佐野元春がさらに追求した“ビートと言葉” 『ソウルボーイへの伝言 2019』極上のステージ

佐野元春がさらに追求した“ビートと言葉”

 2020年にデビュー40周年を迎える佐野元春。佐野元春 & THE COYOTE BANDのクラブサーキットツアー『ソウルボーイへの伝言 2019』は、来年のアニバーサリーイヤーに向けたキックオフだ。佐野が『ソウルボーイへの伝言』とタイトルされたツアーを開催するのは、2010年以来、2度目。ライブハウスを中心としたツアーは約4年ぶりとなる。10月12日に予定されていた川崎CLUB CITTA’公演は台風のため中止となったが、10月15日のマイナビBLITZ赤坂公演で彼らは、“ビートと言葉”を中心にした表現をさらに追求した、極上のステージを体現してみせた。

 細身の黒のスーツをまとった佐野、バンドメンバーの小松シゲル(Dr/NONA REEVES)、深沼元昭(Gt /Plagues、Mellowhead、Gheee)、藤田顕(Gt)、高桑圭(Ba/Curly Gi-raffe)、渡辺シュンスケ(Key /Schroeder-Headz)、大井洋輔(Per)がステージに登場し、会場を埋め尽くしたオーディエンスは拍手と歓声で迎え入れる。オープニングからビートの効いたナンバーを次々と披露し、ステージとフロアの距離が一気に縮まる。スタンディング形式の会場ならではの臨場感が心地いい。「初日はひどい天候で、残念ながらライブができませんでした。今夜はみんなで力を合わせて、ブルーな気持ちを吹き飛ばすようなライブをしたいと思います」と挨拶した佐野は、ライブ冒頭からフルスロットルだ。

 10月9日に新作『或る秋の日』(人生の秋を迎えた男女の心情を詩情豊かに描いた、シンガーソングライターとしての側面を色濃く反映した作品)をリリースしたばかりだが、今回のツアーのセットリストは、THE COYOTE BANDとともに制作した4枚のアルバム(『COY-OTE』『ZOOEY』『BLOOD』『MOON』)が中心。アレンジ、アンサンブル、演奏はさらにブラッシュアップされ、洗練度の高さと生々しい手触りを共存させたビート、そして、佐野が紡ぎ出すリリックがまっすぐに突き刺さってくる。

 すべての楽曲はシャープにデザインされているが、その奥にはきわめて豊かな音楽世界が広がっている。ロックンロール、ソウル、ブルース、R&Bといったルーツミュージックのエッセンスが内包され、(広義の)ポップミュージックの奥深さ、豊かさがしっかりと伝わってくるのだ。THE COYOTE BANDの結成から10数年が経つが、そのクリエイティビティは、いまがもっとも高いと言っていいだろう。

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