ジェシカが語る、LAで学んだ表現とクリエイティブへの挑戦「日本と海外の架け橋になりたい」

ジェシカが語る、クリエイティブへの挑戦

振付をどんどんしていきたい

ーー『アメリカズ・ゴット・タレント』(公開オーディションのリアリティ番組)での活躍や多数のアーティストのMVにも出演していますが、『Juste Debout 2013』(2ON2で勝負を決めるストリートダンスの世界大会)での優勝がとても印象的でした。出演の経緯を教えてください。

ジェシカ:パートナーのComfortが「『Juste Debout』出ようと思うんだけど、一緒にやらない?」って言ってくれて。彼女とヒップホップ部門に参戦して、違う子とハウスの部門に参戦したんです。私本当はハウスの方が得意なんですよ。だけどハウスでは予選落ちして「ちぇっ」とか思っていたんですが、ヒップホップで予選通って、「あれ? また通った、勝ち進んでいっちゃってる」と思っているうちに決勝まで進んでいました。

ーー渡米する前からLAではコンテストに出るという目標を持っていたんですか?

ジェシカ:全然ないです。私はバックダンサーやコマーシャル、ツアーやミュージックビデオのお仕事をメインでするのが目標だったのですが、仕事が入らない時にクラスを受けたりフリースタイルの練習をして、それをどこで発散するかっていったらバトルしかないから、「ちょっと試しに行こうかな」という気持ちもあってたまに出ていました。実力を試すためだったので、できればやりたくなかったですけど(笑)、やらなきゃいけない、これに誘われたってことはやるべきだと言い聞かせてました。

ーー優勝したことへの周りの反響も大きかったですか。

ジェシカ:姉(ベッキー)からたまたま電話がかかってきて。「今ニューヨークにいるんだけどバトルで勝って」って言ったら、「へー、そうなんだ。おめでとう」とだけ言われて電話を終えたんです。その後姉が私のことをTwitterで、「妹が何かの大会で勝ったらしい」って一言ツイートしたんです。そしたら誰かがそれを調べて、「え? ベッキーの妹『Juste Debout』のイベントで勝ったの?」みたいな感じでニュースになっていたので私もびっくりしました。

ーーベッキーさんとは『メルカリ』のCMで共演していますよね。お二人とも自然体で素敵でしたが、共演してみた感想は?

ジェシカ:「日本で仕事してるな、この人」と思いました。私はアメリカから来た女なんだなっていう温度差は感じます(笑)。すごくしっかりしているし、「ジェシカそこに足は乗せない」とか、「ジェシカそれはやっちゃいけない」って注意されて「すいません」って謝ることは多々あります(笑)。

ーー普段から連絡はよく取っているんですか。

ジェシカ:結構取ってますね。移動中にFaceTimeをします。「何してるの?」とか「何食べてるの?」とか本当どうでもいい話ですけど(笑)。あと、姉が落ちたら私がサポートするし、私が落ちたら姉がサポートする。お互いにアドバイスをし合ったりもしますね。

ーー海外と日本のダンスシーンで違いを感じることはありますか?

ジェシカ:全然違いますね。日本でリハーサルをしたら10人がパッと同じ動きをすぐできるけど、アメリカだと10人の動きを合わせるのに少し時間がかかります。でもその代わり一人ひとりの個性が爆発的に出てるから、見ていて楽しい。完璧にみんなが同じ踊りをすればいいわけではなく、やっぱり自分のアイデンティティを光らせながら皆で踊る方が、私はエンターテインメント的には好きだなと思いました。

ーージェシカさんの周りには日本人のダンサーも多い?

ジェシカ:結構いますね。日本人の子達は私もアシスタントについてもらう機会も多くて、自分がサブミッションで振付をする時は自然と日本人の子に聞いてしまいます。時間通りに来るし、頼んだら絶対仕事をこなしてくれるという安心感もあるし。日本人への信頼感がすごいです。アメリカでもリスペクトされているし。

ーーここ日本でも授業にダンスが取り入れられるようになるなど、10年ほどでダンスに対しての注目度が上がっています。ジェシカさんの渡米前と比べて日本のダンスシーンに変化は見られますか?

ジェシカ:変わっていると思います。昔よりもっと個性を出していいんだって思ってる人たちが多くなってる気はしますね。でも、日本で教える時に反応があまりないので、教えてて「え? 伝わってる? 私今1人で喋ってる?」っていう瞬間がよくありますね(笑)。「わかりましたか?」って言っても「誰かが言うでしょ」みたいな空気になる。以前ワークショップの時に来てくれた子に対して「この子私の振り好きじゃなかったのかな」と思ったことがあったんです。みんなが欲しかったものを私があげられなかったのは悲しいけどしょうがないって自分に言い聞かせようとしていました。そしたら終わった後に一人ひとりに挨拶している時に、その子が「今日めっちゃよかったです」って言ってて。「え? そっち? めっちゃ響いてたんじゃん」って(笑)。もうちょっとわかりやすく楽しんでくれたらいいなぁと思います(笑)。

ーージェシカさんはプロのダンサーとして自分のスタイルをどういう風に突き詰めていこうと思っていますか。

ジェシカ:同じことをずっとやるのは楽しくないので、服装もすごくダボダボな格好で行く日もあれば、ワンピースを着て赤い口紅を塗りたい日もあって、私は自分のことをいろんな色に染まることができるカメレオンだと思っています。「Nice to meet you」って5回ぐらい同じ人に言われたことがあるんですが、毎回私が違う色を見せるから、覚えてくれないんだと思って。1色じゃなくて7色使いできるっていうのは自分の好きなところです。踊りに関しても、ヒップホップからラテンまで踊るし、男っぽいところから女性らしさを出したりもするし、でもそこでうまくミックスした融合したスタイルを出すことができるのが私の強みだと思っています。色んなジャンルをうまくバランス取りながらやるのは結構好きですね。

ーー社交ダンスも踊っていますよね。

ジェシカ:日本でも15年前に3カ月ぐらいかじっていたんですけど、アメリカに行ってバレエ、ジャズ、ポッピン、ロッキン、ハウス、ワッキンやサルサと色々なダンスを踊っていて。そのころに『So You Think You Can Dance』というテレビのショーに出演が決まった時にプロデューサーさんから「一番できないジャンルを練習しなさい」と言われて。その時にはほとんどのダンスを経験していたんですが、ラテンはかなり昔の話だから、もう一度やってみようと思ってクラスを受けたらそこではまっちゃって。できないことがあると、「なんでできないの? これどれぐらい練習したらできるの?」と、自分でどこまでできるか試したくなるので、ラテンもめちゃめちゃ練習してましたね。

ーー『人生が変わる 1分間の深イイ話』(日本テレビ系)出演時にはオレグ・アスタコフさんと踊っていました。

ジェシカ:喧嘩ばっかりしてましたよね(笑)。気が強すぎるんですよ、私。的確に、明確に動きたいタイプなので、ふわっとされると「いやそれじゃあダメでしょ」という風になってしまうんです。でも彼から学んだのは、その瞬間に対応する能力が大切だということです。全てを計画通りにやるダンスはやっぱり見ていて楽しくないし。だから、そこで彼がやることに対して私がどう対応するかっていうのを実は試されていて。その時は一瞬ムカつくんですけど(笑)、でも後々考えたらいい練習だし、いい学びだなって思います。

ーーダンスで影響を受けた人についても聞かせてください。

ジェシカ:日本で習っていた時のショータイム先生、『Juste Debout』でパートナーだったComfort、あとトニー・バジル先生ですね。75歳なんですけど、踊る踊る。トニー先生は心から楽しんで踊る姿に影響を受けました。それに、75年の人生が詰まった踊りをするので、彼女の人生観がすごく伝わってくるんです。『So You Think You Can Dance』のオーディションを受けた時、ジャッジの方に「あなたトニー・バジルを思わせる踊りをするね」って言われたんですよ。「私の先生なんです」って返したんですけど、やっぱり踊りじゃなくて彼女のエネルギーを私も自然とキャッチしていたんだなと思って、面白かったです。

ーージェシカさんのダンスも、明るくてエネルギーに満ち溢れていますよね。自分のダンスを見せる時に「こういうことは表現したい、伝わればいいな」と思っていることはありますか?

ジェシカ:細かいことはないんですが、その瞬間感じてる自分のエネルギーをそのまま外に放つっていう感覚ですね。自分が踊っている間に何を考えてるかはわからないですけど、とにかくその瞬間を届けています。

ーーダンスが嫌だなと思うこともありますか。

ジェシカ:オーディションに受からなかったり、自分の踊りができなかったりとか、こんなに練習してもこの動きができないとか、そういうのは全然あります。でも、そうじゃないとできた時の喜びはないというのを分かっているし、練習が大好きだから楽しいし辞められないんです。

ーー練習は自分との戦いですもんね。

ジェシカ:人前でできなかった時の悔しさや恥ずかしさももちろんたくさん経験してきましたが、そんな時の“失敗貯金箱”が私の頭の中にあるんです。これが満タンになったら、いいことあるぜ〜! みたいな。「よし、今失敗した。よし、また恥ずかしかった」という風に、失敗したらどんどん頭の中でコインを貯めていって、「これが貯まったら大きい仕事が決まる」と思うようにしています。

ーー今後、挑戦したいことは何ですか?

ジェシカ:振付をどんどんしていきたいです。もちろん自分が出るのも好きですけど、自分のビジョンをもっと絵にしていきたいなと思っています。みんなが現場でクリエイションしていく場にいるのがすごく好きなので、そういう機会がもっと増えていったらいいなと思います。

ーー今後も日本とアメリカを行き来しながら。

ジェシカ:そうですね。これからも日本と海外の架け橋になりたいです。海外で実力をつけて結果を出して、それで一皮剥けた自分になって日本に帰って来て、自分の吸収したことを浸透させる。そのインプットとアウトプットを続けていきたいですね。

ーー振付するにあたって気をつけていることや意識してることは何ですか?

ジェシカ:その人の良い部分が見えて、みんなが輝けるような見せ方ができることが一番大事だと思います。みんなが楽しくて嬉しい気持ちで帰って行ってほしいけど、チャレンジ心もその中に30%はあるから、うまいバランスを常に考えるようにしています。あとは空気感も私はすごく大切にしていて。ピリッとした現場の方がもしかしたらクリエイティブになれるかもしれないけど、私はまず心のドアをオープンにして、ハートとハートでぶつかりたい。その意思疎通を大事にしていきたいです。

(取材・文=神人未稀/写真=池村隆司)

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