JYOCHOの音楽に感じる狂気にも似た凄味 スキルフルな演奏で魅せたツーマン公演レポ
そんな強烈なバンドだが、MCに入ると途端に飾らないアットホームな雰囲気に変わる。猫田ねたこは観客との距離を縮めたいという気持ちを「もっと皆と精神的に触れ合っていきたい」と独特な表現で伝え、笑いを呼んだ。MVのコメント欄に寄せられた”馬乗りになってボコボコに殴られた気分“という感想を元ネタに、「ボコボコにされる準備はいいですかー?“」「おー!」というコールアンドレスポンスが生まれ、そのまま「sugoi kawaii JYOCHO」へ。
この曲は、まさに”音の暴力“とすら感じるJYOCHOのテクニカルな演奏が詰め込まれた楽曲だ。鳥肌が立つほどの超絶技巧にフロアからは感嘆の声が上がり、演奏中は何度も大歓声と拍手が湧きおこった。つづく「family」は、生きることの美しさを歌ったような楽曲。優しく透明感のある猫田ねたこの歌声に会場が包み込まれた。キーボードとフルートの音色が美しい「Lucky Mother」、ホーリー感のある壮大な「365」と続き、ラストは本ツアーのタイトル曲でもある「綺麗な三角、朝日にんげん」。スキルフルな演奏で再び客席をぶちのめし、5人はステージを後にした。
アンコールのMCでは、「さすがJYOCHOとsiraphの対バン」「(アンコールを呼ぶ手拍子の)BPMが142だった」と冗談まじりに観客のリズム感の良さを称えるだいじろーとsindee。彼らの人間性の良さが垣間見える場面だった。そんな和やかなムードのまま、この日ラストを飾る「pure circle」へ。明るいのにどこか切ないこの曲では、先ほど褒められた手拍子で会場が完全にひとつになった。ステージの上もフロアもリラックスして、JYOCHOの作り出す音楽に身を委ねる。演奏を楽しむメンバーと、音を楽しむフロア。その両方が入り混じり、どこまでも心地の良い空気感が生まれていく。大きな歓声と拍手に包まれ、2019年最後のJYOCHOのライブは幕を閉じた。
本編ラストのMCでだいじろーは、「こんなノリにくい情緒豊かなバンドを見に来てくれた皆さんは、新人類だと思います」と嬉しそうに語り、このライブを選んだ観客に感謝の気持ちを述べた。さらに「僕たちは新しいものを作っていこうと心に決めている」とバンドを代表して、未来への決意も表明。今年3周年を迎えるJYOCHOは、今後も決して目を離せないバンドだと確信させられる公演であった。
■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。
■リリース情報
2nd EP『綺麗な三角、朝日にんげん』
10月9日発売(水)リリース
価格:¥1,200(税別)
作品詳細はこちら
<収録内容>
01. 綺麗な三角、朝日にんげん
02. いつか一人で
03. 遠回りのアイデア
04. Atlas