加山雄三に聞く、レジェンドから新世代まで様々なミュージシャンとの交流と人生を楽しむ秘訣

 今年4月に芸能生活60周年を迎える加山雄三が、加山雄三&The Rock Chippers名義によるシングル『Forever with you 〜永遠の愛の歌〜』がリリースされた。

 The Rock Chippersは、今から10年前に森山良子、谷村新司、南こうせつ、さだまさし、そしてTHE ALFEEという、世代もジャンルもバラバラなメンバーによりザ・ヤンチャーズ名義で結成されたオールスターバンド。作詞をさだまさしが、作曲を高見沢俊彦が手掛けた今回の楽曲には、これまで加山が歌ってきた往年の名曲へのオマージュがふんだんに盛り込まれており、まさにキャリア集大成といった仕上がりになっている。

 おそらく加山の姿をロックフェスなどで目撃したという人も、きっと多いだろう。近年は佐藤タイジ(THEATRE BROOK)や古市コータロー(THE COLLECTORS)、ウエノコウジ(The HIATUS)らと共にTHE King ALL STARSを結成し、GLIM SPANKYと対バンするなど若い世代のミュージシャンとも積極的に交流を深めてきた加山。そのバイタリティは一体どこから来るのだろうか。今年で83歳となる若大将は、瑞々しい笑顔を終始絶やさないまま、我々の質問に気さくに答えてくれた。(黒田隆憲)

「Forever with you 〜永遠の愛の歌〜」に感じた“kind”

加山雄三&The Rock Chippers「Forever with you~永遠の愛の歌~」

ーーそもそも今回のバンド「The Rock Chippers」は、2010年4月に「ザ・ヤンチャーズ」名義でリリースした「座・ロンリーハーツ親父バンド」のために結成されたそうですが、メンバー編成はどのようにして決まったのですか?

加山:これはね、(『オールナイトフジ』『夕やけニャンニャン』『とんねるずのみなさんのおかげです』などのバラエティ番組をヒットさせた)フジテレビの石田(弘)というプロデューサーの一声で集まったの(笑)。(石田が1973年よりディレクターを務める)『ミュージックフェア』によく出演するメンバーを集めてオールスターバンドを作ろうぜという話になって。しかも、今回はなぜか「The Rock Chippers」なんて名前でね。それも石田のアイデアだった。

ーーバンド名の由来は?

加山:60代、70代、80代が集まっているから、その世代の違いを出したくて6、7、8(ロクチッパ)で「ロックチッパーズ」。「ん? じゃあ80代の俺は『パー』かよ!」って(笑)。それで今回10年ぶりに集まったんだけど、そんなに年月が経ったとは思えないんだよな。スタジオに入って歌ってみたら何にも変わってない。不思議なものだよね。

ーー新曲「Forever with you 〜永遠の愛の歌〜」は、さだまさしさんが作詞、高見沢俊彦さんが作曲しています。

加山:この曲を聴いた時に感じたのは、たった一言「kind」。さだ(まさし)くんの歌詞は、僕のことをちゃんとリスペクトしてくれていて。「Forever with you」というサブタイトルは、「君といつまでも」の英訳なんだよね。「いつまでも」ってとても大切な言葉だと思う。いつまでも幸せでいたい、いつまでも一緒にいたい、いつまでも美味しいものを食べていたいってね(笑)。

ーー高見沢さんのメロディも、これまでの加山さんの楽曲へのオマージュがふんだんに盛り込まれていますよね。

加山:そう。それに、タカミー(高見沢俊彦)の書くメロディはとてもシンプルで、みんなで歌えることを前提に考えてくれている。そこにもkindを感じるし、本当にいい曲だなと思うよ。

ーーボーカルも、メンバーそれぞれの持ち味が活かされていますよね。

加山:そうなんだよ。みんなの歌もいいよね。森山さんの声は特徴があって、歌い出した瞬間に「ああ、やっぱり彼女だなあ」って思うし、谷村さんも(南)こうせつくんも、他のメンバーもそう。みんないい味を出しているよ。全員の声が重なった時のハーモニーも相当いいよね。

ーー曲のタイトルになっている「愛」について、加山さんはどう定義されますか?

加山:僕はね、「愛」と「恋」は分けて考えてるんだ。「恋」は電磁力で、「愛」は万有引力。電磁力というのはご承知の通り、磁石のS極とN極ならパッとくっつく。でもS極同士、N極同士だとパッと離れるじゃない? それだけ「恋」はものすごい勢いでくっつけど、どうかするとパッと終わってしまう。でも、万有引力は何がなんだってくっついちゃう。もう離れられない永遠のもの。どこへ行ったって変わらないのが「愛」だと思う。

ーー電磁力の「恋」が、万有引力の「愛」に変わることはありますか?

加山:もちろん。最終的に「恋」も「愛」になるべきだと思う。そのためには土に潜るしかないんじゃない?

ーーなるほど(笑)。レコーディングではどんなことに気をつけましたか?

加山:今回はスケジュールがタイトで、ものすごく短い期間に仕上げなければならなかった。僕も間違えないように歌わなきゃいけなかったから、8小節ずつ録音したんだよね。そんな録り方は今までしたことなかったから、すごく印象に残っている。どうなるのかなと思ったけど、通して聴いたら「お、いいじゃん」ってなったのでOKを出したよ。

ーーサビの歌詞にある「with」の発音について、高見沢さんと細かくやりとりしている様子がCDに収録されていますね。

加山:最初、タカミーが持ってきたメロディに載せると、「with you」の発音がカタカナ英語になっちゃったんだよね。「ウィズ、ユー」って。「forever」の乗せ方が英語の発音に準じてたから、余計に不自然だった。僕は発音にうるさいからさ(笑)。最終的に、僕の提案した譜割に変えてもらって、それでレコーディングしたんだけどね。時間がなくても、そのくらいのことはやらないと(笑)。

ーー「加山さんは喉が強くて、しかも出せば出すほど良くなっていく」とメンバーが驚いている様子も収められていました。喉のメンテナンスのために、普段から心がけていることはありますか?

加山:特にないけど、強いて挙げれば「風呂場で英語の曲を歌う」ってことかな。毎日やっているわけじゃないけど、風呂場のような湿度の高い場所で発声練習をすると、喉が潤っていいんじゃないかなって。しかも英語の曲だと声帯の筋肉が鍛えられるような気がしてね。完全に自己流なんだけどさ。

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