今作でも味わえることは、ぜひとも特筆しておきたい。
そして、楽曲が広く知られているバンドだけに、「実はライブを観たことがないし、どんなバンドか詳しくはわからない」という人にも、ぜひ観てほしい。ライブならではのパフォーマンスはもちろん、しょっぱなから雨も気にせず前に進み歌うYONCEを筆頭に、MCも含めて、メンバーの人柄も映し出されているから。間違いなく、うちでも踊れる一枚だ。
続いてはSUPER BEAVERの『LIVE VIDEO 4 Tokai No Rakuda at 国立代々木競技場第一体育館』。今年1月12日に行われた、バンド史上最大キャパの場所におけるワンマンライブの模様を収めた映像作品だ。今年、たった数カ月前に、こんなライブが行われていたのか……!と思うと、激変した状況に驚かざるを得ない。特にこの日のライブは、ライブハウスであれ、アリーナであれ、彼らがたったひとりの「あなた」に音楽を届けるというところは変わらないという、濃密なコミュニケーションを証明するようなものだったため、なおさら画面からこぼれんばかりの愛情や熱量が貴重に感じられる。
また、そういった「ライブ」そのものの魅力を伝えてくれるだけではく、4月8日にメジャー再契約を発表し、すでに大きく前進している彼らの歴史を、今一度振り返ることができる名フレーズ、名曲、名演奏のオンパレードという意味でも、楽しめる一枚だ。どんな場所であれ揺るがない彼らは、どんな時代にも立ち向かっていけるバンドであるーー今だからこそ、なおそう思える、タフな音楽が詰まっている。