佐橋佳幸×Dr.kyOnが語る、佐野元春らと作り上げた無国籍サウンド「Darjeelingに予定調和はない」

Darjeeling、佐野元春らと作った無国籍サウンド

 Dr.kyOnと佐橋佳幸によるユニット、Darjeelingが1月23日に新作『8芯ニ葉~雪あかりBlend』をリリースした。これはDarjeelingの4枚目のアルバムであり、2017年11月の1枚目から続く「8芯ニ葉」(理想的な紅茶の摘み方を指す“一芯ニ葉”を文字ってつけられたもの。8は1枚あたりの収録曲数)シリーズの、ひとまずの完結編。毎回多彩なゲストが迎えられてきたが、今作では小川美潮、河口恭吾、佐野元春、山下久美子の4人がボーカルをとり、作詞でKERA(有頂天)や鈴木慶一らが参加している。寒い季節にカラダも心もあたたまる、そんなこのアルバムの全曲についてと、Darjeelingのこれからについて話を聞いた。(内本順一)

今作のイメージは雪景色の中にある暖かさ

――常にお忙しいおふたりですが、年末年始はゆっくりできたんですか?

Dr.kyOn(以下、kyOn):三が日はね。

佐橋佳幸(以下、佐橋):僕は2日から働いてます。元旦は休みましたよ。いつも通りお酒を飲み続けてるだけでしたけど(笑)。

――年末は『NHK紅白歌合戦』とか見ちゃったりするんですか?

kyOn:僕はダウンタウンの番組しか見ない。コマーシャルのときだけ回してほかを見てました。

佐橋:僕は見てました。ちょうど紅白前に僕、矢野顕子さんのツアー(『さとがえるコンサート2018』)をやってたんですよ。ドラムが林立夫さんで、ベースが小原礼さん。そのふたりが大阪公演の次の日に「明日、朝、早いんだよね」って言うので、「なんですか?」って聞いたら、「NHKに行く」と。「今年最後の仕事は紅白だから」(松任谷由実のバック)って言ってました(笑)。

――新作の話をしましょう。4thアルバム『8芯ニ葉~雪あかりBlend』。これで季節がひと巡りしましたね。

佐橋:4作目がもうちょっと前に出ると見事に春夏秋冬だったんですけど、ちょっと間に合わなくて、冬が2回になっちゃった。始まりが『8芯ニ葉~WinterBlend』でしたからね。ただ、スケジュール的にそうなるってことは制作が始まる前からわかっていたので、初めから冬編を作るつもりでやりました。

――これがシーズン1の完結編ということになるわけですよね。

佐橋:4作でひとまず完結ということで始めているので、それに関しては予定通りですね。

――冬編ということで、“雪あかりBlend”というお洒落なタイトルがついています。

kyOn:『8芯ニ葉~WinterBlend』はクリスマスの曲が入っていたりと、いわゆる初冬を意識したものになってましたけど、今作は1月にリリースすることが決まっていたので、さらに雪深くなった感じを踏まえたタイトルにしようと。

佐橋:このジャケットのデザインもそうですけど、かまくらを外から覗いてるようなイメージ。外はしんしんと雪が降っていて寒いんだけど、なかに入るとほっこり、みたいな。タイトルはもう、2枚目あたりから僕はkyOnさんに頼ってます。絶対すごいタイトルを出してきますから。今回もお見事で。

kyOn:毎回、料理の名前を考えるみたいなものでね。ティピカルなものより、無国籍料理として機能するようなもののほうが楽しいと思うので。

――ゲストの人選は、前作『8芯ニ葉~月団扇Blend』を作っているときから並行してやられていたんですか?

佐橋:そうしないと間に合わないですからね。先方のご都合もありますから、少し多めに候補を出しておいて、誰々にはこの曲をお願いしようというところまで考えてから、オファーするというやり方。それは今までと一緒です。でも不思議といつも思った通りになるんですよ。4作目では佐野(元春)さんは外せないね、The Hobo King Bandのメンバーともやりたいねっていうのは当初から言ってたことなんですけど、それも実現しまして。

――必然的に今回はバンドサウンド色がわりと前に出た作品になりました。

佐橋:あ、確かにそうですね。

――それと毎回思うんですけど、ゲストのバランスがとてもいいですよね。男性と女性の割合もいいし、中堅とベテランのバランスもいいし。

佐橋:そこはいつもある程度意識して候補をあげてるんですけど、運よくそうなっているところもありますね。あと、4作通して言えるのは、基本的に僕とkyOnさんと親しい人、またはこれまでなんらかの形で作品作りを一緒にしてきたことのある人。「初めまして」って人はほとんどいないんじゃないかな。今回、kyOnさんとパーカッションの田中倫明さんが一緒にやるのは初めてでしたけど、それぐらいで。

――では、1曲1曲、話を聞かせてください。まずオープナーが「Jumpin’ Jumping Camellia Sinensis」。カメリア・シネンシスというのは……。

kyOn:お茶の樹の正式名称です。学名っていうんですかね。口にしてみると面白い言葉でしょ? この曲は昔からやっていて、『共鳴野郎』(Darjeeling結成のきっかけになった音楽テレビ番組)では京都のお寺の本堂でやりました。

――アレンジはそのときのものと一緒なんですか?

佐橋:番組のなかで演奏するのでサイズが短ったものを、ちゃんと聴けるように長くしたっていうところ以外は基本的に変わってないですね。マンドリンでスライド演奏をするのと、あとkyOnさんがポータサウンドで弾くといった楽器の組み合わせは、「そういうふうに出来た曲だから、それで録ろうよ」ってことで。

kyOn:ポータサウンドが家にあって、もともとエレピのリフをそれで作ったんですよ。『共鳴野郎』でやるときは小さいキーボードを持っていってたし、普段ライブでやるときはマルチなキーボードで弾くんですけど、これはレコーディングなんだし、しかも4作目だから、今まで使ってない楽器も入れてみようと。やっぱりその楽器の音というのはワン・アンド・オンリーなわけだからね。要するにレコーディングだからって標準的な楽器、チューニングのきちんと合ってる楽器である必要は本来ないんじゃないかってことで。

佐橋:そのポータサウンド、家電量販店の1階の入り口で2~3千円で売ってるようなやつですからね(笑)。ミニ鍵盤のちっちゃいやつ。その内臓スピーカーから出る音がいいよねって言って、そこにマイクを立てて録ったという。

――佐橋さんはマンドリンとウクレレと、あとペダルスティールとバリトンギターを弾いています。

kyOn:普通のギターをひとつも弾いてない(笑)。

佐橋:そうなんですよ。マンドリンはkyOnさんの提案でね。僕はギターの次くらいにマンドリンを弾くことが多いんですけど、kyOnさんもマンドリンを弾くので、「今回はどっちが弾く?」なんてやりとりもあって。今回は僕が弾きましたけど、『8芯ニ葉~WinterBlend』の1曲目「Holiday In Columbo」はkyOnさんがマンドリンを弾いてましたね。

――マンドリンでスライドを弾いてるわけですが、それってギターと同じ感覚でできるものなんですか?

佐橋:ライ・クーダーなんかがやってるんですよ。あと、昔のブルーズマンとかカントリー系の人とかも。ヴァイオリンと一緒でフレットレスの独特の感じがいいというか。で、この曲はふたりでそんなふうにやってたんですけど、今回は佐野くん(ドラムの佐野康夫)に「ここにちょっと味付けしてよ」ってお願いして。

kyOn:それ、面白かったですね。一応、ドラムってことになってますけど……。

佐橋:ドラムと言えばドラムなんだけど、バスドラムを民族楽器の大太鼓みたいに鳴るチューニングにしてもらって。もともと僕とkyOnさんが禁欲的なくらい淡々とリフをやり続ける曲だったので、そこにお話をつける役として佐野くんに工夫してもらった。

――そういった演奏の仕方も含め、実にDarjeelingらしい1曲ですね。タイトルの通り、茶葉がポットのなかでジャンピングしてるイメージが浮かびます。

kyOn:スローモーションで茶葉が浮き沈みしてるのが見えるでしょ?(笑)。

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