『ドハツの日(10・20)特別公演秋の大感謝祭〜もっと!もっと!愛されたくて35年〜』
怒髪天が繰り広げたエンターテインメントショウ 結成35周年“ドハツの日”公演レポ
「男は胸に…」で始まった後半戦。「ゆきてかへらず」「つきあかり」と、男くさく硬派なナンバーでじっくり攻めていくと、増子が「将来はもうないから、やるしかねぇ!」と叫んではじまった「やるイスト」からのラストスパート。〈ロックバンドが理想や夢歌わずにどうする〉なんて問い掛けを、バンドとファンが一緒に叫ぶという、誰もが羨むほどの関係性が会場内いっぱいに広がった「HONKAI」。そしてラストは、〈ダミ声も高らかに〉「酒燃料爆進曲」が“ドハツの日の夜”に響いた。
「一夜一夜に人見頃……」アンコールで登場したのは、スーツ姿の坂詰克彦 a.k.a. Chan-Saka。歌う曲は「待っているのよ」。自慢のダンディな美声をムーディーなカラオケで披露すると、「お聴きいただきました曲は、わたくしの2ndシングル、『今夜も始まっているのよ』……あ、違う違う違う、間違えちゃった。あれ? ど忘れしちゃった」と、目の前のお客さんに助けてもらい、あらためて挨拶。こうした素の性格こそ、増子が「夢に出てきて大笑いして目が覚める時がある」と語る、愛されキャラたる所以である。つづく、「今夜も始まっているのよ」ならぬ、「今夜も始まっているだろう」では、5人のセクシーな女性ダンサーが登場。艶めかしく舞いながらラストは坂詰を囲んで渾身のポーズ。「わたくしの1stアンド、2ndシングル、どうぞお買い上げください。よろしくお願いします」と頭を下げるとステージを降りた。あらためて言っておくが、この坂詰克彦とは、ロックバンドのドラマーである。
「35周年迎えられたのも、今日が楽しいのもそう、平和でナンボよ!」
再び登場した増子が高らかにピースサインを掲げると、フロアいっぱいにピースサインが挙がった「セイノワ」。最後の最後は「雪割り桜」だ。強く勇ましく、けれど優しさに満ちた大合唱が会場いっぱいに轟いた。それを受けて上原子の咽び泣くようなギターソロがこれでもかというほどに咆哮する。さらにそれに負けぬよう、オーディエンスはありったけの最後の力を振り絞る掛け声と拳を挙げ、大団円を迎えた。
「ありがとう、また一緒に遊んでくれ!」(清水)
「ありがとうございました、最高のドハツの日でした! またツアーで会いましょう!」(上原子)
「ドハツの日、ありがとうございました! 高いところ(ドラム台)からサーセン!」(坂詰)
「オトノナススメ〜35th 愛されSP〜」が祝砲のごとく鳴らされる中、メンバーそれぞれが挨拶してステージを去っていく。最後に残った増子が「(30周年の)武道館より、グッときた」と、汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭いながら口にした。フロアから上がる1人1人の手に、ステージから落ちそうになるほど手を差し伸べる増子の姿が印象的だった。
「バンドがお客さんや仲間に恩返しできることは、解散しないこと」先日のインタビューにおいて増子が口にした言葉を思い出す。ロックバンドやグループの解散、活動休止、メンバーの脱退や卒業……そうしたことで1度でも悲しい思いをしたことがある人にとって、これほど元気がもらえる言葉は他にないだろう。何より、それを口にできる凄さもわかるはずだ。
「これから36年、37年、40年、50年……70周年くらいまでは付き合ってもらうからな! だから何回でも言うよ、生きてまた会おうぜ! ありがとー!!」
増子はそう叫ぶと、深々と頭を下げた。こうして、35周年の“ドハツの日”の祭りは終演した。厳しくも美しい日本のロックバンドの生き様を、いなせな男たちのこれからへの静かなる挑戦を、目の当たりにした夜だった。
いま、日本のロックシーンに、怒髪天というバンドがいることを誇らしく思う。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter
<2019年10月20日(日)神田明神ホール セットリスト>
01. オトナノススメ
02. 労働CALLING
03. N・C・T
04. シン・ジダイ
05. 裸武士
06. 北風に吠えろ!
07. トーキョー・ロンリー・サムライマン
08. 天誅コア
09. 夢と知らずに
10. 愛のおとしまえ
11. ちょいと一杯のブルース
12. 幸福の配分
13. 吠-HOEROU-郎
14. 喰うために働いて生きるために唄え!
15. 男は胸に…
16. ゆきてかへらず
17. COME BACK HOME
18. つきあかり
19. やるイスト
20. HONKAI
21. 酒燃料爆進曲
EN1. 待っているのよ
EN2. 今夜も始まっているだろう
EN3. セイノワ
EN4. 雪割り桜