ハルカミライが歩んできたライブバンドとしての軌跡ーー幕張メッセワンマン『A CRATER』への期待を込めて
ハルカミライのライブスタイルは、とにかくストレートで熱量の高さが尋常ではない。青春パンク的な要素を持つ曲も多く、フロアはたちまち拳と歓声に包まれる。観客が熱くなればバンドが熱くなり、バンドが熱くなれば観客も熱くなる。この構造は、”ここにいる皆が繋がっている”と強く思わされるし、ハルカミライ特有の高揚感だと感じる。〈あいつのことなら俺が ぶっ飛ばしといてやるから ぶっ飛ばしといてやるから 気にしてるんなよ〉と歌う「ファイト‼︎」では、友達が肩を組んで励ましてくれるような熱い演奏を繰り広げ、〈君にしか歌えない 君にしか歌えない 目の前に何人いようが 君の目を見ていたいの〉と真っ直ぐに届ける「君にしか」は、目の前のたった一人のために歌う。2曲とも「ひとり」のために歌った曲が、その場にいる「みんな」のものになっていくような、ファンとバンドとの距離をぐっと縮めてくれる楽曲だ。この肌感覚と温度感は彼ら特有のモノであり、大きな魅力と言えるだろう。また、フロントマンの橋本はフロアのど真ん中へ飛び込み、マイク1つで熱狂を加速させ、その後ろで楽器隊も負けじとダイナミックなプレイを繰り広げる。そこに観客も巻き込み、瞬く間に空間を一つにしてしまうのだ。一方、「ウルトラマリン」や「アストロビスタ」など、繊細でロマンチックな世界観の曲を、声高らかに歌うのもまた一つ彼らの特徴だ。
そして、幕張メッセでのワンマンライブを目前にして、自主企画イベント『ヨーロー劇場2019』の東京キネマ倶楽部公演が10月4日に行われた。東京キネマ倶楽部は、グランドキャバレーだった施設を活用した独特な雰囲気が漂うイベントホール。ハルカミライがこれまで立ってきたライブハウスとは趣向の異なる会場だったため、筆者はいつもと違った演出がされるのではと予想していた。しかしそれは全くの見当外れで、彼らはいつものライブをいつも通りのスタイルで見せていた。橋本がライブの終盤「特別なことしなくても、特別にできるからいいんだ」と語っていたが、全くその通りだ。凝った演出などなくとも、ハルカミライがステージに立ち、音を鳴らすことでしか体感できない熱狂が現場には存在している。この日は、ファンの中で有志を集め、ステージの上でともに歌う場面があったのだが、その姿は本当の仲間のように見えた。どの場面を切り取っても、フロアの目の輝きと笑顔が眩しく、「フロアをこういう顔にできるバンドって最強だな」と思わされるばかりだった。途中、観客の中には笑いながら涙をこぼしている人も居て、きっとそれは、日々感じる不安や孤独を乗り越えた先の笑顔と涙なのだろうと感じた。ライブに心を動かされるとは、そういうことであってほしい。
11月13日には、新シングル『PEAK’D YELLOW』を発売し、同月12日からは、GOOD4NOTHING、HEY-SMITH、SIX LOUNGEとの4マンツアーが決まっているハルカミライ。来る幕張メッセ公演では、珍しい360度センターステージでライブをするとのこと。ライブハウスの申し子が、沢山のファンが見守る晴れ舞台のど真ん中で、いつもと変わらない真っ直ぐな音楽を鳴らす光景を心待ちにしたい。
(文=石見優里佳)