石井恵梨子の「ライブを見る、読む、考える」 第15回:Suspended 4th
Suspended 4thの演奏はなぜ気持ちを鼓舞するのか 石井恵梨子が『GIANTSTAMP Tour』を観た
さらに良かったのは後半の「think」。70年代のソウルバラード風の一曲は、サスフォーの中でも異例、作品の中に一曲置かれてもどう扱っていいのかわからない雰囲気だったが、ライブの現場では見事ハマっていた。WashiyamaはMCで「音楽にもたれかかって聴くのもいい」と言っていたが、勢いとは違う穏やかな陶酔も、すでに4人はしっかりモノにしているようだ。また、こういう曲調になると、少しハスキーなWashiyamaの声質が俄然活きてくる。無数に武器があるのだ。ひとりずつのプレイヤビリティ、塊になったときの豪快なパンチ力、楽曲の中に散らばったさまざまなジャンル、あとはシンプルな歌モノとしての魅力。すべてが未整理なまま、ざらっと袋の中に投げ込まれている感じ。戦略があるようでないのか、もしくは、細々とした雑事をすっ飛ばして頂点だけを狙っているのか。今はまだ断言できないが、こいつらはもっともっと大きな場所に行くぞという予感だけはビシビシ感じられた。
本編ラストを「INVERSION」で終えた後、アンコールは完全なジャムセッション。お互いに表情を読み合っては、どちらに進むのかわからない会話が続いていく。ジャムと聞いて「火花を散らす即興インプロビゼーション」なんてイメージを思い浮かべる人もいるだろうが、何度も言うように、サスフォーのそれは終始踊れるグルーヴ重視。なぜこんなにわかりやすく気持ちを鼓舞するのか。そのヒントを、終演後のWashiyamaが教えてくれた。
「まず楽器の魅力を感じてもらえたら一番嬉しい。自分たちもそれを感じて始めたわけだから。『このギターの魅力、わからんの?』みたいな、その意味ではみんなキャッチーなフレーズばっかり出してるんでしょうね。ギター、ベース、ドラムっていう楽器がわかるプレイ。それを繰り出しながら、どうなるかわからない瞬間こそ楽しいっていうことを、もっと発信していけたらなと思う」
おおいに納得。そして確信した。今後、サスフォーがきっかけでギターを買ったという若い子がたくさん出てくるだろう。アンコールでは今回の追加ツアー『GIANTSTAMP TOUR II TURBO』が発表され、再びの東名阪、会場の規模もさらに大きくなることが発表されていた。東京でいえばO-CrestからO-WESTへ。わかりやすい飛躍だが、今後はO-EAST、さらには新木場STUDIO COASTへと続く道筋が容易に見える気がした。これだけ器のデカいロックバンド、なんだってやらかしてくれそうな可能性を持ったプレイヤー集団、ほんとうに久しぶりだ。
(写真=ヤスカワ ショウマ)
■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。