TrySailの楽曲は『まどマギ』作品とリンクする? 絶望と希望を内包した『ごまかし/うつろい』を考察

 2011年に放映された『まどマギ』は、2010年代初め頃のアニメシーンのトップにあった作品だ。虚淵玄が描いた絶望と希望とが禍々しく渦巻くシナリオは、多くの視聴者を魅了し、様々な派生を生み出した。『まどマギ』は、はつらつとした3人娘と陰鬱なムードをとっかかりにした作品で、TrySailとはイメージは逆なのだが、実はとても噛み合ったコラボだろうと筆者は感じている。『まどマギ』作品に登場するキャラクターは、どんな願いにせよ、希望と夢を強く願っている。だからこそ彼女らは迷い、戸惑い、ドラマへと昇華される。Trysailの3人は、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』内では、軸となるヒロインを演じ、酷く濃い霧のなかにいるような苦悩を歌ってみせる。

TrySail『ごまかし/うつろい』

 『ごまかし/うつろい』はともに、BPM200〜180のロックサウンドを基盤にした楽曲だ。歪んだギターサウンドとタイトに叩かれるドラムスに耳を引かれるが、この曲で驚かされるのは、そのコード進行と変幻していく曲構成であろう。

 オカズやタメを効かせて音数が少なくなる部分を作り、そこからリズムパターンとコード進行を変えてドラマティックに聴かせる手法が軸になってはいるものの、リズムとコード進行は一気に変わらない。ボーカル3人のメロディラインの譜割や音並びが、詰め込められた部分で少しだけ変拍子気味になったり、サビの部分では言葉数とメロディラインが少しだけズレて聴こえたりもする。メロディラインと歌声、バンドサウンドがアンビバレントなまま共存しているのだ。

 夏川がインタビューで答えた「「絶望」なんて歌ったことない」という言葉の通り、彼女らはこの2曲を“希望の歌”として歌おうと試みていくだろう。絶望と希望は裏表であると、『まどマギ』作品を知る人なら頷いてくれると思う。TrySailの表現もこの2曲を通して深く濃くなっていくのではないだろうか。

■草野虹
福島、いわき、ロックの育ち。『Belong Media』『MEETIA』や音楽ブログなど、様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中。
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