連載「Signal to Real Noise」第五回:Shurkn Pap

「姫路を出たいと思ったことはない」 世界を見たShurkn Papに聞く、地元から発信し続ける理由

「日本のアーティストでいちばん好きなのは鈴木雅之さん」

ーー2018年6月に『Various』を出して以降、ソロでは同年9月に『Various 2』、11月に『Pap’s Building』、翌年2月に『STLYLISH NINJA』とEPを立て続けに発表。MaisonDeでも2018年10月に『The MaisonDe EP』を出して、翌年4月に2nd EP『M8』を発表と、2018年から2019年はリリース攻勢を仕掛けました。当時はどんな思いでいましたか?

Shurkn Pap:その頃は曲を作るのが楽しくて、ずっと録ってましたね。当時はまだ専門学校に行ってて。月曜日がバイト先の定休日だったんで、毎週月曜は絶対スタジオを押さえていてレコーディングっていう。あとは学校とバイトの繰り返し。ひたすら休み無くやってる感じでした。

ーーShurkn PapさんやMaisonDeのヒットで「姫路」という土地にも注目が集まりましたが、「姫路を盛り上げていこう」みたいな意識はありましたか?

Shurkn Pap:ありましたね。最初に姫路という名前を全国に出したのはMerry Deloだと思うんです。DJ TY-KOHさんとKOWICHIさんの「Scooter」のリミックス。あれがきっかけだと思うんですけど、みんな地元が大好きやから。せっかくやるんなら地元を上げていければいいなって。今もどんどん若い子が出てきていて、爆発してる感じがします。

ーーちなみに、上京を考えたことはありますか?

Shurkn Pap:ないです。僕、人混みが苦手で。姫路は田舎なんで、昔は大阪や神戸に行くとなったらめっちゃテンションあがってたんです。楽しみやわー、みたいな。でも年を重ねるうちにだんだんと「もう田舎やないと無理」っていう方向になってきて。だから姫路を出たいと思ったことはないですね。

ーーShurkn Papさんにとって、東京はどんな街ですか?

Shurkn Pap:めちゃくちゃ刺激がある街ですね。それこそ昔、海外に行ってた感じとちょっと似てる。上京しても大体1日か2日で帰っちゃうんですけど、いろんなものを見て、刺激を受けて、頭がパンパンになって帰りますね。情報量が多いというか。

ーー今は良いバランスで姫路と東京を行ったり来たりできている。

Shurkn Pap:いいバランスだと思ってます。姫路は自然がいっぱいあって。そうやって東京で得た刺激を、地元に帰ってボーッと山とか星を見ながら客観的に考えられるから。東京でパンパンになった情報を地元で整理してスッキリさせて、また東京に刺激をもらいにくる。そういうのがいいですね。

ーー姫路の拠点となっているHLGB STUDIOは、どんな存在ですか?

Shurkn Pap:僕のお父さんみたいな感じです。あのスタジオがなかったら、僕たち全員、今はないっていう。必要不可欠な存在です。

ーーHLGB STUDIO を運営するDa.IさんとMaluMeloさんはKNOTTというプロデュースユニットとしても活動していますが、2人はどんな人ですか?

Shurkn Pap:超やさしい人で、音楽が純粋に好き。行く度にマイクが増えていたり、エフェクトを増やしてくれたり、隣の部屋をぶっ壊してレコーディングブースを作ってくれたりして。音楽で得たお金を全部また音楽に還元するっていう感じで、めちゃくちゃ尊敬できるし、一緒にやってて楽しいし、本当に感謝の思いしかないです。

ーー2019年1月にはKNOTTによるリミックスアルバム『Re:Shurkn Pap』がリリースされました。ヒップホップ以外のサウンドもたくさん収録されていますが、2人から音楽的な影響も受けていますか?

Shurkn Pap:Da.Iくんはもともとバンドをやっていた人で、ポップスも好きで、いろんな音楽を聞いてる人なんです。僕と若干似てる感じというか、その影響は強いと思います。

ーー昨年10月に出した1stソロアルバム『The Me』は、どんな思いで作った作品ですか?

Shurkn Pap:短いながら音楽人生のすべてをブチ込んでやろうと思って、好き放題にやった感じですね。唯々、音楽を楽しむっていう。

ーーとはいえ、最初の『Various』の頃に比べると、“音楽の楽しみ方”が違うのでは?

Shurkn Pap:自分の中では『Various』でやったことの上位変換版みたいなイメージで作り始めたんです。でも、オリジナルな色を出せたらいいなと思って、KNOTTとトラックを1から作っていくうちに変わっていきましたね。僕もメロディをはめて、「ここはこれがいいです」とか「ここはこういう方がいいんじゃない?」とかKNOTTとセッションしながら作っていったので。だんだん“音楽をつくる”という意識に変わってきました。

ーーShurkn Papさんの楽曲を聞いていると、メロディや歌を作ってるという意識が強いんじゃないかと思ってたんです。

Shurkn Pap:そうですね。間違いないです。僕自身、ラップよりメロディを付ける方が好きやし、得意だなと思ってます。

ーーラップはしてるんだけど、歌ってる印象があるんです。

Shurkn Pap:ありがとうございます。その感想はうれしいです。どちらかというとラップというより、そういう方に捉えられた方が僕的にはうれしい。

ーー『The Me』に収録された「十人十色」や「晴れた日ぐらいは」を聞いて、日本のニューミュージックや歌謡曲も聞いていたのかなって思いました。

Shurkn Pap:音楽をちゃんと始めてからはそういう壁がなくなって、日本の古い音楽も掘り始めました。日本の古い音楽にもこんなヤバい歌がいっぱいあるんや、めっちゃかっこいいやんって結構な量を聴きましたね。

ーー日本のミュージシャンで好きな人は?

Shurkn Pap:鈴木雅之さん。最近だとサカナクションとか。あとは宇多田ヒカルさんとかMISIAさんとか、いっぱいいすぎて困ります(笑)。

ーーShurkn Papの口から鈴木雅之という名前が出たのはびっくりしました(笑)。

Shurkn Pap:あはは。たぶん日本でいちばん好き。最初にベストアルバムを聞いて、歌がうまいなぁと。ビジュアルもめっちゃ迫力あるし、カッコイイし。日本でこんな人もおるんやっていう衝撃を受けて、そこから聞いていったんです。

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