代官山UNIT、相次ぐイベント自粛を受けた二つの新プロジェクト 発起人に聞く“生ライブ配信”での気づきと課題

 東京・代官山にあるライブハウス代官山UNIT(以下、UNIT)が3月22日より二つのプロジェクトを立ち上げた。一つ目は会場でライブ配信を請け負う『MUSIC NON STOP!』、二つ目がアーティストや主催者の支援をするためのクラウドファンディング『Help Me!! Help You!!!』だ。

 これらのプロジェクトは新型コロナウイルスの影響によりイベント自粛が相次いだことを受けて始めたもの。『MUSIC NON STOP!』の第1弾にはパソコン音楽クラブが登場し、無観客ライブの生配信を行った。リアルサウンドでは、プロジェクトの発起人でありUNITの代表取締役である徳尾氏に取材。プロジェクトを立ち上げた背景やライブ配信の課題/気づきなど話を聞いた。

「プロジェクトを立ち上げようと思ったのは3月3日でした。2月26日に自粛要請があってからイベントが次々に中止や延期となり、コロナウイルスの感染は落ち着く様子もない。どうしたことかと思っていたところに、横浜アリーナで行われていた無観客ライブを観たんです。投げ銭形式でしたが、「お金を払って完成度の高いライブを生配信で観る」という考えがなかったので素晴らしいと感じました。ライブ配信ということなら、相応のステージにきちんとした音響と照明、配信のための人材と映像機材を用意できればいまキャンセルを考えているアーティストさんもそのまま本番をおこなえるし、普段大きな会場でライブを行っているアーティストさんもライブハウスを配信スタジオとして活用していただけるのではと思いました。その後、大至急ウェブチケットの開発者や映像さんなどと話し合いを重ね、クオリティの高い生ライブ配信を目指して進めていきました。

 さっそく3月22日にパソコン音楽クラブのライブ配信を行ったのですが、非常に多くの方々から反響をいただきました。リアルタイムで800人以上の方に観ていただけて、現在に至るまで7000人以上の方に視聴いただいています。UNITのキャパシティでは500〜550人しかないので、非常にメリットが大きいな、と実感しました。しかも日本全国で、さらにワールドワイドに彼らのライブ視聴の可能性や視聴の習慣が広まると考えると、生ライブ配信はライブが行えない現在の状況においてアーティストにとって良いチャンスになるのではないのかなと思いました」

 ライブが開催できない今だからこそできることとは何なのかーー即座に考え決断した「生ライブ配信」という試み。パソコン音楽クラブのライブ配信は筆者も視聴したが、カメラ5台による様々な角度から撮影されたカメラワークは、生で見るものとは異なる興奮を得た。30日には第2弾としてBlack Boboiらが出演する。今後の配信についての課題や改善策について同氏はこのように話す。

MUSIC NON STOP! パソコン音楽クラブ生LIVE配信

「今後は様子を見ながら配信時間の長さや開演時間も調整しようと考えています。パソコン音楽クラブの場合は連休の最終日だったので配信を早めの時間帯に設定したのですが、次回は平日なので敢えて通常の開演時間から少しおそくして20時にしています。そうやって調整しながら、視聴者がより観て頂きやすい時間帯や飽きないライブの配信時間、その演出方法を探っているところです。それからとりわけ若い世代はスマートフォンのみで動画を観る方も多くいらっしゃるので、小さな画面でもより良く楽しんでいただける映像になるよう試行錯誤を続けています。

 一方で、生ライブ配信にはいままでに無かったコストがかかるという課題もあります。通常ライブ制作には会場費に加え音響、照明、各種人件費や機材代、諸々手数料の負担があります。配信する場合はそれらに加えて映像周りの費用がプラスされます。しかし先ほどもお伝えしたように、配信によってライブを観ることができる人や興味を持っていただける人の数は大幅に広がります。我々の課題としては、配信のコスト削減を目指しつつ、アーティストや視聴者が「生ライブ配信」により価値を見出していただけるように映像クオリティを上げていくことだと思います」

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