ZICO、LOOPY、Balming Tiger……2020年リリース韓国ヒップホップ要注目の新譜5選

Balming Tiger「Kolo Kolo」

Balming Tiger - "Kolo Kolo" (Feat. Omega Sapien, wnjn)(Prod. Unsinkable) [Official Video]
Balming Tiger「Kolo Kolo」

 韓国ヒップホップシーンのネクストが気になるなら、Balming Tigerのムーブメントに注目してみよう。2018年から活動を始めたBalming TigerはディレクターのSan Yawnを筆頭に多分野のアーティストたちが所属しているクルー。彼らのシングル曲「Armadillo」のMVにはアジア系アーティストをサポートするアメリカのレーベル<88rising>の公式チャンネルがコメントを書き込んで話題になったこともある。それ以来はメンバーのsogummがサバイバル番組『Signhere』で大活躍してJay Park率いるレーベル<AOMG>に加入するなどそれぞれ個人活動を重ねていたが、今回久しぶりにクルーとしてリリースした「Kolo Kolo」は、咳の音を表現したタイトルからもユニークさが感じられる。ミニマルなリズムがリードするUnsinkableのビートと、Omega Sapienのスペイン語と英語を面白く混ぜ合わせた歌詞、中毒性の高いフックは癖になるだろう。さらに新メンバー・wnjnの声は楽曲の構成に意外性を与えてくれる。相変わらず韓国で最もフレッシュなクルーだと証明する1曲だ。奇妙なエネルギーが溢れるMVも必見。

Errday Jinju「January 29」

1월 29일 (Feat. The Quiett) - 얼돼 (Errday Jinju)
Errday Jinju「January 29」

 韓国ヒップホップに注目してきたファンの中でもErrday Jinjuの名前を知っている人の数は多くないだろう。しかし、彼はメディアのスポットライトを浴びたことはないものの、長い間自身の領域を開拓してアーティストとして成長してきた。そんな彼のポテンシャルに気づいたヒップホップファンはここ数年間著しく増えている。8年間ミックステープ、EPなどを多数リリースしてきたErrday Jinjuだが、フルアルバムは2019年11月にリリースされた『SARA』が初めて。人生の逆境と悲しみ、その中で求める希望を表現した『SARA』は、リスナーや音楽評論家からの好評を受けて、彼の明るい2020年の前触れとなった。1月には韓国の歳で30歳を迎えた自身の誕生日を記念して人生を振り返る内容のトラック「January 29」をリリース。また偶然にも誕生日が一緒だった<ILLIONAIRE RECORDS>のCEOであるThe Quiettがフィーチャリングとして参加した。彼もまた37歳の誕生日を迎えたラッパーとしての思いをリリックに綴っている。充実した2020年をスタートさせたErrday Jinjuが1年後の1月29日にどうなっているのか、今から楽しみだ。

Viceversa「Broken Balls」

Broken Balls (ft.Mckdaddy)(Prod.noisemasterminsu) (Official Audio)
Viceversa「Broken Balls」

 Viceversaは今韓国で新しく注目を浴びている新鋭ラッパー。SoundCloudシーンを中心に活動していた彼が、初めて注目の的となったのが2019年にリリースされた27RING の「Genkidama RMX」にフィーチャリングで参加したことだ。ユニークな声の出し方と変則的なフロウを操る彼の歌声は、少しずつリスナーの耳を奪っていくようになった。2019年の9月にリリースされたデビューEP『"Incomplete"』は、ビッグネームからのシャウトアウトもあった。韓国を代表するラッパーの1人であるE SENSが、何度も彼のラップを絶賛し「LIT RED」を称賛した。その上E SENSEは自身のコンサートのオープニングアクトとしてViceversaを迎えた。Viceversaはこのいい流れを逃さず、今年に入ってシングル「Broken Balls」をリリース。同曲には冒頭で触れた「I’mma Do」を手掛けたプロデューサー・noisemasterminsuがビートを提供し、『SHOW ME THE MONEY 8』で活躍したラッパー・Mckdaddyがフィーチャリングとして参加した。

RealSound_ReleaseCuration@soulitude200209

■soulitude
日韓の大衆音楽事情を専門とするライター。歌詞・記事の翻訳や音源の流通、キュレーションなどの職業を経て、今は日韓の音楽シーンの架け橋となるべく活動中。
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