ニノミヤユイが目指す、声優活動とは異なる“アーティスト”としての表現 「今の自分を常に見せていきたい」

ニノミヤユイ、アーティストとしての表現

ルーツはボカロ、言葉を詰めている曲が好き

ーーでは、多彩なソングライター陣のセレクトは、どのようにおこなっていったんでしょうか。

ニノミヤ:まず、私がデビューするにあたって、スタッフさんが私の好きな音楽やアーティストさんをヒアリングしてくださって。例えば、私は欅坂46さんが好きなんですけど、それをきっかけに(欅坂46の「サイレントマジョリティー」や「不協和音」を作曲している)バグベアさんにオファーしてくださったり。ほんとですか!? って言いましたけど(笑)。あと私のルーツがボカロなので、佐伯(youthK)さんにご参加いただいたり。やりたいことをやらせていただきました。本当にありがたいです。

ーーそんな錚々たる作家陣に混じって、ご自身でも作詞されていますよね。

ニノミヤ:もともと、文章を書くのは嫌いじゃなかったので、歌詞もいつか書けたらいいなって思っていたんです。そんな時に、このタイミングで作詞もやってみたらってスタッフさんが言ってくださって。いろんな方の助けも借りながら、なんとかやってみました。

ーーさっきおっしゃったように、佐藤さん作曲の2曲の作詞をしているじゃないですか。どちらも、ハイクオリティで作詞が難しそうな楽曲ですよね。

ニノミヤ:そうですね。特に「私だけの、革命。」はテンポも速くて、言葉もたくさん詰め込む曲なので、どう言葉を当てはめればいいのか、すごく迷いながら時間をかけて作詞しました。2回ぐらいは、全部書いて更地にするようなことをしましたね。私のそのままを書くという方向性だったので、私は普段何を考えているんだろう? って、自分を客観的に見るところからはじめたんですけど、それを言葉にするのが難しかったです。

ーー自分を客観的に見て〈革命〉という言葉が出てきたんですね。

ニノミヤ:そうですね。私自身、この世界に飛び込んだのも、一般公募のオーディションだったので、ここまで階段のようにのぼってきたというより、バン! って扉を開いた感じだったんです。一気に環境も変わったし、かっこよく言うと革命っていう言葉が合うのかなって。あとは私自身好きなんです、革命が(笑)。今まで逆らえなかった大衆が、一気に歴史をひっくり返すっていうのを、かっこいいと思ってきたので、こうなりました。自分でも、大きく出たなって思いますけどね(笑)。これからの期待も自分に込めて。

ーーもうひとつの「光なくても」は、大人と子どもの間の18歳という年齢ならではというか、葛藤しながらも前に進む様子が描かれています。

ニノミヤ:そうですね。この歌詞を書く時に、佐藤さんにもアドバイスをいただいて、今を生きる私の必死さを伝えたいと思ったんです。だから、わりと私の苦しいところを、弱いところを見せています。

ーー負けず嫌いなんですよね。弱みをさらけ出すことも勇気が必要だったんじゃないですか?

ニノミヤ:そうですね。でも、「私だけの、革命。」で自分の強い気持ちを打ち出した分、その裏側にいる弱い自分を映し出したかったんです。前に進めなくても、前を向く気持ちは必要だっていう、自分の意思が出ていると思います。

ーーバグベアさんとの共作の「乱反射↘↑↗」は、どうでしたか?

ニノミヤ:まず、制作を進める中でバグベアさんから作詞してみませんか? って言っていただいて。わりと初期に作っていた曲だったし、いやいやいや……みたいな感じだったんですけど、まずは原案みたいな形で思い付いたことを書いてみて、それをバグベアさんにお渡しして。そうしたら私の言葉を使いながら構成や流れをまとめてくださったんですよね。〈陰キャ〉とか〈モテたい〉とかそのまま活かされているので、ドキっとしました(笑)。でも、これがまっすぐな気持ちというか。メロディも相まって、きれいに感情がのったと思います。

ーー〈モテたい〉ってニノミヤさん発信だったんですね。モテるんじゃないんですか!?

ニノミヤ:いやいやいや、全然ですよ!

ーーそれだけ、作詞ではリアルさを心掛けているんですね。 

ニノミヤ:そうですね。声優の時は演じているので、アーティストの時は今の自分を常に見せていきたいんです。自分の言葉だからこそ届くものがあると思うので。私、歌詞から曲を好きになることが多いんです。読むだけで泣けたり、苦しくなったり。だから、言葉の持つ力を……凶器にもなりかねないですけど、そこを研ぎ澄ませて書いていきたいですね。

ーーでは、歌に関しては、改めてアーティストとして気付いたことはありましたか?

ニノミヤ:私の活動は声優からはじまったので、(キャラクターソングなどでは)滑舌よく、はっきりしっかり歌うことを心掛けてきたんですけど、それじゃ私の素は見えないから、どう崩すかは苦戦しました。どういうふうに歌いたいかも、今まではボヤッとしていて。うまく歌いたい、でもどういうものがうまい歌なの? っていう。それを言葉に、かたちにできるようにしなきゃいけないと思いました。

ーーそこで見つけた正解を、全ての曲に反映させるのは難しかっただろうな……と思うほど、アルバムの収録曲はバラエティに富んでいますよね。例えば、歌謡っぽい「あどけなさも私の武器にする」は、歌ううえで、どのようなことを考えましたか?

ニノミヤ:「あどけなさも私の武器にする」は、なんとなくバーで歌っている女性をイメージしたんですけど、それが完全に他人だと私じゃなくなっちゃうので、私が成長してバーで歌ってたらどうか? とか。主人公の状況に私を当てはめていきました。

ーー声優のように完全に演じるのではなく、あくまで私がこうだったら、ああだったらって想像していったんですね。では、スウィートな「Lemon Gelato」はいかがでしたか?

ニノミヤ:自分が恋する女の子だったらどうするかな? って想像しましたね。

ーーかと思えば、思いっきりロックな「わたしを離さないで」もあるわけで、この飛距離が半端ないですよね。

ニノミヤ:確かに。これは、私がバキバキのロックが歌いたいと相談したら、バキバキの氏原ワタル(DOES)さんが作詞作曲してくださって(笑)。尖ったところを前面に出しました。

ーーそして「安心 to the 安全」は、言葉が詰まっていて、インパクトがあります。

ニノミヤ:何度かライブで歌っているんですけど、やっぱり滑舌との勝負ですね。でも、私のルーツはボカロで、言葉を詰めている曲が好きなので、これを歌えると達成感があるんです。歌っていても楽しいですしね。より鮮明に思いが伝えられると思います。

ーーさきほどからボカロの話がたくさん出てきますが、なかでも、どんなアーティストが好きだったんですか?

ニノミヤ:DECO*27さんとNeruさんは、自分の中で大きな存在です。Neruさんの「テロル」の歌詞は、あまりにもよすぎて。辛い時に聴いたら泣いちゃうんですよね。なんで、こんなすごい歌詞を書けるんだろうって思います。

ーーDECO*27さんは、「安心 to the 安全」にギターで参加されていますね。

ニノミヤ:そうなんです! 感無量です。あと、中高生になってからはロックにも引っ張られていったんですけど、アニソンをきっかけにGARNiDELiAさんとか、LiSAさんとかを好きになりました。最近は、さユりさんとか、ミオヤマザキさん。辛くなったりむしゃくしゃしたりすると、ミオヤマザキさんのプレイリストをブワーって聴いたりしています。

ーー最後に、アーティストとしては、どんな理想がありますか?

ニノミヤ:声優ではなく、ひとりのアーティストとして見てほしいです。いろんな人に聴いてほしいですね。

ーー同世代に聴いてほしい気持ちもありますか?

ニノミヤ:ありますね。自分の等身大を歌っているので、学生にも刺さるかなって。実は「私だけの、革命。」も、作詞をどうしよう? ってなった時、友達と最近の不満について語って、わかるなあって思ったことを歌詞に入れたりしたんです。変なところで校則キツイとか。先生の都合で理不尽に怒られたりとか。学校って、人間関係が複雑になりやすいですし。そういう、リアルに学生が悩んでいることが反映されていると思うので、聴いてみてほしいです。

ーー3月には東阪でライブもありますね。

ニノミヤ:最初、東京公演だけだったのが、完売したので大阪も決まったんです。今までも、ミニライブやイベントで歌った時に、「生で聴いて凄みを感じた」って言っていただけたこともあったので、ライブはできる限りやっていきたいですね。緊張はするんですけど、ステージでは世界観に入って、伝えたいことに集中しています。

【ニノミヤユイ】「愛とか感情」Music Video(Full Size )
ニノミヤユイ『愛とか感情』

■リリース情報
『愛とか感情』
発売:2020年1月15日(水)
価格:¥2,700(税抜)
〈収録曲〉
1.愛とか感情
作詞・作曲・編曲:バグベア
2.ヤミノニヲイ
作詞・作曲:カノエラナ 編曲:坂東邑真
3.Lemon Gelato
作詞:ミズノゲンキ 作曲・編曲:睦月周平
4.乱反射↘↑↗
作詞:ニノミヤユイ, バグベア 作曲・編曲:バグベア
5.私だけの、革命。
作詞:ニノミヤユイ 作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
6.呪いを背負って生きたいよ。
作詞:ケンカイヨシ, 國土佳音 作曲・編曲:ケンカイヨシ
7.わたしを離さないで
作詞・作曲:氏原ワタル 編曲:馬渕直純
8.安心 to the 安全
作詞・作曲・編曲:佐伯youthK
9.光なくても
作詞:ニノミヤユイ  作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
10.あどけなさも私の武器にする
作詞・作曲:新羅慎二 編曲:川口大輔

■ライブ情報
『ニノミヤユイ 1st LIVE「愛とか死、或いは名もない感情からの逃避」』
3月28日(土)東京・下北沢GARDEN
4月11日(土)大阪・梅田Zeela

オフィシャルサイト

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