『Roclassick tour 2019』

BIGMAMA、“Roclassick”シリーズの楽曲が生むライブならではの熱狂 ツアーファイナルを見て

 BIGMAMAの『Roclassick tour 2019』が、10月17日、渋谷CLUB QUATTROにてファイナルを迎えた。全24曲の演奏後、金井政人(Vo/Gt)が去り際に「12月25日、空けといてください。2020年も『Roclassick tour』でお会いしましょう」と言っていたように、BIGMAMA恒例のクリスマスワンマンは今年『Roclassichristmas』というタイトルで開催され、来年1月からは全国ツアー『Roclassick tour 2020』が始まる。また、今年12月にはコンセプトアルバム『Roclassick ~the Last~』がリリースされることが決定しており、このライブの翌日0時から収録曲「誰が為のレクイエム」が先行配信された。

 バンドの公式ホームページによると、“Roclassick”とは、「クラシック音楽の名曲達をBIGMAMA流に再構築し、歴史的名フレーズ達を時に生かしたり殺したり(すみません)しながら作り上げる、ヴァイオリニストをメンバーに含むロックバンドの編成を最大限に生かした、コンセプト強めな作品」とのこと。同シリーズの起源は、2008年にリリースされたシングル『Weekly Fairy Tale』の収録曲「Cinderella~計算高いシンデレラ」で、この曲ではパッヘルベル「カノン」の有名な旋律やコード進行などが引用されている。その後バンドは、『Roclassick』(2010年)、『Roclassick2』(2014年)とコンセプトアルバムを2作発表した。

金井政人

 ロックに求められる衝動性と、クラシックに求められる精密さ。どちらも魅力的だけど、衝動一辺倒になって知性を失うのも、頭でっかちになってバンドとしてのロマンを失ってしまうのも嫌だから、その真ん中を突き詰めていきたい。“Roclassick”というコンセプトは、真面目で天邪鬼なこのバンドの性格と非常に相性が良かった。音大在籍時にピアノを専攻していた、メンバーのうち最もクラシックと距離の近い東出真緒(Vn/Key/Cho)は、過去のインタビューで「ずっとクラシックとロックの間にある垣根を壊したいなと思っていて。音大って、言い方が難しいんですけど、閉鎖的なところがあって。そんな中、『1』(筆者註:『Roclassick』のこと)を作ったときに”あ、自分がやりたかったことはこれなんだ!”って思えたんですよね」と語っており、その発言からは、“Roclassick”がBIGMAMAの代名詞的存在になっていった理由が読み取れる(引用元:【UKP OFFICIAL INTERVIEW】BIGMAMA 「Roclassick2」インタビュー)。

東出真緒(Vn/Key/Cho)

 ツアータイトルに掲げられているように、このツアーでは“Roclassick”シリーズの曲がほぼ全曲演奏された。この日のライブからは“メンバーがファインプレーをする→それに対して観客が歓声を上げる”、あるいは“観客がリアクションをする→それに触発されるようにバンドサウンドの熱量も上がる”というバンド-観客間の相互作用が直に伝わってきたが、そのライブならではの熱狂に“Roclassick”の楽曲が大きく貢献している。

リアド偉武

 というのも、“Roclassick”の楽曲はとりわけライブを意識したアレンジがされており、各プレイヤーがスポットライトを浴びるようなポイントが編曲の時点で意識的に設けられているのだ。例えば、リアド偉武(Dr)による特徴的なドラムロールから始まり、ヴィヴァルディ「春」のフレーズをギターとバイオリンが弾いた直後、2ビートで突如爆走する「走れエロス」のオープニング。それから、ベートーヴェン「エリーゼのために」の旋律で最も特徴的といえる半音で上下する箇所を、原曲より多めに繰り返すボーカルのメロディライン。この曲では終盤、金井が“観客の歓声を煽ぐ→人差し指を立ててそれを静止する→たっぷりタメをとったあと再び歌い始める”という演出もあり、そこでもフロアは大いに盛り上がっていた。また、安井英人(Ba)のスラップが印象的な「Swan Song」では、間奏で東出がチャイコフスキー「白鳥の湖」の優美なフレーズを奏でたあと、柿沼広也(Gt/Vo)が長尺のギターソロを披露。フロアから大きな歓声が上がった。

 『Roclassick2』リリース時のインタビューによると、同アルバムの制作時、金井はメンバーに「楽器を覚えたての人たちが真似したいと思えるようなプレイをしてほしい」とリクエストし、メンバーから上がってきたフレーズを“1人目のファン”として判定するようにしていたとのこと。そんな過程を経て生まれた楽曲群には何度観ても熱狂せざるをえないような“鉄板のカッコよさ”があり、その色褪せない輝きが、今でも多くのファンに愛されているのだ。

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