Plot Scrapsが持つ、“真実”を見つめる人間性 多彩でエモーショナルに進化した『INVOKE』を紐解く
「人とのつながりを考えることというより、誰も傷つけないような人との関わり方をどうして皆できないのかな、と考えることは多いです。ロジックの上では容易いことなのにな、と。受け手にも語り手にも、必要な技術なんてそう多くはないのにな、と。学校のような教育機関で、唯一他人に教わるべきことはそれだけなのにと思います」
「普段から“人とのつながり”について考えることはあるか」――新作『INVOKE』を聴き、歌詞の内容から筆者が感じたことを説明した後、ぶつけた質問に対する陶山良太(Vo/Gt)の回答である。このバンドの魅力に通ずる、とても重要な言葉だと思った。
Plot Scraps。彼らが3rdミニアルバム『INVOKE』をリリースするにあたり、メールインタビューを行った。その回答を紹介しながら、このバンドの魅力について探っていきたいと思う。
Plot Scrapsは、キーパーソンで作詞作曲を手掛ける陶山良太、亀山敦史(Ba/Cho)、もぐ(Dr/Cho)の3ピースバンドだ。
「サウンド、アレンジ面で言えば、それぞれの担う部分がより明確になり、意見交換が円滑に進む要因になっているように感じます。4ピースバンドもいいなと思うこともありますが、個人的には今のバランスって結構いいなとも感じています」(亀山)
「この3人で活動したいので試行錯誤して頑張ってるだけで、3ピースにこだわりはまったく無いんですよね」(陶山)
切り口を変えた「Plot Scrapsの3人は、一言で言うとどういう関係?」という質問には、こんな回答が届いている。
「国家錬金術師」(陶山)
「“密”ですかね(笑)」(亀山)
「麦わらの一味」(もぐ)
こちらの意図を的確に捉えた、三者三様の回答である。冒頭の陶山の言葉、さらに前述した分析や三様の回答から、Plot Scrapsは非常に“他人とのコミュニケーション”を大切にしているバンドなのではないかと考える。メンバー間はもちろん、リスナー、ファン、そしてメールインタビューを通しても“相手を捉えよう、理解しよう”という、彼らの元々の人間性が見えて来る。
彼らにとってのコミュニケーションとは、相手と向き合い、相手を理解し受け入れるということなのだと思う。事実よりも真実を大事にするタイプとでも言えようか。嘘を削ぎ落した中にある真実が、しっかり見えているのだ。そして、この人間性が最新作『INVOKE』の作品性になっている。
爽快でブライトなアップチューン「一等星」で幕を開ける本作。「自然と“一等星くん”が1曲目の椅子に座りに行ってる感じ」(陶山)という通り、サビの“抜け”や、エモーショナルなバンドアンサンブルも含め、オープニングを飾るに相応しいスケール感がある。個人的に注目したのは、この曲のコーラスのアプローチ。1曲の中で、異なるジャンルのアプローチを見せる。そこがギターロックからはみ出したポップ感、曲のキャッチーさの一端を担っている。
「過去のアレンジでは、メインの歌に少しだけのプラス作用なり、内容の補強のために有効であるものという認識で、必要な部分に入れてきました。今回はいつもと少し違う(コーラス)パターンが入っていると感じてくれたのだと思うのですが、楽曲に求められた表現をしたまでで、『その場所にこういう感じのコーラスを入れろ』と楽曲から要請された感じ」(陶山)
「CHOCOLATE PUNK」は、イントロからのスカビートがインパクト大のアッパーな1曲。テンポも結構速い。が、面白いのは、そこにメランコリックなメロディが乗っていることだ。スカに憂いあるメロディをマッチングさせたのがとても意外だった。
「ゲームのBGMでこんな感じのがあって、『こういうビートやりたいな』と思って書きました。最初の形はもっと速くてダークだったんですが、だいぶ遅くなってポップになりましたね」(陶山)
インパクト大なのは、同曲の間奏も然り。ハードロックやメタル、ファンクやジャズなど、このバンドのルーツが次々と登場し、聴覚をガンガン攻撃してくる。
「そのようなジャンルにはすべて影響を受けています。何か感じてくれたのだとしたら、血肉化してるものだと思いますね。今作は特にドラムもベースも、構築されたものを2人にプレイしてもらったんです。スタジオに行っては実際に弾いてもらいつつ、2人のプレイヤーとしての雰囲気に合ったフレーズを自分が考えるという、ちょっと変わった手法でしたね」(陶山)