サマソニとSpotifyに共通するマインドとは? 2社のトップが語り合う
ストリーミング時代の“フェスの作り方”
ーー余談になるかもしれませんが、清水さんはプロモーターとして、CD・ダウンロード・ストリーミングと音楽の聴き方に選択肢が増えている現状をどのように感じ、『サマソニ』に落とし込んでいるのでしょうか。
清水:『サマソニ』がスタートしたころは、CDのセールスでブッキングを決めたり、メジャー3社以外のレコード会社さんとも「次はどの新人を推す?」みたいな話をしてたし、洋楽ロックもすごく勢いがあったんですけど、音楽の聴かれ方もメインストリームのジャンルも変わってきたことで、僕ら自身が戸惑った時期はたしかにありました。これまで頼りにしてきた指標だけでは、世界の音楽シーンが見えなくなってきたから。そうなったときに、YouTubeやストリーミングでの伸びを見るーーつまりはファンにより近い目線で色んなものをチェックしなければならなくなったんです。それは僕らにとって新しい刺激で、すごく面白い環境の変化でもあった。洋楽を聴く人が明らかに増えている実感も出てきたし、若いリスナーはどんどんボーダレスに音楽を聴くようになってきた。だからこそ、僕らもそれに合ったブッキングをしていきたいですね。とにかく、これまでと違った視点に変わったことは、自分にとってすごく刺激で楽しいことなので、この後何が起こるかというワクワク感は、年々強くなっている気がします。
あと、オーディションをやっていて感じることがあるんですけど、最終審査で40近いバンドを見ているなかで、5、6年前はパンクやポップスで「このバンドに似てるな」みたいなものが多かったのが、最近は英語詞で歌ったり、国籍もボーダレスになったり、HIPHOPの割合も増えてきた。どう考えてもストリーミングの影響だと思うんですよ。彼らがメインストリームに続々と出て行くころには、リスナーの大半がそういった聴き方をする国になっているんじゃないか、という期待が持てますね。
ーーその変化に「楽しい」と適応していく清水さんは、本当にすごいです。しかもその方向転換は見事に当たっているわけですから。
清水:昨年のBillie Eilishはまさにそうだったね。みんな「あそこで見れたのはすごい!」って言ってくれる(笑)。どこからのプッシュがあったわけでなく、自分自身が『SXSW』で見て「絶対に呼ばなきゃ」って思って呼んだアーティストが、気づけば世界的なブレイクをしていたという。そういうフェスが『サマソニ』だって思ってもらえているのは大きいですね。
ーー今後、Spotifyとの取り組みのなかで「こういうことをやってみたい」と企てていることはあるんでしょうか。
清水:「Asian Calling」の発展系として、アジアのアーティストを集めたフェスやイベントをやってみたい、という思いが日に日に強くなってます。そこでSpotifyと組めたら一番自然じゃないかと思うんですよ。できればチケット代を安くして、みんなが気軽にチェックしに来れるものにしたくて。
ーーK-POPをはじめ、アジアの音楽に熱狂している10代〜20代が多く来てくれるようなイベント、ということですね。
清水:そこでK-POPだけではなく、HYUKOHのような韓国のバンドや、HIGHER BROTHERSのような中国系のHIPHOPアーティストが出てくるのが理想かな。〈88rising〉とも組んでみたいですし。
玉木:僕らのポリシーとして洋楽邦楽の垣根を取り払ってプレイリストを作ってきたのですが、Spotifyが日本で始まったすぐの頃は私自身が非常に違和感を感じていました。つまり世界と日本での音作りの方向性が違っていたことがすごく印象に残っているんです。でも、清水さんがお話したように、ストリーミングで世界中の音楽を聴くようになったアーティストの作る音は、ここ数年で格段に変化していて、洋楽と一緒のプレイリストで聴いていても違和感を感じることが格段に減ってきました。
そうして、クリエイティブの共通の土台ができればできるほど、日本のアーティストにとって世界に行ける可能性は高まりますし、そのときの僕らの最大の強みは“世界に2億数千万人の音楽ファンがいること”なので、アジアや世界を目指しているアーティストをいかにサポートして、形にしていくかが次の課題だと思っています。その延長線上で、こうして清水さんが新しいコンセプトを提案してくれたときに、その指に止まりながら次の音楽文化を一緒に創っていければ嬉しいですね。
(取材・文=中村拓海/撮影=林直幸)
■公演情報
『Spotify on Stage in MIDNIGHT SONIC』
2019年8月16日(金)
会場:幕張メッセ OPEN/START 23:00 / CLOSE 5:00
出演:SEKAI NO OWARI、MGMT、R3HAB、NCT 127、amazarashi、
スキマスイッチ、TK from 凛として時雨
『SUMMER SONIC 2019』
8月16日(金)、 17日(土)18日(日)
会場(東京):ZOZO マリンスタジアム&幕張メッセ
会場(大阪):舞洲 SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
開場9:00/開演11:00(東京)
開場10:00/開演11:00(大阪)
■関連リンク
『SUMMER SONIC 2019』公式HP
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『SUMMER SONIC 2019』公式Facebook