『MEMORIES』インタビュー
<Chilly Source>より1st EPリリースの15MUSが語る、自身の音楽性がもつ“切なさ”の根幹
苦労したとしても音楽にはずっと向き合っていきたい
——ちなみにリリックに書かれていることは実体験なんですか?
15MUS:実体験です。これ、めちゃくちゃ恥ずかしいですね(笑)。『MEMORIES』に関してはノンフィクションなので、自分で切なくなっちゃいますね。「OVER」に〈大通りで元通り〉という歌詞があるんですけど、それは横浜の関内に大通り公園があって、僕はそこを思い浮かべながら書きました。
——自分の思い出が形になった作品という意味で、『MEMORIES』というタイトルにされたんですね。
15MUS:そうですね。全部が出来上がったときに、明らかに過去のことを歌ってる曲が多かったので。だからタイトルを決めるときに、これはシンプルに「思い出」だなと思って。
——その他にも、ハウス調のクールな4つ打ち曲「曖昧」やメロウな「雨」など、多彩な全9曲を収録しているなか、「Baby」では<Chilly Source>の同胞であるラッパーのケンチンミンさんをフィーチャリングで迎えています。
15MUS:ケンチンミンくんとは前から「一緒に曲をやりたいね」と話していたので、今回ぴったりな曲が出来たので参加してもらいました。<Chilly Source>のなかでも、僕とケンチンミンくんの音楽観はだいぶ違うと思うんですよ。ちゃんと話を聞いてみないとわからないですけど、ケンチンミンくんは結構破天荒なところがあるし、彼の楽曲を聴いていると、物事の価値観ひとつ取っても僕とはまったく違うものを受けて音楽をやってきたんだろうなと感じるので、そんな2人がひとつのビートの上で共演したら、お互いのドラマが合わさって面白いものになるんじゃないかなと思って。
——たしかに、この曲のリリックは「君」との過ぎ去った思い出を振り返るような内容ですが、15MUSさんはまだ傷心が癒えない感じ、一方のケンチンミンさんは後ろ髪を引かれながらも前に進もうとしていて、対照的な内容です。
15MUS:ケンチンミンくんは男らしいし、俺なんかより強い部分があって、物事に対してポジティブに「行こうぜ!」みたいな感じですよね。まあ作品上の表現なので本質がどうなのかはわからないですけど、作品上では明らかに違うのでそこが面白いなと。“陰と陽”という感じですね。
——この曲の15MUSさんのリリックに〈ねえ教えてタイター この先10年俺らはどうだ?〉とありますけど、これはアニメ『STEINS;GATE』にも登場する自称タイムトラベラーのジョン・タイターのことですか?
15MUS そうです。わかってくれる人がいて良かったです!
——以前にニコニコ動画でアニメソングのリミックス動画もアップされてたんですよね。
15MUS:してました。その頃はニコ動もYouTubeもSoundCloudも、思いつくところ全部に音源をアップしていて。なかには20万回再生された動画もあったんですけど、それでも状況が変わらなかったんですよね。あのときはどうやったら日の目を浴びれるんだろうと思って、めちゃくちゃ迷走してましたから。世間で『ポケモンGO』が流行り出したときは、猿島という無人島にポケモンを捕まえにいった動画を上げたりして(苦笑)。ちょうど夏場で、島にはバーベキューをしてる大学生とかがいて楽しそうなんだけど、俺だけ携帯をいじりながら島を一周するっていう。でもバットを振るにこしたことはないなと思って。
——そうやっていろいろチャレンジするなかで、ちゃんと芯のあるものを見つけられてよかったですね。
15MUS:結局音楽に戻ってきたというか、こうして15MUSとしてリリースできる状況になったことを考えると、やっぱり自分には音楽が合っていたんだろうなと思います。
——先ほど、今回の作品を通じて「これが俺です」と言えるものを伝えたいとおっしゃっていましたが、実際に完成した今、自分自身をどういうアーティストだと捉えていますか?
15MUS:ジャンルとかは気にせず、そのときに感じたやりたいことやいいものを作る、ただそれだけなんだろうなって思います。俺はヒップホップの文化が好きだとか、パンクスでゴミ箱を蹴っ飛ばして生きるんだ、みたいな理念は全然なくて、今やりたいことを具現化しているだけなんですよ。だから今回の『MEMORIES』も、たまたま今自分が好きな音楽の方向性が出ただけで、この先の自分の音楽がどうなるのかは自分でもわからないですね。めちゃくちゃロックになってるかもしれないし、パンクやってるかもしれないし、カレー屋やってるかもしれないし(笑)。
——でも、何かしらを作っていきたい気持ちは強いんですね。
15MUS:そうですね。でもやっぱり音楽でしょうね。作り続けられる限りずっと続けるんだろうなって思います。今はこうして表舞台に立っていますけど、それがもしかしたら裏方に回るかもしれないし、作曲だけに専念するかもしれないし、作詞家になるかもしれないし。苦労したとしても音楽にはずっと向き合っていきたいです。
——その原動力にはどんな気持ちや想いがあるのでしょうか?
15MUS:何なんでしょうね? 昔はちやほやされたいとか、一発当ててお金がほしいとか、そういうのをふわっとイメージしていたと思うんですけど、いま改めてそう聞かれると、音楽以外に特にすることがないというか(笑)。結果的に音楽を作ってるのがいちばん楽しいし、本当に作りたいだけですよね。でも、わかってほしい気持ちとか、きっといろんな細かいものがあるんでしょうね。
——一度は普通の職に就いたのを辞めて、再び音楽の道を選んだぐらいですからね。
15MUS:全く悔いはないですけどね。生きている間は、好き勝手に思ったことをやればいいんじゃないかなと思ってて。別に我慢しなくちゃいけない状況でもないし、今のところ守るべきものややらなくてはいけないことも特にないので、好き勝手にやりたいことをやって、それを形に残す。あと、僕はサービス業をやってたので、誰かに喜んでもらうのが好きなんだと思うんです。どうせなら好きなことをやって、喜んでもらったり、共感してもらいたいし、誰かの力になりたいですね。
——音楽にはそういう力がありますからね。
15MUS:あとは自分の曲が誰かの思い出の曲になってほしいですね。誰かが聴いて、彼のこと、彼女のことを思い出したり、「あ〜、このときあんなことがあったな〜」って感傷に浸ったり。何十年後かに車で懐メロとして流れてたりとか。だからこの『MEMORIES』も誰かのメモリーズになればいいなって。なんかうまいこと言い過ぎて恥ずかしいですけどね(笑)。
(取材・文=北野 創/写真=西村 満)
■リリース情報
『MEMORIES』
発売:9月25日(水)
価格:¥1,800(税抜)
Tracklist:
1. OVER
2. OhNo
3. PLAY
4. Station
5. 曖昧
6. Baby feat.ケンチンミン
7. Scent
8. Actor
9. 雨