荻原梓のチャート一刀両断!(年末特別編)

2019年チャートを賑わせたアイドル/グループ作品を振り返る 時代の変化をはっきりと確認できた1年に

#第三勢力

Aquors『僕らの走ってきた道は…/Next SPARKLING!!』(2月4日付)
祭nine.『有超天シューター』(4月1日付)
BEYOOOOONDS『眼鏡の男の子/ニッポンノD・N・A!/Go Waist』(8月19日付)

 上記2つのカテゴリに属さないものを第三勢力とすると、その内、アニソン市場は大きな存在感があり、その中でもμ’sの後継であるAquorsはシーンのアイコン的存在と言ってよいでしょう。作品自体も生録音にもこだわっていて印象的なリリースでした。その他、『アイドルマスター』もランキング常連ですし、『あんさんぶるスターズ!』や『アイドリッシュセブン』、『ヒプノシスマイク』といった女性向けコンテンツのキャラソンも上位に食い込むことが珍しくなくなってます。「ようこそジャパリパークへ」以来となる新たなムーブメントを、来年はこのシーンから期待したいところです。

 数多くいるダンスボーカルグループの中でもBOYS AND MENの弟グループ、祭nine.は最も勢いのあるグループのひとつと呼べるでしょう。東海地方を拠点とする地域性を持ちながらも爆発的な人気を獲得できたという、ある種、ご当地アイドルの新しい成功例を作り上げた彼らですが、全国的なレベルの人気とまではまだ至ってない印象です。グループカラー的にも、今後の活動次第ではDA PUMP級のブレイクも可能だと個人的には思っているので、来年以降の彼らのさらなる活躍に期待します。

 ハロー!プロジェクトから今年デビューしたBEYOOOOONDSも注目の存在です。演劇を特徴としたグループで、曲中や曲間に語りや演劇が挟まります。ハロプロなので楽曲のクオリティは折り紙付き。それに加えて、彼女たちらしいセリフを多用した躍動感のあるパフォーマンスが魅力となってます(参考:BEYOOOOONDS、それぞれの個性が輝く初ワンマンライブ 寸劇を駆使したステージの魅力も)。先輩グループの築いてきた伝統を下地としつつも、モーニング娘。「LOVEマシーン」を塗り替えるくらいの大きな一発を彼女たちからは見られそうな気がしています。

#時代の変化をはっきりと確認できた1年

 激動のジャニーズから期待の新人グループのデビュー作まで、今年も様々な作品で賑わったチャートでした。ニコニコ動画出身のグループやYouTuberといった時代を象徴する存在も登場し始め、時代の変化を感じます。バーチャルアイドルやVTuberといった従来存在しなかったような新しいタイプのアーティストがどれだけ頭角を現せるのかも要注目です。

 現在のCD売り上げは、たった1週で上位が入れ替わるゆえに、むしろ今人気のアーティストを週替わりで確認できる日めくりカレンダーのような様相を呈してます。今後もこのような傾向は続いていくでしょう。その中でオリコンは、昨年12月よりストリーミングランキングと合算ランキングの発表を開始しています。(参考:ORICON NEWS)こうしたチャート側の進化により、アーティスト側の売り方も問われる時代がやってきたのだと思います。

 世の中の変化に伴いチャートも形を変え、そして大御所がそれに対応する姿勢を見せ、さらに時代を象徴するような新しい勢力も続々と現れている――2019年は時代の変化をはっきりと確認できた1年だったと言えると思います。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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