WINNERやテミン楽曲から学べる“生きた韓国語” NICE73が教える、K−POP歌詞の読み解き方
2曲目に解説したのはSHINeeのメンバーであり、ソロアーティストとしても活躍するテミンの「Danger」。この曲を選んだ理由についてNICE73は「原曲も幻想的で比喩表現が多いが、日本語詞も素晴らしいので。〈オヌルパム(今夜)〉という単語を〈今宵〉と訳したり、〈ノン チョルチョヘ(君は徹底している)〉を〈Knock 頂上へ〉、〈サラジョヨ(消えよう)〉を〈さよなら〉と似ている発音の言葉に置き換えるなど、訳詞とはこうであれという一曲」と絶賛。自身も訳詞家として詞を書くときは“音触り”を重要視しているという。「原曲の意味そのままではなく、聴いて音に違和感がないかを優先。韓国語では日本語よりも小さい音、例えば『タ』というときに『タッ』となり『ッ』という音が存在するが、そこを無視すると締まりのない音になってしまう。これがあることで音楽にグルーヴが生まれるので、韓国語と同じような舌使いができる、同じようなグルーヴになる言葉を選ぶようにしている」と語った。
3曲目はWINNERの「AH YEAH」。WINNERの楽曲は「男心を歌わせたら右に出るものはいないんじゃないかというくらい、今の韓国男子の心情を表現してくれている」といい、歌詞を通じて“韓国男子あるある”を解説。例えば〈俺は友達とか無理〉というフレーズには、元彼女と友達になるのは無理、その後を知らないで生きていきたいという人が多いという背景があるとNICE73。「韓国の人たちは付き合うと『ご飯食べた?』『何してる?』と一日中連絡を取り合う。そこまで愛し合った2人の愛が消えてしまったら、他人になるしかない」と推測した。ほかにも、歌詞にデートの定番スポットである「映画館」や、韓国男子の好きなオンラインゲームのできる「PCバン(ネットカフェ)」が登場する点、ラップパートでの言葉遊びなどに言及。歌詞の内容から発展して、韓国語での多様な謝罪フレーズも紹介した。
WINNERのほかに、今の生きた韓国語を学べるK-POPアーティストとしてNICE73が挙げてくれたのは、女性ラッパーでシンガーのHeizeと女性デュオの赤頬思春期。「韓国の人がどういう風に恋愛をして、どういう風に悲しんでいるか、今の若者の感性を知ることのできるアーティスト」と推薦した。
終盤の10分間は撮影可能とし、好きなK-POPアイドルを相手に使える「また来ました」「大好きです」などの基本フレーズを紹介。受講者は画面に映されたフレーズの数々を、スマートフォンで熱心に撮影していた。またこの日の様子は、受講者限定で全編を動画で公開。自宅に帰っても、いつでも復習できるのが嬉しい。
受講者からの質問も活発に飛び出し、盛り上がりを見せた本講義。最後は“K-POPイベントあるある”の受講者をバックにした記念撮影を行い、和やかな雰囲気で幕を閉じた。「どうせならただ意味が通じるだけでなく、心が通い合う言葉で話したいと思う。これからもただ言語を教えるだけでなく、その背景まで解説する講座を開いて、お互いへの理解が生まれるきっかけになれたら嬉しい」とNICE73。次回は未定だが、今後の開催にも期待したい。
(取材・文=土田理奈)