AA=が問いかける「自由とは何か」 社会への危機感を伝える上田剛士の“本気”を見たTSUTAYA O-EAST公演

AA=がライブで問いかける「自由とは何か」

 もともとAA=はその出発点からして政治的なニュアンスを持ったバンド(ユニット)だったし、上田自身も社会的発言を厭わない。だがこういう形で音楽家が突っ込んだ政治性あるいは政治的タームのある歌を歌ったり発言したりすると途端に四方八方から叩かれるのが今の日本社会である。だがそれを承知でAA=/上田剛士はこんな歌を歌い、「お前の好きにさせはしない」と挑発するのだ。その覚悟に、危機感の深さと意思の強さに震える。

 その後の「MONEY GRUBBER」では、「AA=マネー」なるニセ札? が天井からばらまかれる。ぼくは手にすることができなかったが、もちろんそこには汚職と拝金主義が横行する今の社会への皮肉があるはずだ。考えてみればこういう形のステージ演出はAA=にしては珍しい。この日のライブが上田にとって、強い決意のもとで行われた特別なものであることを痛感した。

 そしてライブも大詰め、BALZACのHIROSUKEをゲストに迎えての「DEEP INSIDE」に始まる後半部はアップリフティングな曲が続き、フロアも一層盛り上がる。2階席から見ていたのだが、観客が次々とポップコーンのように飛び上がりボディサーフでステージ前まで運ばれ、ガードの男たちが機械的に引っこ抜いて通路に誘導し、客は一目散に通路を通ってまたフロアに乱入していく、という一連の動きが何度見ても面白い。

 圧巻は本編最後の曲だった。「posi-JUMPER」「LOSER」とポップな定番曲が連続で演奏され、客席の熱が最高度に高まったところに投下されたのは『#6』でもっともヘヴィで社会的な「そして罪は赦された〜ACQUITTAL」だった。悠長に歌っていては伝わらない、といわんばかりの上田の今の社会への危機感が伝わってくるような切羽詰まった語りと、重苦しい曲調。〈俺の足からは血が流れ出て/立ち上がることさえ出来なくなっていたんだ〉と叫ばれる、鋭く突き刺すような言葉は、盛り上がったライブの高揚感を強制的に冷却するような効果があった。否応なしに迫りくる現実に引き戻す。この日のライブはロックのライブエンターテインメントとしてほぼ完璧に完成されていたが、しかし同時に、上田はこのライブをただ楽しく暴れられればいいとは思っていない。上田剛士は本気なんだと、思い知らされたのである。

 そしてアンコール。上田は「俺たちの闘争は、まだまだ続きます」と堂々と宣して『#6』から「SAW」をプレイした。彼らはその思いを観客の多くが共有し、それぞれの場で闘いを続けることを信じているはずだ。

 この日のライブは2020年2月26日『TOUR #6』として映像作品化される。2月9日には台風で中止になった名古屋公演のリベンジも決定している。AA=の自由を勝ち取る闘いは止まらない。

(ライブ写真=西槇太一)

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

AA= オフィシャルサイト

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