「12 Sweet Stories」第3弾リリース「Long Distance」インタビュー

FUKI、“遠距離恋愛”テーマの「Long Distance」で挑戦したこと「頑張る勇気を持ってもらえたら」

 恋愛にまつわる記念日を毎月ピックアップし、そこに寄り添ったラブソングを12カ月連続で配信リリースしていくという、女性アーティスト初となるプロジェクト「12 Sweet Stories」を展開中のFUKI。第3弾として配信リリースされたのは、7月7日の“七夕”にインスパイアされて生まれた「Long Distance」だ。遠距離恋愛の切なさを描き出しつつも、オンタイムなR&Bのサウンドトレンドを加味したトラックによって光の見えるラブソングへと仕上がった本作は果たしてどう作り上げられたのか? 本人へのインタビューを通して紐解いていく。また、テキストの最後ではFUKIの音楽的ルーツや、最近のお気に入りアーティストに迫る質問も。合わせて楽しんでほしい。(もりひでゆき)

星の見える夜空がイメージできる曲になった 

ーー12カ月連続リリースの第3弾楽曲「Long Distance」は7月7日“七夕”がモチーフですね。

FUKI:はい。七夕っていろいろ調べてみると、ちょっとダメな感じのエピソードがあったりもするんですよ。織姫と彦星が会いすぎて全然仕事をしなくなっちゃったから、それを怒られて引き離される話とか(笑)。まあでも今回は一番オーソドックスな、みんなが知ってるエピソード……1年に1度しか会えないっていう切ない部分を元に、曲にしていきました。物語の方向性としてはすごくイメージしやすかったですね。

ーー七夕の思い出って何かあります?

FUKI:えー、なんだろう。実は私自身はロマンチックな思い出はないかもしれないですね。毎年、短冊に願いを書くくらい。今年も書きましたよ。「親孝行」って(笑)。ただ、七夕当日は「今日は雨だな」とか「2人は会えてるのかな?」とか空を見上げながら思ったりはしますけど。

ーー織姫と彦星に思いをはせることはする。

FUKI:はい(笑)。あ、でもそうだ。以前に私の「星が降る夜」という曲をプラネタリウムで流していただいたことがあって。それを見に行ったとき、ちょうど七夕のエピソードを紹介するプログラムだったんですよ。そこで聞いたのは、織姫と彦星が会いに行こうとすると実際は15年くらいかかるっていうことで。それくらいお互いの距離が離れてるらしいんですよね。だから、大切な人と会えること、一緒にいられることの大事さをかみしめてみてくださいってアナウンスの人が言っていたんです。それを聞いたときにちょっとハッとさせられたことを、今回の曲作りにあたって思い出したりはしましたね。

ーー曲作りは具体的にどう進めていったんですか?

FUKI:まずは歌詞を書いていきました。今回の主人公は遠距離恋愛をしている女の子。彼となかなか会うことができないから切ない気持ちを常に抱えているけど、相手に対してはなかなかそれを言えず。仕事で忙しくしている彼の邪魔をしちゃいけないとか、わがまま言ったら嫌われちゃうかなとか我慢してるわけです。でも、1年に1度くらいはわがままを言ってもいいよね、みたいに思うこともあると思ったので、そういう気持ちを書いていくことにしました。こういうテイストの歌詞はわりと得意だから、それほど悩まずに書けましたね。〈一年に一度の奇跡〉〈7月の魔法〉っていうキーワードが出てきたのは七夕を意識したからこそだと思います。で、歌詞ができたらビートをもらって、メロディを考えていきました。

ーー平メロは言葉をグッと詰め込んだメロディになっていますね。

FUKI:そうそう。つらつらつらーっと早口言葉みたいな感じで言葉を詰めていくことでAメロ、Bメロは先にできていきましたね。そこも悩むことなく。で、サビに関してはピアノで音を拾いながらいろいろ考えつつ、覚えやすいメロっていうことを大事に作っていきました。

ーーサビのメロがすごくいいですよね。ほんとに覚えやすいから、つい口ずさんじゃう。

FUKI:ただね、抑揚があまりないというか、けっこう淡々としたメロでもあるので、歌うのはけっこう苦戦したんですよ(笑)。音程が上下するメロならいろいろ表情のつけようがあるんですけど、今回のメロはそうじゃないから。自分で作っておきながら、一番苦手とするタイプのメロになってしまったという。

ーーなるほど(笑)。歌に関してはまた後ほどじっくり聞くとして、先にトラックについて。今回、FUKIさんの中にはどんなイメージがあったんでしょう?

FUKI:ちょっと今っぽい雰囲気のあるトラックというか。私の中では、さなりさんの「Mayday」とか「Prince」のような雰囲気がいいかなっていうイメージがあったから、そういった方向でアレンジしてもらいましたね。ちなみにこのトラックは「Our Love Story」のときに軽く作っていたものだったんだけど、前回は曲のテーマ的にマッチしなかったから寝かしておいたんです。今回、試しにハメてみたらバッチリだったんで使うことにして。すごくいいトラックだから、ムダにならなくて良かった(笑)。

ーー歌詞はすごく切ないんだけど、このトラックに乗ることで少し光が見える印象の曲になっていますよね。深刻になりすぎない絶妙なバランスだと思います。

FUKI:もどかしさ、切なさをしっかり打ち出す曲にはしたかったけど、七夕をモチーフにしたからには星が持つキラキラした部分も感じてもらいたかったんです。そこをサウンド面でしっかり担ってもらった感じですね。星の見える夜空がイメージできる曲になったと思います。

ーーでは、苦戦したという歌について聞きましょうか。

FUKI:あははは。苦戦したのはとにかくサビですね。けっこう単純なメロでもあるから最初は楽勝だと思ってたんですよ。で、つらっと歌ってみたところ、「のっぺりしすぎてる」とEIGOさんに言われまして。その瞬間、「え!」と思って心が折れそうになったんですけど(笑)。音程があまり動かない中、そこにどうニュアンスをつけていくかを考えながら、何度も何度も歌いましたね。フレーズごとに、「ここは裏声でいこう」とか表情をしっかり決めて、彼への思いが募っていく感情をしっかり表現するように。

ーーコーラスでニュアンスをつけているところも多いですよね。

FUKI:そうですね。サビ以外の部分も含めて、今回はコーラスを多めに重ねてます。あと、サビの〈今夜は…せつない願いを繋いで〉の〈今夜は〉を別録りすることで、引っ掛かりをつけようとしたりもして。とにかく、のっぺり平坦な歌にならないように。

ーー結果、のっぺりするどころか、地声があったり、ファルセットがあったり、別録りの声が入ってきたりすることで、とても豊かな表情が感じられる曲になっていると思います。声質の違うボーカルが混在することで、主人公の女の子が相手へ実際に伝えている言葉と、心の中の思いの両方が表現されているようにも感じましたし。

FUKI:ありがとうございます! 頑張ってニュアンスをつけたことで、そんなふうに感じてもらえる曲になったんだなって思うと、すごくうれしいです。今、思い出しましたけど、AメロBメロの歌い方もけっこう考えたんですよ。私としては声を張りたくなる音域なんだけど、今回切なさを表現するためにあえてウィスパーっぽく、息を多めにした歌い方をして。今までだったらそこは普段通り張り上げて歌っていたと思うんで、そういう部分では自分なりの新しい挑戦もあった気がします。

ーーこの曲ってずっとリピートして聴いていられる心地良い中毒性がありますよね。

FUKI:歌詞もサウンドも癖になる感じがあるから、私も自然とループして聴いちゃってますね。自分の曲だけど(笑)。彼に会えなくても決して行き詰まる感じではなく、いい未来が見えてくるような曲にもなっていると思うので、実際、遠距離恋愛をしている人にはぜひ聴いてほしいですね。この曲をきっかけに、つらい気持ちが少しでも軽くなり、頑張る勇気を持ってもらえたらなって思います。

ーーちなみにFUKIさんは遠距離恋愛の経験ってあるんですか?

FUKI:はい、2回ほど経験はあります。でも全然ダメでした。会えないのがダメすぎるんで、私は遠距離はムリみたいです(笑)。でもね、そのときに私は音楽に救われてたんですよ。エイジアエンジニアさんの「Orion」という曲に。だから私のこの「Long Distance」という曲も、誰かにとってのそういう支えになればいいなって強く思います。この曲を味方につけて、遠距離恋愛のつらさを乗り越えてください!

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