北野創の新譜キュレーション

西田望見、尾崎由香、斉藤朱夏のソロアルバムリリースも 女性声優アーティスト5作をピックアップ

尾崎由香『MIXED』

 そしてTVアニメ『けものフレンズ』(テレビ東京系)サーバル役などで知られる尾崎由香も、いよいよ1stソロアルバム『MIXED』をリリース。子どものような純真さを感じさせるその声質から“おざぴゅあ”の愛称で知られる彼女ですが、本作ではそのチャームポイントを前面に出しつつ、豪華作家陣による多彩な楽曲を歌うことで、シンガーとしてのより多面的な魅力を打ち出すことに成功しています。 TOKOTOKO(西沢さんP)が手がけ、ピュアなイメージを逆に利用した小悪魔ぶりが最高すぎる「ピュアで小悪魔」、北川勝利(ROUND TABLE)提供のキラキラ疾走チューン「Smile! Smile! Smile!」、ゆるふわ調のラップパートを盛り込んだ西寺郷太(NONA REEVES)製のエレポップ「恋のマメチシキ」、ミト(クラムボン)が主役のエモい部分を引き出したロック「(you gave me…)My Brave Story」、野崎良太(Jazztronik)のブロークンビーツ的な手法が最良の形でポップスに落とし込まれた「ice cream」など、とにかくどの楽曲もユニークかつ高水準。そこに尾崎の特徴的な可憐な歌声が合わさることで、ワン&オンリーなガールポップ集に昇華した名盤と言えるでしょう。

尾崎由香 -1st Solo Album「MIXED」全曲試聴クロスフェードMOVIE
斉藤朱夏『くつひも』

 最後は『ラブライブ!サンシャイン!!』の渡辺曜役およびAqoursのメンバーとして知られる斉藤朱夏のデビューミニアルバム『くつひも』。本作では、過去の連載でも再三紹介している(『新田目翔、ハヤシケイ、タナカ零、sajou no hana…2018年夏クール注目のアニソン作家4名』)注目のクリエイター・ハヤシケイが全曲の作詞および6曲中5曲の作曲を担当。彼が斉藤との対話を重ね、彼女の考え方や人となりなどを知ったうえで、それらを楽曲に落とし込んでいるとのことです。現時点で公開されているのは、ハヤシが作詞・作曲、PENGUIN RESEARCHの堀江晶太が編曲を手がけた「あと1メートル」のみですが、そこで描かれている〈君〉との繊細な距離感、誰かを想う心の大切さは、青春を生きるすべての人の気持ちに刺さるであろうもの。ストリングスを交えた爽やかな曲調、斉藤の感情豊かなボーカルを含め、普遍的な魅力を湛えた楽曲になっています。きっとミニアルバムも、等身大の彼女を感じ取れる作品になるのではないでしょうか。

 なお、Aqoursからは先に逢田梨香子が1st EP『Principal』でソロデビュー。さらに高槻かなこが声優の礒部花凜らとともにボーカル&パフォーマンスユニットのBlooDyeを結成、伊波杏樹もファンクラブサイト限定で初のオリジナル楽曲入りCDのリリースを控えるなど、各自による音楽活動が本格化しています。元々はソロシンガーとして活動していた小林愛香、『第7回全日本アニソングランプリ』のファイナリストでアニソンシンガーを目指して業界入りした鈴木愛奈といったメンバーもいるだけに、他のメンバーの動きにも期待したいところです。

斉藤朱夏 『くつひも』 -Music Video-
斉藤朱夏 『あと1メートル』 -Music Video-

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

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